かつては「裕福な家庭」「優秀な子」のためのもの、というイメージが強かった中学受験。しかし最近では、多くの家庭がチャレンジするようになっています。
気になるけれど、何から始めればいいのかわからない…。そんな保護者向けに、「中学受験の正体」を“イロハ”から進学塾VAMOSの代表富永雄輔さんに教えていただきます。
今回は、学校説明会について。そもそも学校説明会って何?学校説明に行く意味や見るべきポイントについて伺います。
成績のブレを想定し多くて30校が目安
学校説明会とは、各学校が保護者や受験生を対象に開催するもの。多くの場合、校長や入試広報担当者が学校の教育内容や進学実績について紹介し、その後、施設見学がある…という流れです。
完全に保護者のみを対象にしている場合もあれば、受験生のために入試体験や部活体験を同時に実施する場合もあります。最近は、共働きの保護者のために、土日開催や夜開催をするところも増えています。コロナ禍ではオンライン開催も目立ちました。
どんな学校を何校くらいまわるのかについては、住んでいるエリアや子どもの性格、成績によって違いますが、僕は少なくとも15校、多くて30校くらい行くことをおすすめしています。
ちなみに多くまわらなければいけないのは、成績にブレがある場合ですね。子どもの学力に合った学校を中心にまわっていたらその後、偏差値が10くらい変化した、普段から成績が上がったり下がったりしている、といったパターンです。
また、低学年のころは「通学時間は40分まで!」と思っていたけれど、成長とともに「1時間10分でもいいかも」と思い始めた場合は、学校を探すエリアも広がり、見るべき学校の数も増えるでしょう。
学校説明会めぐりをするタイミングですが、なるべく早い学年のうちから行ってください。できれば2、3年生のうちから行けるといいですね。
学校説明会はどの学校も年に数回しか開催しませんし、しかもその日程がかぶりやすいんです。そして、皆さんも忙しい。仕事もあるし、学校行事、習い事、他のきょうだいの用事…。6年生になると模試や土日の講習も入るようになってさらに時間がなくなります。
早いうちからいろいろな学校説明会に行って、見る目を養っておきましょう。
学校説明会の参加は無料ですが、学校側は熱心に話してくれます。子どもの教育について考えるいい機会なので、中学受験をするか悩んでいる保護者ほど行ってみることをおすすめします。
いろいろな学校説明会がある中で必ず参加してほしい説明会があります。それは地元の公立中学校の説明会です。年に1回くらいは実施されていますから行ってみてください。私立と公立の違いが肌感覚でわかります。
地元の公立校を知っておけば、併願校をどこまで受けるのか、「ここを受けるなら公立でいい」といった基準ができます。
子どもに見せるのは親がふるいにかけてから
子どもを最初から学校説明会に連れて行くのはおすすめしません。
子どもは学校の教育理念を聞いてもよく理解できないことがほとんどですし、子どものアンテナは思わぬポイントに反応してしまったりするからです。
教育内容そっちのけで、「制服がかわいい!」「トイレが温水洗浄便座だ!」といったポイントで学校を選んだりします。もちろんそうした視点も大切なのですが、保護者が行かせたいと思えないような学校に「絶対ここがいい!」とこだわったりすると、あとあと納得させるのに苦労します。
ある程度、保護者が絞り込んで、その中から子どもに選ばせればいいと思います。保護者が30校の説明会に行ったら、そこから10校に絞り、そこで初めて子どもを連れて行くのが理想です。
チェックすべきは先生の人柄ではなく…
学校説明会では、「保護者の力で変わらないもの」や「運に左右されないもの」を見るべきだと僕は考えています。
多くの人が現場の先生や生徒の雰囲気、それから授業のやり方を気にします。でも、たまたま説明会にいた魅力的な先生に、受け持ってもらえる可能性はそれほど高くありません。
生徒の雰囲気やいじめについても、学年やクラス、部活によって状況は変わるので、あてにはなりません。
ですから、そういった属人的なものだけで学校を判断しないほうがいい。属人的なもので唯一チェックするとしたら、校長です。校長は10年くらい変わらないし、校長の考え方に沿った人材が集められるので、現場の先生の細かい性格や人間性よりも、校長の方針はしっかり把握しておくべきでしょう。
雰囲気以外で何を見るか。まずは、通学時間や交通手段の確認です。これは6年間、毎日関わることなので必須。
次は施設面です。どこをチェックするかはわが子次第。スポーツに打ち込みたいなら、グラウンドや体育館、プールなどが気になるでしょう。逆に体育が苦手で「プールがない学校がいい」「グラウンドが狭くても気にならない」と言うかもしれません。理科が好きなら理科室、本が好きなら図書館の蔵書数、きれい好きならトイレや教室の床などが気になるでしょう。
部活の種類も意外と重要です。とくに「ラグビー」や「天文部」などの珍しい部活は、6年間の学校生活が有意義になるかどうかのポイント。興味が定まっている子の場合はぜひチェックしてください。
「繁華街にある」といった学校の周辺環境ですが、これはあまり気にしなくていいでしょう。学校がどこにあっても、寄り道しない子はしないし、する子は足を延ばしてでも遊びに行きます。入学後の人間関係にもよりますし、運に左右される側面が大きいからです。
学校説明会に参加することは、学校選びのためだけではなく、子どもの教育について考える機会にもなりそうです。説明会当日の雰囲気だけで判断せず、通学時間や施設、部活など、保護者が変えられないものをしっかりチェックしましょう。