いい加減な人とは色々スレ違うのでストレスがたまる

適当でいい加減な人っていますよね。仕事を頼んでも間違えたまま報告がなく、期日を知らせても必ず遅れる。しかも反省する素振りを見せつつ、また繰り返す。それならこちらでやった方が早いと思うけれど、自分の負担も増えるばかり…。

 

このようなタイプとは、どのように付き合えば良いでしょうか。ここはアドラー心理学で解決しましょう!アドラー派の心理カウンセラー・小倉広さんに話を聞きました。

DESC法ならいい加減を卒業させられる?

—— 職場でいい加減な人がいて困っている場合、どのような対応をすればいいのでしょうか。

 

小倉さん: 

アドラー心理学では、適当でいい加減な人を「怠惰」な人と呼びます。彼らは、小さい時から怠惰であることで、誰かが助けてくれることを学んでいるケースが多い。そして、怠惰でいることで、たとえできなくても仕方がないと思われて、周りから怒られません。

 

しかし、逆にできたときにすごく褒められるんです。彼らは無意識にその味をしめていて、常に「私はできません」アピールを続けて怠惰になっていく、と考えます。

 

だから、怠惰な人の作戦にはまる必要はありません。相手がどのような態度を取ったとしても、相手を「あなたは自分の力できっとできる」と信じて、対等に接するのです。

 

相手に対して、対等にお願いごとをする際に使いやすい手法があります。それは、アサーションという中立的な自己主張をする技法の中で使われるDESC法と呼ばれる技法です。

 

  • DDescribe 客観的に描写する)
  • EExpress 主観を表明する、Empathy 相手に共感する)
  • SSpecify 具体的に提案する)
  • CChoose 代替案を提案する)

 

と英語の頭文字をとっていますが、相手に何か依頼をするときにも便利な方法です。

 

たとえば職場で同僚に仕事を頼むときに、依頼が強くなり過ぎないように伝えたい。しかも、しっかり自分の思いを伝えるときに最適です。締め切りまでに相手が書類を提出してこなくて困っていた場合、以下のように使うことができます。

 

D=客観的:「今日までの締め切りの書類が提出されていません」 E=主観 :「そのため、先の仕事が進まず困っています」 E=共感 :「Aさんの仕事は忙しく、時間を作ることも難しいとは思いますが」 S=具体的:「明日中に書類の提出をお願いすることは可能でしょうか」 C=代替案:「もし難しいようでしたら、3日以内はどうですか」

 

DESC法の優れているところは、まず客観的な状況描写から入るので、怒りなど感情を混ぜずに話を進めます。次に主観と共感を述べ、具体的に提案。最後に代替案も伝えます。複数の選択肢を出すので、相手も決めやすいし、こちらも自己犠牲が最小限で済みます。

「私は〜」と話すと相手の受け止め方も変わる

—— DESC法のほかに有効的な方法はありますか。

 

小倉さん:

Iメッセージ」と言って、主語を「ユー」ではなく「アイ」にする方法ですね。「私は〇〇だと思います」と、主語を私にすることによって押しつけにならず、自分の要望を中立的に伝えることができます。一方で「ユー」を主語にすると「あなたは〇〇すべきです」となり、命令をされているかのように取られてしまう場合もあります。

 

たとえば「あなたは事前に書類を出すべきです」がユーメッセージ。「私(として)は事前に書類を貰えたら嬉しいです」が、アイメッセージです。ユーメッセージは、どちらかというと命令、または上から目線になりがちです。

 

一方、アイメッセージだと、あくまで自分の気持ちや感情を伝えているだけなので、相手の自己決定を促します。相手は自分で決めることができるので、押しつけられたように感じないのです。このように主語を変えるだけで、かなり印象が異なりますね。

 

こちらに迷惑をかけるような人に対して中立的に要望を伝えるには、DESK法やアイメッセージを使って、遠慮せず、しかし押しつけずに伝えることができれば、お互いのストレスがグンと減るかもしれません。

 

職場の困った人との人間関係を解決するアドラー心理学

  

PROFILE  小倉広さん

小倉広さん
組織人事コンサルタント、アドラー派の心理カウンセラー。株式会社小倉広事務所代表取締役。一般社団法人日本コンセンサスビルディング協会代表理事。一般社団法人人間塾代表理事。日経ビジネスセミナー講師、SMBCコンサルティング講師。大学卒業後、リクルート入社。事業企画室、編集部、組織人事コンサルティング室など企画畑を中心に11年半過ごす。その後、ソースネクスト(現東証一部上場)常務取締役、コンサルティング会社代表取締役などを経て現職。

監修/小倉広 取材・構成/松永怜 イラスト/タテノカズヒロ