最近の子供は根気がなく、ちょっと壁にぶつかるとすぐ投げ出してしまう…。

 

そんな話を見聞きすることはありませんか?

 

親としては、最初からうまくいかなくても何度もチャレンジしたり、コツコツと努力を積み重ねて物事を成し遂げる、そんな根気強い子になってほしいですよね。

 

でも、それは育て方でどうにかなるものでしょうか?

 

今回は子供の根気強さや粘り強さはどこから生まれてどう育つのか、考えてみたいと思います。

そもそも「根気強い」とは?

辞書で「根気強い」の意味を調べると

物事を辛抱強く続けることができるようす、性格 ※広辞苑第七版より

とあり、なにかの目標やゴールに向かって、すぐにやめてしまわず、上手くいくまで継続して取り組む姿勢を指した言葉です。

 

逆上がりや自転車といった運動系から、工作などの作業、ピアノなどの習い事、もちろん勉強も対象になるでしょう。

 

また、クラスや部活などで意見がまとまらないときに、説得したり意見を聞いたりして話し合いをゴールに到達させるなど、人間関係でも根気強さが問われることがあります。

 

ただ、「根気強さ」「粘り強さ」にはある程度、生まれついての気質や遺伝的な性格も影響しているようです。

 

精神科医の水島広子さんは、著書の中で「子供1人1人の粘り強さは遺伝的な因子もあり、自分で変えられない面もある。自分の性格を知り、うまくつきあっていくのが良い」という意味のことを述べています。

 

また、元陸上アスリート選手の為末大さんも、あるWEBサイトで「メンタルの強い子供に育てる方法」という特集記事に対し「先天性が大きい。自分の人生でできるのは自分の扱い方を覚えること」とコメントしています。

根気や粘り強さがない、飽きっぽいのにはメリットもある!?

「根気強い子」「粘り強い子」は優れていて、そうでない子や飽きっぽい子はよくない…というイメージがあるかもしれません。

 

しかしどんな性格にも両面があり、飽きっぽく根気がないと見える子にも、次のような良いところがあります。

 

  • 好奇心が強い
  • 新しい発見や発想ができる
  • 機転が利き判断力がある
  • 変化を恐れない
  • ものごとに執着しない

 

成長するにつれ、部活や学校・職場が合わない場合はガマンせず別の環境へと移動する力があるということですし、ブラック企業だと分かっていてもなかなか辞められない、心を病むようなストレスフルな人間関係から抜け出せない…といったことも少ないと予想されます。

 

人生でそれができるのは非常に有益で、ときに命さえ守ってくれることでしょう。

「根気強くなってほしい」と願うとき、親にできること

とはいえ、親としては、なんでもすぐに投げ出さず最後までやりきってほしいと思いますよね。

 

それならば、まずはいきなりゴールに到達させようと思わず、スモールステップで「もう少しだけ取り組む」を目指してみては。

 

子供の「もう少しだけやってみる」が発揮されたシーンを、ママたちに聞かせてもらった体験談で紹介します。

自分で決めたことならもう少しできる

Tさんのお子さんは、5歳からピアノ教室に通い始めたのですが、毎日の家での練習が進まず、無理にピアノの前に座らせても「できない」とだだをこねてしまうことも多かったそうです。

 

「最初は来週までにこの課題ができるように…と練習させていたのですが、どうしても練習が続かないので、先生にも相談して、ここまでならがんばれそうというラインを本人に決めさせました。すると、まだ気が乗らない時もありますが、前よりずっと取り組めるようになったんです。自分で決めたことだから、という意識が芽生えたようですね」

「実現したいこと」があればもう少しできる

Kさんの息子さん(当時小学1年生)は、毎日の宿題をなかなか最後までやり通せず、ママ・パパはなだめたりすかしたり時には叱ったりしつつやりきるのにとても苦労したそうです。

 

「でも、工作だけは保育園の時から大好きで、熱中するとどんどん材料を持ってきて何時間もやり続けることも。そこで、夏休みの宿題の自由研究は工作にしない?と聞いて、本人の考えた可動式のロボットを作ることにしました」

 

「すると、思ったように腕が動かないとか、バランスが悪くて倒れてしまう…といった課題をクリアするために工夫を重ね、とても粘り強く完成させたんです。先生にもほめられるし、やりとげた達成感が記憶に残ったようで、宿題も前より続くようになりました。このくらいロボットよりずっと早くできるしね…と言いながら」

全体像やゴール、やるべき理由が分かっていればもう少しできる

Yさんのお子さん(当時小学3年生)は、小学校入学時にスポ少でサッカーを始めたのですが、単調な反復練習がおもしろくないのか、しだいに練習に行きたがらなくなり、その後結局半年くらいでやめてしまったそうです。

 

「2年生になってからふと聞いたところ、この練習で何ができるようになり、どんな場面で役立つのか…が分からなかったから、ただ言われた通りにやるのが苦痛になってきたようです。私としては、そんな理屈をいう前に、まず言われたことをやりきる姿勢が欲しかったのですが…」

 

しかし、パパからのひとことでYさんも少し見方が変わったとのこと。

 

「そうやって全体を把握して、目標達成のために何をしたらいいのか考え、実行する…というのは大人になって働く時にすごく役立つ姿勢だよ!と夫が言うので、ああ、理屈はいいからとにかくやりなさいというのは私の価値観で、この子はこの子なりに考えがあるんだなと」

 

その後、息子さんは別のスポーツを始めたのですが、Yさんはいま、送り迎えの時などに「今日の練習は何ができるようになるため?」と聞いて、息子さんの説明を楽しみにしているそうです。

 

「息子も、ゴールがはっきりしているとやりがいを持って続けられるようですね」

便利すぎるモノが手元になれけばもう少しできる

Fさんは、夏休みに家族でキャンプに出かけたとき、忘れ物をしたことから、息子さん(当時小学4年生)の意外な一面を見たといいます。

 

「バーベキュー用の着火剤を忘れてしまったんですね。新聞紙とライターで少しだけ炭の端に火が付いたのですが、全体に火が回るにはかなり時間がかかりそうで…でも、息子が一生懸命うちわであおいだり、枯れ枝を入れたらいいんじゃない?と集めてきたりで、普段はすぐめんどくさい、もう終わっていい?とよく言うのに、びっくりしました」

 

Fさんは、家に帰ったあとも、スイッチを入れるだけのゲーム機だけではなくボードゲームを出してみて家族で遊んだりしているそうです。

 

「ちょっと不便なくらいが子供の力が発揮できるのかもしれませんね」

 

とのことでした。

おわりに

今回は「根気強い子」の育て方について考えてみました。

 

筆者自身、人と比べて決して「根気強い」とはいえない性格ですが、わが子が勉強するはずの時間にスマホで動画を眺めていると、「もう休憩?」と思わず言ってしまいそうになります(笑)。

 

しかし、そもそも親が根気強くもないのに、子供にだけ「根気強くあれ」と要求するのは不公平ですよね。

 

親子やきょうだいでも1人1人性格が違うこともふまえ、その子に合った努力や困難への対処を一緒に考えていけるような子育てを目指したいものです。

文/高谷みえこ
参考/書籍『10代の子をもつ親が知っておきたいこと』水島広子 著/紀伊國屋書店

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