小田賀子さん

トップセールスの営業職から一転、プリザーブドフラワーの世界に飛び込み、持ち前のバイタリティで道を切り開いてきた小田賀子(おだのりこ)さん。女性社長.netが運営する、女性社長が選ぶ女性社長アワード「J300アワード2020」では準大賞を受賞し、注目を浴びました。

 

2013年には念願のお店をオープンしましたが、その道のりは決して順風満帆ではなく、試行錯誤を経ていったんお店を閉めるという苦渋の決断も…。そんな転機を乗り越え、自分らしいスタイルを確立するまでの道のりを伺いました。

「ちゃんとしたお店だったら…」顧客からのひと言にショックを受け一念発起

── 2013年には、地元の静岡で店舗をオープンされていますね。お店を持つことは、当初からの目標だったのですか?

 

小田さん:

起業した当初は、ただ“プリザーブドフラワーを全国に広めたい”という一心で、店舗を持ちたいと思ったことは一度もなかったんです。心を大きく揺り動かされたのは、お客様の何げないひと言でした。

 

あるお客様にブーケを納品し、とても喜んでいただいたのですが、帰り際に「ちゃんとしたお店だったらもっと高いでしょうに…。お安くて助かったわ!」と声をかけられたのがショックで…。“どれだけ頑張っても世間の見え方はこの程度なんだ”と、努力が報われない悔しさを感じました。そのときに、自宅サロンで満足せずショップを持とうと決意したんです。その2年後に、念願の店舗をオープンすることができました。

アミティエノリ店舗外観

── 思い立ってから2年で実現されるとは…すごいです!お店をオープンしてから、壁にぶつかったことはありましたか?

 

小田さん:

もちろんありました。それまで経営の勉強をしてきたわけではなかったので、店の運営から集客、スタッフの採用や育成など、すべてが手探りの連続でした。次のステージに進むためには、成功している経営者の方々のアドバイスややり方を真似すればうまくいくはずと思い、試行錯誤していたのですが、どうもしっくりこなくて。

 

「それなら自分のやり方でやってみよう」と吹っ切れたのが、今から2年前の2018年です。体制を一新するために、スタッフに事情を伝え、いったん解散という形をとって4か月間お店を閉めたんです。その間、数千人の既存顧客にお手紙を出し、今後どういう店を目指していくかということと自分の思いを伝えました。

成功している経営者を真似てもうまくいかない…再び自分の直感を信じて

── 経営者として4か月もお店を閉めるというのは、かなり思いきった決断ですよね。

 

小田さん:

振り返ってみると、前進したいという気持ちが先走りすぎていたんですよね。とりあえず成功者のやり方を真似るだけで、“この方法が自分の店に合っているのか”“これは本当に自分がやりたいことなのか”を突き詰めて考えることができていなかったんです。

 

最初から変わらず私が目指すのは、お客様にプリザーブドフラワーを通じて幸せになってもらうことであり、記念日やお祝いを成功に導くお手伝いをすること。そのためには、それぞれの背景や思いをしっかりヒアリングし、理解したうえで寄り添うことが何より大切だと思っています。

 

でも、そういったスキルは人に教えても簡単に体得できるものではないんですよね。その結果、お客様が本当に求めていることや解決したいニーズが、私のところに上がって来なくなってしまって。納得のいく仕事ができていないという思いがずっとありました。

小田賀子さん

── しっくりこなかった理由は、そこにあったのですね。

 

小田さん:

本来なら自分がすべてのお客様に関わることが理想でした。でも当時の私は、“経営者としてステップアップするには、従業員の育成こそがすべて”という考えにとらわれすぎていて。時間と労力のほとんどをそこに注ぎ込んでいました。

 

そんな矢先に、手塩にかけて育ててきたスタッフが続けてやめてしまったんです。そこで今のままじゃいけないと気づき、自分の思うようにやろうと考えを変えました。

 

体制を変えるにあたってまずやったことは、“自分にしかできないこと”と“人に任せること”の境界線を明確にすることでした。

自分の原点「すべての顧客に会うこと」に立ち返った

── “小田さんにしかできないこと”というのは…?

 

小田さん:

私が譲れなかったのは、“すべてのお客様に会うこと”です。その方の背景やエピソードを聞きながら、どんなふうに幸せを描いていけるかを考え、提案する。花や私との接点を自信や力に変えてもらうんです。

 

そのためには、ひとりひとりのお客様に十分な時間を割いて関わっていく必要があります。その仕事に注力するために、これまで私が作っていた年間何千個もの小売り商品は、運営するスクールの生徒のなかから腕のいい方を職人として育て、任せることにしました。

 

もちろん経営者ですから、業者との打ち合わせや職人さんへの指導など、やるべき仕事はほかにもたくさんあります。なので、店の営業日を週4日、営業時間は5時間に絞り、その他の時間帯にそれらの仕事を行うことで、100%お客様に会うという環境を整えました。

550件以上のプロポーズを成功に導いた!その理由は…

── 2018年からは「プロポーズプランナー」としても活動し、これまで550件以上のプロポーズの成功に関わっていらっしゃるとか。実際に、どんなことをするのでしょう?

 

小田さん:

その名の通り“プロポーズを成功に導く”のが私の仕事です。その方が、自信と納得感を持ってプロポーズの当日を迎えるために、どんなサポートをすべきかを考え、一から関わっていくので、とても時間がかかります。

 

具体的にはまず、その方がどんな場所でどういったシチュエーションでプロポーズを考えているのかをヒアリングをします。一緒にプランを考えながら下見に行ったり、場合によっては、私が会場に出向いてどの席がいいかを見ながら予約をしたり、店内の動線を撮影してお渡しすることもありますね。

プロポーズプランナーとして活躍する小田賀子さん

── そこまできめ細やかに対応されるんですね!プロポーズプランナーの肩書を持つことで、どのような変化がありましたか?

 

小田さん:

これまでも、お花の提案だけでなく、レストランや施設の予約、関連するサプライズの企画などをトータルで手がけてきたので、実際にやっていること自体はあまり変わらないんです。

 

ただ、それまではこうしたサービスをすべて無料で提供していたのですが、時間と労力を要するので、だんだん疲弊するようになってしまって…。お客様のために何時間もかけるのに、お花代だけでいいと思ってしまうのは、経営者としてどうなのだろう、会社としてもマイナスなのでは?と考えるようになりました。

 

どうしたらご相談料がいただけるのだろうと考えたときに、別の見せ方が必要だと感じたんですね。それが「プロポーズプランナー」を取得した理由です。実際、式場やホテルなど業者さんとお話しするときも、肩書を名乗ることでビジネスとして商談が成り立つようになり、スムーズに仕事が運ぶようになりました。相談料もいただけるようになり、メリットは大きかったと思っています。

 

── ビジネスとして成立させるための大事なプロセスだったのですね。今後はどのような目標を立てていますか?

 

小田さん:

3年後の姿として、年間プロポーズ相談数1500件を目指したいですね!これは、静岡県の年間入籍数の1割相当に当たる数です。それと同時に、プロポーズプランナーの育成にも取り組んでいきたいです。また、現在10名の花職人が在籍していますが、2倍に増やせたらと考えています。

 

 

「『もし生まれ変わっても、またこの仕事をしたい』と思えるほどの天職に巡り合うことができた」と語る小田さん。これからも関わる人たちを幸せにするために全身全霊で取り組み、ますます活躍する姿を見られることでしょう。次回は、仕事と家庭のバランスについてお伺いします。

取材・文/西尾英子