「自慢ばかりするママ友」「なにかとダメ出しばかりする夫」。ムカっとすることがあっても、毎日顔をあわせる相手とモメるのは避けたいですよね。でも、わきあがる怒りの感情が…。「そんなときはグラウンディングとタイムアウトを」とアンガーマネジメントコンサルタントの松井晴香さん。さて、その方法は?
ママ友への怒りを抑える「グランディング」って?
反射的にカッとなって思わず言い返したり、露骨に怒った表情をしたり —— 。誰だってそういう経験はありますよね? けれど、あとから「やらなければよかった…」と、後悔することがほとんどではないでしょうか。とくに毎日のように顔をあわせるママ友や夫などと、そんなことになったら大変です。
そこで「とっさのイライラをやりすごすテクニック」を2つご紹介しましょう。まずは「グランディング」。グランディングとは、目線と意識を地面(グランド)に向けることで、怒りの感情がふくれあがることを防ぐテクニックです。
たとえば「こちらの話をさえぎって、自慢話ばかりするママ友がいる」としたなら、真正面から向き合って、イライラやムカムカを強めるのは避けましょう。「へえすごい!」「そうなの?」などと返事はしながらも、目の前にあるものを細かく観察し、話とは別の部分に意識を向けるのです。
『毎朝、バッチリメイクだな』『眉尻は薄めの茶色だな』『アイシャドウは少しピンクのラメが入っている』『下まぶたにマスカラちょっとついてるな』などと、まったく別のところに目をむけて、心の中で感想を述べてみましょう。
瞬間的に怒りの感情が生まれても、6秒たつと人は理性が働くようになります。裏を返せば、イラッとすることがあっても、6秒間やりすごせたら、反射的に言い返すことを避けられます。
この理性が働く6秒を待つために、グランディングをするわけです。小言ばかりの上司を前にしつつ、手元にペンをロックオン。『このペン使いやすいなあ』『インクは真ん中より少なくなっている』『よく見るとこんなところに傷がある』と、別のことに集中する。
話の長い親戚に返答しながらも『ここの家の壁紙、きれいに張り替えてあるなあ』『うちのより手触りはざらざらしてそう』など、観察するのはなんでも構いません。じっと、物事を観察すると理性を取り戻すだけでなく、面白い発見もあります。
お互いが冷静になれる「タイムアウト」って?
もうひとつ、覚えておきたい方法が「タイムアウト」です。これは物理的に離れて、悪い流れを切り替えるためのテクニック。
たとえば夫と家でケンカになり、お互いに譲れないほどヒートアップした場合。「5分間だけ、タイムアウトにしよう」といって一時的に、その場から立ち去りましょう。他の部屋でストレッチするなり、ちょっと散歩に出るなど、リフレッシュできる時間の使い方がおすすめです。
スポーツの試合でも流れが悪い時など、監督がタイムアウトをとって、選手を冷静にさせます。これと同じで、いったん物理的に怒りの場から離れることで気持ちをクールダウンさせるわけです。もちろん、6秒をやりすごせるので、理性も働くようになる。戻った後は、冷静に話し合いできる、というわけです。
ただし、必ず「タイムアウトにする」と宣言し、また「5分だけ」などと時間を区切ること。何も言わずにプイっととその場を離れると、「逃げるのか!」「逆ギレ?」などと火に油を注ぐことになりかねません。
さらに言いがちですが「“あなた”も私も冷静じゃないからタイムアウトしましょう」とか「”あなた”が落ち着くまでタイムアウトを」などと“相手のせい”にしないこと。カドがたって、「こっちは冷静だよ!」と、逆ギレされかねません。あくまで「私が冷静になりたいから、タイムアウトしよう」と伝えていくのがいいでしょう。
「グランディング」&「タイムアウト」。イラッとなる前、あるいはイラッとしてしまったときは、これらのテクニックを思い出して、うまく理性を取り戻しましょう。
監修/松井晴香 取材・構成/箱田高樹 イラスト/ナカオテッペイ