母と娘2

母親にモヤモヤした経験がある場合はもちろん、毒親の話題を耳にして「私もいつか、娘をモヤモヤさせるのでは?」と不安を抱く母親は、少なくないのではないでしょうか。

 

「娘が母を重たいと感じるのは、距離が近いとき。思春期以降、母親は意識的に娘との付き合い方を変えていく必要があります」と話すのは、15年以上、母娘問題専門のカウンセラーとして活動する横山真香さん。

 

娘の成長とともに、母親はどう接し方を変えるべきなのでしょうか。そのヒントとして、重たい母たちが陥りがちな言動をタイプ別に解説していただきました。

娘との距離感を成長に合わせて変えていく

母娘がいい距離で付き合い続けるためには、思春期以降の付き合い方が大切だと横山さんは話します。

 

「小学校4年生前後から娘が反抗的な態度を取るようになったら、それは自立心の現れ。口うるさく叱らず、娘の言動の裏にある気持ちを想像し、受け止めつつ見守ってください」(横山さん)

 

中学生以降は、子どもを取り巻く大人の一人として、新たな信頼関係を築きはじめる時期だそう。

 

「普段はあれこれ詮索せず、考えさせるのが一番の支援です。子どもが話し出したら、遮ることなく終わりまで聞き、気持ちを受け止めて。そのうえで『あなたはどうしたらいいと思う?』と問いかけてみましょう」

タイプ別・娘への「毒抜き」チェックリスト

娘と上手に距離を取れない母親を5つのタイプに分け、娘の思春期以降、やりがちな行動をそれぞれ紹介します。もし自分に当てはまる言動パターンがあるならば、いい距離で娘と付き合い続けられるように改善していきましょう。

 

(1)支配タイプ

娘に「○○しなさい」「○○すべき」など常に命令形で接しがちな人は、根底で「娘の人生は親である私が決めるもの」と思い込んでいる節があります。

 

自分が常に権力者でないと満足できず、力関係に執着しやすくありませんか?

 

子どもの自我が芽生えてきてからも命令ばかりしてしまうなら要注意。

 

このタイプは、思春期に娘から反抗的な態度をとられると怒りがわき、「娘のくせに」などと親が上に立っていることを誇示しがち。それまでの関係から、娘が萎縮して反抗できなくなっているケースもあります。

 

娘が話し出すと先回りして結論を出す傾向があり、思春期以降は恋愛、就職、結婚などにいちいち口出ししたくなりそう。思い通りにならずイライラする人もよく見られます。

 

娘の人生の決定権は娘に委ねること。娘の考えを尊重し、お説教をしないように努めましょう。

 

(2)依存タイプ

「ママ、わからないから」と娘に何でも頼ろうとする人は、過剰に甘えているかもしれません。

 

自分一人で物事を決められず、娘に助けを求めがち。苦手な親戚とのやりとりを任せるなど、面倒事を押しつけている節がありませんか?

 

このタイプは、思春期になって娘が反抗を始めると、ひどく動揺したり、「○○ちゃん変わらないで」と懇願したりする傾向にあります。娘はよけいに反発するか、相談したいのに相談できない苦しい状況に。

 

恋愛や進学、就職、結婚といった局面でも、判断はすべて娘任せ。それなのに、娘が何か失敗したら「あなたが決めたんじゃない」と責任逃れをしたくなるのがこのタイプです。

 

娘は、あなたの母親ではありません。娘の自立に不安がわいても、動揺していない演技を。娘の問題を解決してあげる必要はないので、気持ちをくみ取る努力をしてください。

 

(3)無関心タイプ

自分の子どもに興味や関心を抱けず、理解できないと思い込んでいませんか?

 

娘が一生懸命に話をしても、「自分で決めなさい」「ママにわざわざ言わないでよ」とシャットアウトし、家事やスマホに没頭。「私は子どもを持つべきではなかった」と考える人もいます。

 

思春期に反抗されても、やがて独り立ちしても、自然と娘に関心を持てるようになることは難しいかも。娘はいつしか諦め、何も言わなくなってしまうケースが多いようです。

 

このタイプは、子どもに関心を持てない自分に気づいた段階で、カウンセリングなどで自分自身と向き合うことを検討してみてください。あなたが子育てに無関心なのは、心の奥底に気づかずにいる問題があるせいかもしれません。専門家とともにそれを認識することが、親子関係の修復につながることもあります。

 

(4)女優タイプ

娘が口を開くたびに「ママはね」と話を奪いがちな人は、自分に注目が向いていないと気が済まないところがあります。

 

常に自分の存在をアピールしたいのは、自分に自信が持てないからではないでしょうか。

 

思春期の娘から反抗される、または相談を持ちかけたりされると、自分に何か影響があるのではとめんどうくさく感じがち。「私、かわいそう」と被害者ぶった気持ちがわく人もいます。

 

娘に嫉妬してしまい、嫌みを言ったり、張り合ったり、ひがんだりしやすいこのタイプは、娘が自立していく姿を喜びながらも、一方で娘と自分を比較して自己嫌悪に陥りやすい人。

 

娘が話を始めたら、自分に焦点を当てないように注意して。「私は聞く人」と自分の役割を自覚し、黙って娘の最後まで話を聞き、嫉妬やひがみの言葉は意識して飲み込むようにしましょう。

 

(5)のっとりタイプ

娘が活躍すればママ友や隣近所に自慢したくなり、一番になれないときは強く異議を申し立てる。娘が生きがいで、常に娘のことばかり考えていませんか? 

 

このタイプは、娘に理想を求めるあまり、「あなたはこうよね」と決めつけたり、娘に「一番であれ」とプレッシャーをかけたりする傾向にあります。

 

娘は、思春期以降、気を遣って反抗できないこともしばしば。相談を打ち明けても自分のために考えてくれないので、母に心を開かなくなることも。

 

自己肯定感が低いため、現実から目をそらすために娘の人生に逃げ込みがち。娘の修学旅行やデートの際は、どこに行くか、何を着るかと我が事のように楽しみます。

 

娘の進学や就職、結婚について自分の手柄のように話をしたくなったら、「娘の人生の主役は娘」と唱えるトレーニングを。自分一人が祝えば十分と心得て、静かに見守るよう心がけましょう。

 

PROFILE 

横山真香(よこやま・しんこ)さん

横山真香さんプロフィール
メンタルケア心理士、母娘関係改善カウンセラー。2005年から母娘問題専門のカウンセラーとして活動するほか、母娘関係やハラスメントに関する講座、講演への登壇、振り回されないマインドを手に入れる「実践マインド・プログラム」のワークショップ主宰なども。著書に『あなたはもっとラクに生きられる 長女が”母の呪縛”から自由になる方法』(大和出版)がある。

取材・文/有馬ゆえ