オンラインで会議をする女性

コロナ禍から一年が経過し、リモートワークは世間に浸透してきたものの、遠隔でのコミュニケーション方法がわからずモヤモヤされている方も少なくないのではないでしょうか。今回はチームで仕事をする上で欠かせないオンラインコミュニケーション術について、人事や組織の育成に幅広く関わるコミュニケーション教育の達人であり、『感情マネジメント ~自分とチームの「気持ち」を知り最高の成果を生みだす』の著者である池照佳代さんに伺います。

どうすればオンラインでのコミュニケーションは円滑にすすむ?

–– チームでの仕事に欠かせないコミュニケーション。遠隔の場合、どのようなことに気をつけるとうまくいくのでしょうか?

 

池照さん:

弊社では感情知性(Emotional Intelligence Quotient=EQ)をベースに、さまざまな企業に向けてコミュニケーションやマネージメント教育、また、リーダーシップの開発や人事制度の設計などを手がけています。その上で、初期の段階からチームに取り入れておきたい仕組が、お互いのプライベートな情報を常に交換しながらアップデートする習慣です。

 

例えば今日、チームメンバーのお子さんが入学式ということを「え、そうなの?今はじめて知った!」…とならないことが前提で、ひとりひとりの予定や状況を常に把握するよう共有します。それはリアルでもリモートワークでも同様で、仕事に影響があるプライベートの状況などを含めてチームと共有しておくことが鉄則です。

 

ちなみに、弊社のメンバーは私含めて4人いますが、会社設立以来、ずっとリモートワークを継続しています。なかには海外に住むメンバーも。パートナーを含めると弊社に関係するメンバーは20人程度になりますが、全員リモートでチャットを利用し相手の状況を把握するようにしています。

 

–– チャットであれば時間を掛けずサクサクとやりとりが進行しそうですが、チームメンバーひとりひとりの状況をチャットで把握する場合、どのようにすればわかりやすく共有することができますか?

 

池照さん:

チームメンバーの毎日の変化を把握する際、弊社ではEQのツールのひとつである「ムードメーター」を活用しています。

 

「ムードメーター」とは、自分の状態を可視化するツールで、縦軸がエネルギーレベル、横軸がフィーリングレベルとなっていて、その日の状態を10段階のうち何点なのか点数をつけます。例えば、「今日は寝不足なのでエネルギーレベルは5、ですが、明日から連休なのでフィーリングレベルは8」という感じです。これはさまざまな企業の研修・コンサルティングにも取り入れられていますが、弊社ではほぼ毎朝全員、これを発表してから仕事をスタートします。

 

–– 毎朝やり取りすることで得られるメリットはどのようなことでしょうか?

 

池照さん:

ムードメーターを普段から活用し、個々の状況を把握できているチームは「オンライン会議は何時に設定すると全員が参加しやすいのだろう?」「○○さんにあの企画の進行について確認したいけれど今電話しても大丈夫だろうか?」と悩む機会も少なくなるはずです。

 

定期的に「お互いの状況と気持ちを知る」ムードメーターを導入することで、仕事を含めて仕事以外の個々の状況や事情、そして気持ちなど日々変化していくことを皆で把握することができます。また、「自分の状況や気持ちを話す」ことを習慣にすることで、それぞれが自分自身がもっとも成果を発揮しやすい状況を自分で感じ・考え、共有する主体性の発揮にもつながります。

 

–– ムードメーターを活用することで、リモートワーク下であってもチームの変化を毎日確認することができるので仕事もスムーズですね。ちなみにこれは部下だけでなく池照さんもされているのでしょうか?

 

池照さん:

もちろん、私も毎朝発表しています! 慣れないうちは発表するのが恥ずかしと感じるかもしれませんが、部長でも社長でもポジションに関係なく全員が発表することが大事。クライアントの偉い方であっても、打ち合わせの前に必ず発表していただくようにしています。最初は恥ずかしそうにしていても、慣れると躊躇なく発表できるものです。毎回ここからスタートすることで「互いの状況や仕事の進捗もわかるようになった」と皆さんおっしゃいます。

 

そもそもムードメーターはアメリカの教師たちが多様な生徒たちをマネジメントするために活用していましたが、今では生徒たちも活用するようになりました。幼稚園児もそれを発表しています。

 

–– 米国のGoogleやFacebookも研修に取り入れているとか…?

 

池照さん:

そのようです。チームリーダーであれば、自分が最高のパフォーマンスを発揮できるのはどのような状態のときなのか、知っておくことは大事なことですが、チームメンバーひとりひとりのタイミングもリーダーとして把握しておく必要があります。世界中に散らばる多様な価値観をもったメンバーと仕事を進めるGoogleやFacebookでは、チームで成果を出すために研修に取り入れているのだそうです。 

生産性を下げないためのコミュニケーションに必要な3つの〝T〟

–– リモートワークになり生産性が下がった要因のひとつに、コミュニケーションがうまくできていないからという声もありますが、生産性を下げないための上手なコミュニケーション術について教えてください。

 

池照さん:

リモート下でも生産性を下げないために、チームでコミュニケーションをする際は、Theme(テーマ)・Tool(道具)・Timing(タイミング)の3つを意識するようにしましょう。

 

Theme(テーマ)は、何をするためにコミュニケーションを取るのか、Tool(道具)はそのテーマによって電話なのかメールなのか、最適なツールを選択することです。最後にTiming(タイミング)は、相手が反応しやすいのはどの時間帯なのか? 例えば海外にいるメンバーには特に時差への配慮が必要なこともあります。

 

ここでポイントになるのがタイミングで、自分が反応しない時間帯をチーム全員に共有することです。例えば小さなお子さんがいる家庭では朝はバタバタされていますよね? ですから、「私は子どもを保育園へ送り出すまでバタバタしているので9:00まで連絡が来ても返事ができません!」というように伝えておきます。それが共有されていることで、緊急事態でない限りは、「じゃあメールを入れておこう!」となるのでお互いコミュニケーションもスムーズに運びます。部下・上司などポジションにかかわらず、反応できない時間帯をしっかり共有しておくことで、遠隔であってもコミュニケーションを円滑におこなうことができるように設定しておきましょう。

 

Profile 池照佳代

アイプラス代表取締役の池照佳代さん
アイズプラス代表取締役。ペットフード大手のマスターフーズ(現マースジャパン)、フォードジャパン、アディダスジャパン、ファイザーなどで一貫して人事職を担当。人事制度設計・運用やタレントマネジメント、ダイバーシティ、女性活躍推進プログラムの企画実行など、人事業務全般に携る。出産を経て再就職後、法政大学経営大学院在学中にアイズプラスを設立。主に企業向けに人事制度設計支援、社内外コミュニケーションデザイン構築と実行支援、教育・キャリアプログラム設計やツール開発に携わり、コーチング、マネジメントスキル講師としても活躍している。現在、キャリアアドバイザー、EQ(感情知性)トレーナー。最近では、女性活躍支援のための制度・職場づくりにもかかわり、実際に人事職で培った実務能力と、EQトレーナーならではのコミュニケーション・ファシリテーションスキルを兼ね備えたIC(インディペンデント・コントラクター)として、企業から高い評価を得ている。2021年4月から山野美容芸術短期大学特任教授。著書に『感情マネジメント ~自分とチームの「気持ち」を知り最高の成果を生みだす』(ダイヤモンド社)など。

取材・文/望月琴海