中学受験2021_06_03

かつては「裕福な家庭」「優秀な子」のためのもの、というイメージが強かった中学受験。しかし最近では、多くの家庭がチャレンジするようになっています。

 

気になるけれど、何から始めればいいのかわからない。そんな保護者向けに、「中学受験の正体」をイロハから進学塾VAMOSの代表富永雄輔さんに教えていただきます。

 

今回は、私立に多い別学(男子校/女子校)と、最近増えつつある共学について。教育内容や雰囲気の違いは?選択のポイントを聞きました。

異性がいる自然な環境で過ごせる共学

かつて私立校といえば、別学(男子校・女子校)がほとんでした。しかし、最近では共学が増え始め、人気もかなり上がってきています。

 

共学のメリットに関して言うと、やはりその方が自然だということです。多感な時期に、異性との関係、会話、視線を意識しながら過ごすという、当たり前のことが当たり前に行われている環境です。

 

部活なども、女子に人気の部活、男子に人気の部活、両方あって多様です。

精神的にまだ幼い男子が委縮する可能性も?

デメリットは、精神年齢が幼い男子がつらくなる可能性があること。一般的に、小5~中2は、男子と女子で精神年齢の差が出やすい時期だと言われています。

 

女子が先に大人になって、男子はまだ幼い。精神年齢に差がある子どもたちが一緒にいることによって、居心地が悪くなる子が出てくる。

 

また、共学校ではともすれば精神的に大人な女子に合わせた生活指導、学習指導が行われるため、あまりめんどう見がよくありません。

 

家庭学習の計画や実行を本人に任せるから、「保護者とタッグを組んで首根っこをつかまえてでも課題提出をさせる」というような中堅男子校に見られるめんどう見は期待できません。

 

精神的にも学力的にもギリギリで入学した男子には、共学は厳しい環境かもしれません。それがもとで「どうせ自分は落ちこぼれ」と投げやりになって、その精神状態がその後の学力にも影響する可能性はけっこうあります。

ありのままの自分でいられる別学

別学の良さは、中1から高3という多感な時期に、異性を意識しないで自分の好きなことに打ち込める環境にあります。

 

共学ではともすれば、男子は「男らしい」役割・キャラクター、女子は「女らしい」役割・キャラクターに、無意識のうちにはまりがちです。

 

しかし例えば女子校なら、お笑いキャラの盛り上げ隊長、オタク、宝塚的男役など、共学だと女子にはちょっとやりづらい役どころものびのびとできるわけです。

 

もちろん男子校も同様で、ありのままの自分を出しやすい点は女子校・男子校の面白さです。

 

小学校時代に個性的で仲間が見つけづらかった子も、別学は共学よりも居場所を見つけやすいでしょうね。

 

部活も学校によりますが、男子校だと理系部活が物理・生物・化学・地学・数学に分かれていたり、女子校だと音楽系部活が吹奏楽・合唱・軽音に分かれていたりして、興味関心を深堀りできる環境です。

異性との適切な距離感がつかみづらくなることも

ただ、6年間をほぼ同性のみと過ごすことで、価値観が狭くなる傾向はあるでしょう。別学に進学した知人にも、異性に対して偏ったイメージを持ってしまったり、適切な接し方がわからなかったりして、大学進学後に戸惑うケースがまま見られます。

 

ただ、それはある程度家庭の教育でカバーできるでしょうし、異性のきょうだいがいれば、また話は違ってくると思います。

「向いているか」と同時に「どう育ってほしいか」で選ぶ

これまで東大合格者ランキングの上位を別学が占めていたことで、学習環境は別学の方が有利だとみられてきました。

 

ただ、それは私立進学校の多くが別学だったからであって、今の調子で共学進学校が増えてくれば、その傾向は変わると思われます。

 

共学と別学に、進学実績での差がないとすれば、どういう観点で選べばよいか。

 

精神的にまだ幼く、大人の手厚いサポートが必要な子の場合は、一部の難関校をのぞく別学にめんどう見のいい学校が多いので、別学を中心にリサーチするとよいでしょう。

 

逆に、勉強のやり方にあれこれ口出しされたくない、というタイプなら共学のほうが楽しく過ごせる可能性が高いですね。

オタク系だからこそあえて共学を選ぶ手も

よく「うちの子はマニアックだから、仲間の見つけやすそうな別学が向いている」と考える保護者がいます。

 

もちろん、そうした個性を思い切り伸ばせる別学を選ぶのもひとつの手です。一方で、マニアックな子だからこそ、あえて異性のいる環境にわが子を置くという考え方もあります。社会に出て、異性との付き合い方がわからないと困るから、共学で社会性を鍛えようというわけです。

 

また、異性と和気あいあいと楽しくできるタイプだからこそ、別学を選ぶという方法もあります。中高6年間は貴重な成長期ですから、その間異性の目を気にすることなく腰を据えて何かに打ち込むことができるかもしれません。

 

わが子が別学に向いている、共学に向いていると考えると同時に、わが子の個性を見極めて、どこを伸ばしたいのか、あるいは修正したいのかも考えてみてください。

 

中学受験の正体_matome1

別学か共学か。保護者はわが子が向いているかどうかだけで考えがちですが、「どう育てたいかで選ぶ」という視点も大切だと教えていただきました。

 

中高6年間の過ごし方はもちろん、その後の人生も想定しながら、どちらがわが子に最適なのか考えたいところです。

 

中学受験の正体バナー
監修/富永雄輔 取材・構成/鷺島鈴香 イラスト/サヌキナオヤ