藤本美貴03

「今はいい子の長女ですが、いずれは反抗も始めるはず。思春期にクソババアと呼ばれる覚悟はできています(笑)」と話すのは、藤本美貴さん。9歳の男の子と、5歳、1歳の女の子を育てるママです。娘が将来、自分に対してモヤモヤした感情を抱かずいられるために、母親はどのように接していけばいいのでしょうか。「悪い男に引っかかってほしくない」「幸せな結婚をしてほしい」という願いは、どうすれば届く?

 

未就学児から成人後まで、母親はどう振るまうべきか、藤本さん、母娘関係に詳しいメンタルケア・コンサルタントの大美賀直子さんとともに考えます。

子ども時代は本人の「やりたい!」を大事に

大美賀さん:

母娘関係を良好に保つためには、子どもの発達に合わせて、少しずつ距離感を変えていくことが重要です。発達心理学的に、1歳までの赤ちゃん期は基本的な信頼を獲得する時期。叱らず、要求に応えるのが大切です。

 

未就学児は、自律性と積極性を伸ばす時期。できるかぎり自分で最後までやらせたり、幼稚園や保育園といった集団に関わらせたりして自信を育てましょう。

 

藤本さん:

うちは長女が5歳ですが、子どもにはできることは自分でやってもらっています。服も自分で選んで着てもらいますし、選んだものに対して「これはおかしい」ともあまり言わないですね。イヤイヤ期の「やりたい!」も、基本的には何でもやらせるタイプです。

藤本美貴×大美賀直子04

大美賀さん:

この時期、二択でもいいから子どもに自分で何かを選ばせるのは、実は重要なんです。責任感も生まれるし、本人は自分らしさを確認できますから。

 

小学校に上がってからの児童期は、勤勉性を伸ばす時期。大人の話を素直に受け止めてチャレンジを重ね、自分の得意分野でがんばる力を身につけます。親は、本人が夢中になれることを思いっきりやらせてあげましょう。

 

藤本さん:

私、宿題も終わってないのに遊びに熱中していると、止めてしまいがちです。

 

大美賀さん:

熱中できることは自分らしさのヒントになるので、できるだけ見守りたいですね。また、本人のこだわりたいところに「がんばったね」「よかったよ」と言葉をかけると自信がつきます。

思春期以降、母と娘が“友人”のような関係だと… 

藤本さん:

自分の過去を振り返っても、思春期に入ると母娘関係はかなり変わるように感じます。自分が母に言った「クソババア」を娘からも言われる覚悟はできていますが()、実際にはどのように接すればいいのでしょう?

 

大美賀さん:

子どもが自立を始める思春期は、母娘の心の距離を少しずつ離し始める時期です。巣立ちはじめる娘に対して心の距離が近すぎると、それは母娘関係がモヤモヤする原因になります。

 

この時期、子どもは友人関係のなかで自分らしさを学び合います。母と娘は、友達のような関係にならない方がいいでしょう。「親」という漢字のように、子どもの近くにある木の上から見守るような距離感がベストです。自分や他人を傷つけたり、ものを壊したり、犯罪に手を染めたりという心配がない限り、ある程度は見守って。

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藤本さん:

まさに、うちの母は基本的にはどこに何時までいるか正直に言えば大丈夫というタイプでした。中高生の頃は、それさえ言っておけば夜遅くなっても何も言われなかったんですよ。

 

大美賀さん:

年齢に応じて、「行く場所は言っていくこと」「○時までには帰ること」ぐらいのルールは決めておいて、過度に束縛しないのがいいと思います。「危険な目に遭わないか」「異性関係で傷つかないか」と心配が募るかもしれませんが、口出しはできるだけ控えて。

 

その代わり、子どもには日頃から「自分自身を大切にしよう」というメッセージを送りたいですね。常に「あなたは世界に1人しかいない宝物だ」という気持ちで接し、「代わりはいくらでもいる」という態度は絶対にとらないこと。「自分には価値がある」と思える子どもは、行き過ぎた危険には手を出さなくなります。

進路選択では正確な情報提供を

藤本さん:

中高校生になると、進路や職業についても悩む時期です。長女は歌うことが好きなのですが、親としては芸能人は積極的にはすすめたくないんです。その子の希望次第だとは思いますが…。

 

大美賀さん:

子どもに幸せになってほしいと、特に自分が人生で後悔している部分について口を出したくなる母親は多いですよね。ただやはり、適度な距離を保ち、子どもの意思を尊重するべきです。子どもの選んだ道が厳しかったり、親の希望に添わなかったりしても、信じて応援してあげるのが一番。

 

とはいえ、より良い選択のために、視野の狭い子どもに正しく情報提供をすることはできます。子どもが自分らしさをどう生かしたいのかを見極め、異なる職業を提案しても。

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藤本さん:

同じ動物に関わる仕事でも、動物園の職員さんもいれば、獣医さんもいますよね。親としては、食べていける職業なのかも気になります。

 

大美賀さん:

もちろんある程度の収入は必要ですが、親がこうあってほしいと思う人生がその子にとって幸せとは限らないのが難しいところ。あくまでその子らしい人生をどうしたら選択できるか、親子で考えたいですね。

楽しく生きる母の姿が「大人になりたい!」につながる

大美賀さん:

親の大きな役目のひとつに、将来像を見せることがあります。子どもは接することの多い大人である母親の生き姿から「生きるのは楽しいんだ」「結婚っていいものだな」「夫婦の会話って面白そうだ」と学習するのです。

 

不在がちだった父親が在宅ワークになり、子どもに仕事や家事をしている様子を見せられるようになった家庭は、いい影響があるかもしれませんね。

 

ただ、中にはワンオペ育児で疲弊し、「自分は楽しんではいけない」と思い込んでいる母親たちもいます。すると、ことに同じ女性である娘は「大人になるのが嫌だな」と感じてしまう。

 

藤本さん:

子どもは、母親がしたいことを主張しても意外に受け入れてくれるんですけどね…。テレビのチャンネル権だって譲ってくれますし、ネイルサロンで爪をきれいにすれば褒めてくれますし。

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大美賀さん:

母親が自分らしくふるまうって大事なんですよ。もし自分を犠牲にしがちな人は、スーパーに行ったら必ず自分だけのために何かひとつ買うとか、100均やプチプラでメイク用品を買うといったことからはじめてみて。親が自分らしさを取り戻せば、子どもにも夫婦関係にもいい影響があるはずです。

 

藤本さん:

子どもに対する態度だけじゃなく、親が自分らしく生きることも大切なんですね。まずは来るべき思春期に備えて、自分らしく強い心で生きていきたいと思います!

 

PROFILE

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右・藤本美貴(ふじもと・みき)さん

1985年、北海道生まれ。ソロアイドル、モーニング娘。のメンバーとして活躍後、2009年に品川庄司の庄司智春さんと結婚。2012年に長男、2015年に長女、2020年に次女を出産し、現在3児のママ。 You Tube「ハロー!ミキティチャンネル」では日々の家事、育児などについて発信中。

 

左・大美賀直子(おおみか・なおこ)さん

メンタルケア・コンサルタント。公認心理師、精神保健福祉士などの資格を持ち、心理カウンセラー、セミナー講師として活動中。情報サイト「AllAboutストレス」のガイド。 新刊のカウンセリング小説『大人になっても思春期な女子たち』(青春出版社)では、アラサー女子たちが自身の課題を発見し、自分らしく成長していく様子を描いている。

取材・文/有馬ゆえ 写真/増永彩子