藤本美貴×大美賀直子01

産後、母親のサポートを受けるようになり、そのありがたさと鬱陶しさを再確認…。たとえ親子でも、仲が良く関係が良好であっても、母と娘にモヤモヤはつきものです。藤本美貴さんは、実母の助けを借りながら育児と仕事を両立しているママの一人。子どものお世話を頼むときは、さまざまな工夫をしているそう。

 

「母娘のモヤモヤ」を解き明かす特集の1本目である本記事では、藤本さんの実体験にヒントを得つつ、母親へのモヤモヤの手放し方をメンタルケア・コンサルタントの大美賀直子さんに解説してもらいます。

「親子なんだからしてくれて当然」がモヤモヤを生む

大美賀さん:

30代のワーママ層には、出産して母親とのかかわりが増え、意見がぶつかったり、モメたりする人も多いんです。藤本さんはお母さんとどんな関わりをしていますか?

 

藤本さん:

私は16歳のときに一人で上京し、18歳からは上京してきた母とまた一緒に住むようになりました。24歳で結婚してからも近くに住んでいて、出産後は一緒に子育てをしてくれる存在。仕事のときは、母に子どもをみてもらっています。

 

でも、母にモヤモヤした感情を抱いたことはないんですよ。とはいえ、お互いに文句がでないように工夫はしているかも。例えば、感謝を言葉や行動で示したり、お互いの都合についてこまめにコミュニケーションを取ったり。文句も言い合います。

 

大美賀さん:

母子関係でもっとも大切なのは意思表示。「親子なんだからしてくれて当たり前」「わかってくれて当たり前」ではダメですよね。互いに「こうしたい」「こうしてほしい」と言い合えた方が長く一緒にいられるんです。

 

ただ、藤本さんはそれを自然体でできているけれど、実際には雰囲気が悪くなるのが嫌で母親への不満をため込んで悩む娘さんたちは多いんですよね。

 

藤本さん:

そうなんですね。もう一つ工夫しているとしたら、自分の意見を言いやすくするためにも、一人目のときから子育てをお母さんの“仕事”にしてもらっていることかな。いくら孫でも、長時間一緒にいれば疲れるし、かわいくないこともありますから。ただ、お給料を渡して働いてもらっている分、「仕事なんだから疲れててもちゃんとやってください」みたいなことも言いますよ()。

大美賀直子01

大美賀さん:

お金を介在させると文句は出づらいですよね。私も家事や育児も労働なのだから、せめて交通費を出した方がいいとよく話します。「何かあったときのために預かっておいて」と添えれば受け取ってもらいやすいですしね。

30代女性は母親と心の距離が近すぎる人が多い

藤本さん:

私は4人兄弟の末っ子なんですが、母とは昔から友達みたいな距離感で付き合ってきました。小さい頃から怒ったりもするけど、遊ぶときは一緒に遊んでくれるし、ふざけるときはふざけてくれる人で。

 

母親と言えど、他人という感覚なんです。東京に呼ぶときも「お母さんの人生だから、来るかどうかは自分で決めて」とお願いしたんです。私と一緒に来たからって幸せになれるとは限りませんから。

 

大美賀さん:

藤本さんは末っ子だから、お母さんも肩の力を抜いて子育てできたのかもしれませんね。一方で、一般的に母親は長女に対して「いい母でいなくちゃ」とがんばりがち。すると、娘側も「いい娘でいなくちゃ」と思いこんでしまうんです。

 

しかも、50代後半~60代の母親世代は、専業主婦でかつワンオペ育児が当たり前なので、家庭だけが居場所になりやすく、同性ゆえに共感する部分の多い娘に意識を向ける傾向にある。そのため、30代女性には母親と心の距離が近すぎる人が多いんです。

 

心の距離が近い母娘で居続けると、互いに「いい母(いい娘)であってほしい」という気持ちが強まりやすく、その分、期待が外れたときの落胆も大きい。だからモヤモヤしたり、ぶつかったりするんですね。

藤本美貴×大美賀直子02

藤本さん:

北海道にいる姉たちは、よく「お母さんって普通はこうしてくれるもんじゃないの?」みたいなことを言うんです。私は「それぞれ家族構成も住んでいる場所も違うのに、母親に“普通”なんてあるの?」って返すんですよ。

 

大美賀さん:

母親は一人ひとり違うのに、世の中でいわれる“いい母”“普通の母”を求めてしまう人は、本当に多い。家庭内で母親が“いい母”を演じようとしなくても、テレビアニメやマンガ、本など、世の中には“普通の母”を教え込むものはたくさんありますからね。

 “いい子”を脱ぎ、程よい距離で母と付き合うには?

藤本さん:

心の距離が近すぎる母と娘は、どうすればいい関係になれるんですか?

 

大美賀さん:

適度な距離を保つことです。そのためにはまず、時間、空間、責任、感情の4つの境界線を意識して。それぞれが一人になれる時間や空間を作ることのほか、すべてを連帯責任にしたり、相手に合わせた感情で居続けたりしないよう心がけましょう。

 

次に、相手を尊重しつつ、自分の思いを率直に伝えること。何か不満があっても「そんなことしないでよ!」ではなく、「お母さんはこういうことがあったから、こう考えたんだね」と相手の感情を否定せず受け取ってから「でも私はこうしたいと思ってるんだ」と主張をする。

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藤本さん:

でも「いい子でいよう」と思う人は自己主張が苦手そうですよね。“いい子”を脱ぐことはできるんですか?

 

大美賀さん:

自分らしさを大切にして日常を過ごしていれば、“いい子”は脱げますよ。自分らしさが何かわからない人は、何時間でも夢中で取り組めることを日常に取り入れてみて。

 

また、スーパーで自分だけのためのプリンを1つ買う、疲れているときは夕食をお惣菜で済ませるなど、わがままな自分、いい加減な自分を許すことも大事です。

 

もし余裕があれば、母親が“いい母”を脱ぐ手伝いをしてあげるのも、関係の改善につながります。母親が娘時代に夢中になったことを聞いてみると、母親に自分らしさを思い起こさせるだけでなく、母親を他者として理解するきっかけにもなると思いますよ。

 

PROFILE

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左・藤本美貴(ふじもと・みき)さん

1985年、北海道生まれ。ソロアイドル、モーニング娘。のメンバーとして活躍後、2009年に品川庄司の庄司智春さんと結婚。2012年に長男、2015年に長女、2020年に次女を出産し、現在3児のママ。 You Tube「ハロー!ミキティチャンネル」では日々の家事、育児などについて発信中。

 

右・大美賀直子(おおみか・なおこ)さん

メンタルケア・コンサルタント。公認心理師、精神保健福祉士などの資格を持ち、心理カウンセラー、セミナー講師として活動中。情報サイト「AllAboutストレス」のガイド。新刊のカウンセリング小説『大人になっても思春期な女子たち』(青春出版社)では、アラサー女子たちが自身の課題を発見し、自分らしく成長していく様子を描いている。

取材・文/有馬ゆえ 写真/増永彩子