母と娘1

母親の言動にイライラしたり、なんとなく重い…と感じたりしたことはありませんか?

 

母娘問題専門のカウンセラーである横山真香さんは、「親子関係のなかでも、母親と娘の関係は、父親と娘、母親と息子の関係よりもモヤモヤしやすい」と指摘します

 

日本では育児が母親の仕事だと認識されてきたため、仕事で家を不在にする父親よりも母親の方が子どもと密な関係になりがち。そのうえ、母親は、異性である息子より、同性である娘のことを理解できると思い込んでいるというのです。

 

「『母親なら娘のことは一番わかって当然』という固定観念も手伝って、娘に自信を持って接し、また近づきたがる母親が多いように感じます」(横山さん)

 

いわゆる「毒親」ではないけれど、母娘関係にはモヤモヤがつきもの。ときに重たい母親と、常にいい距離で付き合うにはどうしたらいいのでしょうか。

支配、依存だけじゃない、5つのモヤモヤタイプ

横山さんによると、モヤモヤする母親は、

(1)支配タイプ

(2)依存タイプ

(3)無関心タイプ

(4)女優タイプ

(5)のっとりタイプ

の5つにわけられるとのこと。それぞれ、特徴と関係改善に役立つ付き合い方を聞きました。

 

(1)支配タイプ

<特徴>

力関係に執着し、自分が常に権力者でないと満足しません。娘を支配したがり、わざと頭を下げさせたり、娘自身が考えて選択したことを「おかしい」と指摘して価値観を押しつけたりします。結婚後、二世帯住宅など近くに住むことを望む人も。

 

<口癖>

「お母さんの言うことを聞いていれば間違いないの」

「結婚しても、あなたは私の娘なのよ」

 

<いい距離で付き合うコツ>

このタイプの母親は、親戚の場で娘を言いなりにさせるなど、支配欲求を満たすためだけに娘を呼び出します。一方、娘さんは支配されているという自覚がないケースが多いので、まず母親の行動を「支配しようとしているのかも」と疑うクセをつけて。また、支配が目的だとわかる誘いは、初めは5回に1回、次に4回に1回…と、徐々に断る回数を増やしていきましょう。

 

(2)依存タイプ

<特徴>

依存心が強く、母と娘の立場が逆転しがち。責任感に乏しくて、自分一人では物事を決められない人が多く、なかには意識的に社会の窓口として娘を利用し、面倒事を押しつけているケースも。結婚後も、何かと連絡をしてきては娘の手を煩わせます。

 

<口癖>

「ママ、わかんないのよ」

「○○ちゃん、やってくれる?」

 

<いい距離で付き合うコツ>

このタイプの母親を持つ人は、「娘なんだから母親を助けなくちゃ」と思い込んでいるケースがしばしば。まず、「自分の人生でもっとも優先順位が高いのは自分の気持ちである」と心得て。“母親の気持ちを最優先にする娘”を卒業し、少しずつ頼みを聞く回数を減らしていきましょう。罪悪感にさいなまれたら、「私は自分の人生を生きているんだ」と言い聞かせて。

 

(3)無関心タイプ

<特徴>

自分の子どもに興味や関心を抱けず、理解できないと思い込んでいるタイプ。子どもが一生懸命に話をしても、家事やスマホ、、テレビ、手芸などに没頭して、話しかけるなというオーラを出します。本人が「子どもを持つべきではなかった」と話す人も。

 

<口癖>

「今、ママは忙しいの」

「なんで忙しいのに話しかけるの?」

 

<いい距離で付き合うコツ>

一番の解決策は、関心を示さない母親に傷つかない環境を用意すること。愛情は血のつながりではなく、気持ちのつながりから生まれるもの。身近で“第二のお母さん”と呼べる人を探しましょう。姑といい関係を築いたり、職場に母のように慕う存在を見つけたりすることで、母親に悩まないようになったという人も多いです。

 

(4)女優タイプ

<特徴>

自分に注目が向かないと気が済まず、自分の存在をアピールしたがるナルシストタイプ。娘に嫉妬し、嫌みを言ったり、張り合ったり、ひがんだり、ときに泣いたり、具合が悪くなったりする人も。結婚後は、娘のマンションに押しかけて嫌みを言って帰るのがお決まりのパターン。

 

<口癖>

「いいわよね、あなたは」

「おめでとう。でも○○はイマイチね」

 

<いい距離で付き合うコツ>

このタイプは節目節目で娘に嫉妬の炎を燃やします。就職の際なら、「がんばったからね。いい会社に就職できておめでとう」などと娘を褒めちぎりつつ、最後に「でもいつ会社が潰れるかわからない時代だし心配ね」といった嫌みを一言。いつまでも娘の立場で一喜一憂していると疲れてしまうので、一人の大人として母親と付き合いましょう。褒め言葉はありがたく受け取り、攻撃は受け止めずに交わすよう心がけるのがおすすめです。

 

(5)のっとりタイプ

自己肯定感が低く、夫と不仲で、娘が生きがい。常に娘のことばかり考え、その人生を楽しむことで現実逃避しています。ときに娘に「一番であれ」とプレッシャーをかけがち。娘が出産すると、勝手にベビー服を買いそろえるなど、再び母親役をやり始める人が多いです。

 

<口癖>

「一番じゃなきゃダメよ」

「あなたが生きがいなの」

 

<いい距離で付き合うコツ>

“母に人生を分ける娘”から抜け出しましょう。産後、自分の母親に頼る機会が増えた人もいるかもしれませんが、子どもが小学校に上がれば、徐々に人手はいらなくなります。関わりを減らしていきましょう。「遠慮しないで」「私の生きがいだから」と母親に言われたら、「今までお世話になったから、これからはお母さんの人生を一番大事にしてあげて」と言い添えて。

 

PROFILE 

横山真香(よこやま・しんこ)さん

横山真香さんプロフィール
メンタルケア心理士、母娘関係改善カウンセラー。2005年から母娘問題専門のカウンセラーとして活動するほか、母娘関係やハラスメントに関する講座、講演への登壇、振り回されないマインドを手に入れる「実践マインド・プログラム」のワークショップ主宰なども。著書に『あなたはもっとラクに生きられる 長女が”母の呪縛”から自由になる方法』(大和出版)がある。

取材・文/有馬ゆえ