ダイヤモンド・プリンセス号

 

豪華客船で発生したクラスターに世界中がくぎ付けになってから1年以上。乗船していた約5分1 の人たちが感染してしまったが、難を逃れた夫婦にその後の生活ぶりを聞いてみると…。

 

「結論から言うと、また船旅に出たい。クルーズ船ツアーを心待ちにしている状況です」

 

そう明かすのは昨年2月、乗員乗客3711人のうち、723人の感染者と13人の死者を出した大型客船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗客だった都内在住の幸子さん(60代・仮名)。

孫との再会には長い自粛期間が

このクルーズ船は、23日に沖縄沖を航行中に新型コロナウイルスの感染者を出したことで、急きょ横浜港に着岸。

 

以降、2週間以上におよぶ洋上での〝隔離〟が始まり、海外でも連日にわたって報道され、大騒ぎになった。

 

結局、船内のPCR検査で陰性となった幸子さんと夫・浩史さん(60代・仮名)は、下船して自宅で自粛生活。

船内でPCR検査を受ける幸子さん(右)。鼻の中に綿棒を入れられている(プライバシー配慮のため一部修正)

 

その後、クルーズ代金と往復の交通費などすべて返金され、次回のクルーズに使えるクーポンも付与されることに。 

 

昨年のゴールデンウイークに娘や初孫と再会するために、自粛生活を送ることになった。

 

「結局、孫たちに会うことができたのは夏でした。感染リスクは僕たちの方が高いわけですしね。その後は、また今年の春まで会わないようにしました。最近の変異株は、子どもも感染しやすいみたいですから仕方のないことです」

 

と浩史さん。自分たちがダイヤモンド・プリンセス号の乗客だったことを周囲に明かせるようになったのは昨年の秋以降だったそう。

 

「やはり昨年の今ごろは、新型コロナがどんなウイルスかわからない状況で混乱していたから、あのクルーズ船に乗っていたとは言いにくかったですよね

もしものために身辺整理を始めた

騒動の後は感染予防のために、今までにないほど小まめに手を洗うようなった浩史さん。

 

幸子さんは“終活”を心がけるようになったという。

 

「結局は無事でしたが、船内で隔離されているときは死も頭によぎりましたから。いつ何があってもいいように身の回りを整理するようになりました」

クルーズ旅行を心待ちにしている浩史さんと幸子さん(プライバシー配慮のため一部修正)

 

明るく振る舞う夫妻だが、クルーズ船での体験は確実にふたりの生き方に影響を及ぼしているようだ。

 

「でも、クルーズ船は非日常を味わえる極楽な旅。レストランがいくつもあり、ショーも無料で、カジノもバーや病院もある。コロナが発生してからもクルーは献身的によく働いてくれました。『N95マスク』もすぐに配布してくれて対応に不満はありませんでした」

残りの人生をできるだけ充実させたいから

「不幸にも亡くなった人はいましたけど、予防対策が取られていれば、また乗ってみたいというのが正直な気持ちです」

 

そう話す夫妻は、8月に出航予定のクルーズ船旅行を予約しているという。

 

「まだ催行は決まっていません。そのころには、私たち高齢者はワクチンを接種できると思いますが、若いクルーまで行き渡るかが心配です。他人に迷惑をかけるつもりはありませんが、余生をより実りあるものにしたいと私たち以上の年齢の人たちはみな思っているはずです」(幸子さん)

 

この夫妻のように、多くの人たちの貴重な時間を奪い続けるコロナウイルス。一刻もはやい終息を願うばかりだ。