2018年に流行語大賞になった「グレイヘア」。白髪を受け入れ、生かすこの髪型も、すっかり定着しました。では実際、グレイヘアにはどんな髪型があるのでしょうか?グレイヘアにしたいと考える人は、どんなきっかけで移行に踏み切るのでしょう?
東京・巣鴨にあるシニア専門のヘアサロン「えがお美容室」の美容師・ヘアメイクアップアーティスト向井みえさんにお話を伺いました。
そもそも「グレイヘア」って白髪と何が違うの?
── 加齢とともに白髪混じりの髪になると、昨今話題の「グレイヘア」が気になってきます。そもそも、「グレイヘア」とはどういうものなのでしょうか?
向井さん:グレイヘアとは、白髪の量にかかわらず、それを隠さず生かしてつくる髪型のことです。白髪染めはせず、カラーを入れる場合はあくまでご自身の髪色を生かしておしゃれに仕上げます。
グレイヘアを希望する方は、ここ2年ほどで急増しています。一番多いのは50代後半~60代ですが、なかには40代後半の方も。近藤サトさん、結城アンナさんなどがグレイヘアにしたり、雑誌やヘアカタログで特集が組まれるようになったことで、「白髪を受け入れるのがオシャレ」という感覚が広まっているようです。
これまでは「白髪染めは礼儀」という風潮が一般的でした。ただ、白髪を黒く染めはじめると、より根元の白髪が目立つようになる。2週間ほどで「早く染めなくちゃ」というストレスが生まれるようになり、それが嫌だったともよく聞きます。
── 皆さん、どんなきっかけがあってグレイヘアを検討しはじめるのですか?
向井さん:40代後半で移行を考える方は、30代前半から白髪がコンプレックスで、年齢的に白髪が増えるタイミングをきっかけに、「もう染めるのをやめたい」と思いはじめるようです。
50代後半~60代以上の方から、仕事を辞めてこまめに染める必要がなくなったこと、子育てが一段落しておしゃれをする余裕が生まれたことがきっかけだと聞きます。お子さんからグレイヘアをすすめられるという方も。
最近は、新型コロナの影響による在宅ワークや外出自粛で2~3か月、白髪を染められずにいた結果、グレイヘアに踏みきるというケースが多いですね。
カラーの方法は白髪の出方で変わる
── グレイヘアにすると、どんな髪型を楽しめるのでしょう?
向井さん:白髪の量と出方、髪質によって、向いているグレイヘアは変わります。白髪率が10~30%ほどの方には、白髪を生かしたメッシュカラーや、全体を明るくしてなじませるヘアスタイルが多いですね。
メッシュカラーの場合、頭頂部や生え際の一部に白髪が固まっている方には、その部分をそのまま太いメッシュとして生かすスタイリングが合うと思います。全体にチラホラと白髪がある方なら、細めのメッシュをたくさん入れるのもすてきです。
白髪率が50%以上になると、全体を染めずに白い色をベースにデザインしたり、白髪部分にほんのりベージュなどのカラーを入れて外国人女性のようなカラーリングに仕上げたり。色素の抜けた白髪だからこそ、と全体にピンクやオレンジなどのきれいな色を入れて楽しむ方もいます。
グレイヘアを生かしてカラーを入れるなら、メンテナンスの目安は2~3カ月に1回ぐらいが理想です。もし白髪を生かしてカラーリングしていても、隠すのではなく生かす色味なので、根元が多少伸びても目立たないんですよ。
── ハリやコシ、ボリュームがなくなるなど、髪質の変化はどのようにカバーするのでしょう?
向井さん:髪の長さは、短い方がツヤとボリュームが出て、生き生きと見えます。とはいえ、髪質に合わせ、前髪を作ったり、パーマで根元から立ち上げたり、さまざまな雰囲気が楽しめますよ。ショートが苦手で、顔周りにパーマをかけたミディアムスタイルにする方もいます。
年代にかかわらず、シャンプー剤を髪質に合ったものに変え、ドライヤーのかけ方を改善するだけでも、ボリュームはかなり出るようになります。ドライヤーは、前から後ろ、上から下ではなく、後頭部から髪の毛を前に向かって流すようにして乾かすのがおすすめです。
── 髪質をキープするために、30代からしておくべきことはありますか?
向井さん:30代後半から、髪質は徐々に変化します。自然乾燥をすると、髪のキューティクルが閉まらず、うねったりパサついたりしがちです。ドライヤーだけはしっかりかけて髪を乾かしておくと、手触りもツヤもまとまりもよくなります。
髪の細さやボリュームが気になる場合は、シャンプーのときに指のはらで頭皮を動かしてマッサージをして、突っ張りをとると変わるはずです。
髪のセットにコテを使う場合は、髪のダメージを防ぐ使い方を。アウトバストリートメント(洗髪後の髪をドライヤーで乾かす前に使う、洗い流さないトリートメント)をつけてきちんと乾かした髪を、しっかりカールがついて髪に負担が少ない100~120℃で巻くのがおすすめです。
グレイヘアで再びオシャレが楽しくなる
── 白髪を「隠す」から「生かす」ようになることで、女性たちには何か変化はありますか?
向井さん:それまで無難な髪色、髪型を選んでいた方でも、グレイヘアに移行する過程で、やってみたいスタイルが増えたり、髪型や色を楽しんで選ぶようになったりと、ポジティブな変化が見られます。
特に60~70代は、自分を表現したいという欲求がある方がほとんど。髪色が明るくなり、カラフルなファッションに挑戦したり、短い髪に映える大ぶりのピアスやオシャレなメガネをつけてみたりとオシャレを楽しんでいらっしゃいます。
── 気持ちの面でも変化がありそうですね。
向井さん:まず、「白髪を染めなきゃ」というストレスから解放されて、気持ちが楽になる方は多いです。また、鏡を見ること、写真に撮られることが嫌でなくなったという声もよく聞きます。なかには、SNSで自分を発信するようになる方も。皆さん、笑顔が増えるので、私たちもとてもうれしいです。
PROFILE えがお美容室
東京・巣鴨の地蔵通り商店街にある、シニア世代専門の美容室。2018年1月にオープンし、年齢を重ねた女性の髪の悩みを理解し、解決してくれると評判に。特にグレイヘアのカラーとスタイリングに定評がある。