いまから数年前の2017年に流行した「卒母(そつはは)」という言葉をご存知ですか?

 

卒母とは文字どおり「母親」を「卒業」するという意味。

 

漫画家の西原理恵子さんはお子さんの16歳を機に卒母を宣言し、読者からも「私も卒母しました!」「いいな、卒母したい」「私にはできない」など、たくさんの反響がありました。

 

今回は、いま小さいお子さんのいる人には少し先の話かもしれませんが「卒母」について、したい?したくない?できる?など、未来をシミュレーションしてみたいと思います。

「卒母」とは

学校には卒業があるけれども、母親には「子供が20歳になったら」など、明確な卒業時期が決められているわけではありません。

 

とはいえ、子どもが小さいうちは、責任を持って命を守ったり、他人に迷惑をかけたら一緒に謝ったり、衣食住や教育環境を整えたり…は親としての義務があります。

 

前述の西原理恵子さんも、当時、下のお子さんが義務教育を終えたタイミングで自ら「子育てが終わった」と宣言し、新聞連載『毎日かあさん』を終了。

 

その後、新聞読者の投稿を集めた書籍『卒母のススメ』も出版され話題となりました。

 

芸能人のインタビューでも「母にこれからはお母さんと呼ばないでと言われ、奥さんと呼ぶように。本人も喜んでいます」「息子からは卒母しました」「卒母に備えて準備しています」などの談話をよく見かけます。

 

総合すると「卒母」とは、おもにママ自身が「これからは母親としてではなく、自分自身として生きたい」と周囲に意思表明するものですが、書籍などを見ると、まれにお子さんに「もう子供じゃないから」と促されるケースもあるようですね。

18歳以上のお子さんがいる人「卒母した」が8割

2019年に大正製薬が実施したアンケート調査では、社会人またはひとり暮らしの18歳以上のお子さんがいる40~50代の女性のうち81%が、「子育てが一段落したと感じる」つまり卒母の実感を持っていたそうです。

 

また、趣味やセルフケアなど「これからは自分に時間を使いたい」と考える人も9割と、昔のように「老いては子に従い…」といった感覚の人はとても少ないことが分かります。

「卒母」したい?するならいつ?

今回は。就学前から成人まで幅広い年代のお子さんのいるママに、「将来は卒母したいですか?」「卒母するならいつ?」と聞いてみました。

 

4歳児と1歳児のママKさんは、

 

「いまは毎日の目の前のことでいっぱいいっぱいですが、子どもたちがちゃんと成長したら、私のことは気にせず、好きな場所に行って暮らしてほしいですね。最初は泣いちゃいそうですが…。なので、早ければ高校卒業が私の卒母でしょうか」

 

と想像してみたそうです。

 

6年生と4年生と1年生、3人の小学生ママSさんは、

 

「出産前は、子供優先の生活なんて考えられない!と思ってたんですよ。でも、生まれてみたら自分の時間もペースもどこへやらで、また自分優先の生活に戻るのが今度は想像つかないですね…実家にも独身の姉と弟が親と暮らしていますし、うちの子も1人くらい結婚せずに家に残りそうな気がしてます。卒母…できないかも」

 

と苦笑い。

 

高校生のお子さんがいるYさんは、

 

「パート先でこの春お子さんがひとり立ちした話を聞いたら、今日はしんどいな~と思ったら、無理にお肉のおかず作らなくてもいいし、洗濯物も減って、マイペースですごくラクだとか…もちろん子供と離れるのは寂しいですが、ちょっと卒母に憧れてしまいました」

 

と、寂しさよりも期待感が高まっているそうです。

卒母する人もしない人も、気をつけたいこと

一方、「卒母したくない」「卒母の必要はない」と感じている人は、「子供の巣立ちは見送るが、さりげなく気にかけ、困った時はいつでも助ける」というスタンスの人もいました。

 

ただ、次のような兆候が見られたら少し注意が必要かもしれません。

 

  • 真面目で家族のために自分を後回しにしてがんばってきた人
  • 配偶者の転勤などで地元に親戚や知人が少ない人
  • 個人的な趣味や活動を持たない人
  • 子どもが巣立つと1人暮らしになる人
  • 配偶者や同居の祖父母との関係が思わしくない人

 

実は、上記は「空の巣症候群」になりやすい人の特徴だといわれます。

 

ママ自身に子供と離れる心の準備ができていないまま、強制的に「卒母」を迎えると、何もやる気が出ない・涙が止まらないなど、メンタルの不調をきたしてしまうことがあります。

 

この「空の巣症候群」を未然に防ぐには、仕事や趣味・スポーツ・ボランティアなど打ち込めるものを持つ、夫や地域の人などと何でも話せる関係を作っておくなど、子供の成長に合わせて少しずつ環境作りをしておくのがおすすめです。

 

また、子供自身は自立したがっているのに、親の方が手放すことのできない「過干渉」になっていないかも注意が必要です。

おわりに

CHANTO世代のママには「卒母」なんてまだまだ先に思えますが、いざ子どもが巣立つときに困らないよう、今から準備できることも意外とあるのではないでしょうか。ぜひ参考にしてみて下さいね。

文/高谷みえこ
参照/書籍『卒母のススメ』西原理恵子 著 毎日新聞出版
大正製薬プレスリリース | 子どもが独り立ち=「卒母」世代の実態を調査! |https://kyodonewsprwire.jp/release/201911263992