ここ10年ほどのあいだで、マスメディアやSNSにも、リアルの知人にも、家事や育児を自然に夫婦で分担したりフォローしあったりして進められる家庭がずいぶん増えてきたように感じます。

 

しかし、それ以上に「共働きなのに妻ばかり家事をしている」「2人の子どもなのに、夫が育児に参加しようとしない」といった不満を抱えている人もまだまだ多いのではないでしょうか。

 

そんなとき、おもに妻側に向け「夫はじょうずにほめて家事を手伝わせましょう」といったアドバイスをときどき見かけます。

 

これに対し以前から「どうして同じ大人なのに、子どもみたいな扱いをしないといけないの?」「かえってバカにしているように感じる」という反論の声も。

 

そこで今回は、「夫はほめて伸ばす」「大人として対等に扱う」それぞれの立場のママに、そうしている理由や効果などを聞かせてもらいました。

ちなみに「ほめる」は2つあるんです

その前に、ちょっと豆知識を。

 

「ほめる」には、実は二通りの漢字があります。

 

意味の違いは以下のとおり。

 

  • 褒める…部下や子どもなど、目下の相手の良い行動や成果に対しプラスの評価を伝えること
  • 誉める…仲間や上司など、目上の相手に対し、言動や功績をたたえること

 

同じ「ほめる」でも、漢字によって上下関係が逆転するそうです。

 

子どもを「ほめて伸ばす」というときには「褒める」を使いますが、夫婦は「仲間」ととらえれば「賞める」になり、意味合いも「称賛」のニュアンスが強くなります。

 

しかし、例えば夫が日曜日に家族にチャーハンを作ってくれたとき、

 

「すごーい!中華料理屋さんみたい!さすがパパだね!最高!」

 

と絶賛すれば喜々として次回も作ってくれることを狙っている場合、いっけん「誉める」に見えて、実は「褒める」なのではないか…と思えてきます。

 

しかも、妻は内心、

 

(フライパンもまな板も洗ってないしコンロまわりに油やご飯粒が飛んだまま、調味料も出しっぱなし…でも指摘するとヘソ曲げてやらないから、私が片付けるしかないかな)

 

等と思っていたりすると、ますます子どもに対する「褒める」に近いような気がしますね。

「ほめて伸ばす」派のテクニック

今回お話を聞いたKさん(小学校1年生と4歳児のママ)は、「うちは断然ほめて伸ばす派ですね」と話します。

 

といっても、結婚当初は「お皿は洗えてるけど、フライパンとボウルが洗えてないじゃん」と、ほめるより先に、ついついできていないことを指摘していたそう。

 

「まあ、それだとだんだん自分からはやらなくなりますよね。それでも子どもが生まれるまでは私1人でも家事がこなせたし、マイペースでできていいわって思ったくらいでしたが、出産後はそれどころじゃなくて」

 

しかし夫のHさんはそこまでの間に、すっかり言わないと何もしない状態になっていたため、Kさんは

 

「これはまずい!と思いました。そこで、とにかく毎回、おむつを替えただけでも、いい感じにできてる!ありがとう!などと伝えることに。向こうはもちろん私に料理や子どもの世話に対するお礼なんてそのつど言わないですが、まあしばらく続けてみようと」

 

すると、なんと1週間もたたないうちに、

 

「ゴミ集めとこうか?明日土曜だから出すんでしょ、などと自分から言ってくれるようになったので、正直びっくりしました」

 

ということです。

 

「たしかに、大人なのに子育てみたいだな~とは思いましたが…とにかく動いてくれると実際に助かるので今は本当に感謝しているし、それが一番かなと思ってます。子どもたちにも同じようにしているので、かなりお手伝いしてくれますよ」

「対等な関係だから」派の意見

いっぽうYさん(1歳児のママ)は、以前から、パートナーに対して「ほめて伸ばす」という言い方をすることに違和感があったといいます。

 

「どう考えても、コーチとか上司とか親とかが使う言葉ですよね。夫婦にはそういう上下関係はないと思うんです。それに、ほめておけばいい気分で手伝うはずって、なんだかパートナーをバカにしている気がして」

 

ただ、家事や育児に参加を促す目的で無理にほめるのは違うと思っていたものの、育休中で24時間家で子どもと過ごすYさんとフルタイム勤務の夫Aさんとでは、育児のスキルに差が出てしまうのは避けられませんでした。

 

「だから、うまくできていないときに責めるのは絶対やめようと思いました」

 

たしかに、ほめずに責めるだけ、というのはフェアではないですよね。

 

「着替えさせた服の前後が逆だった時なんかは、もう!仕事ふやして!と一瞬は思うのですが(笑)。いったん切り替えて、あ、逆だよ~直しとくね!ときげんよく伝えるようにしています」

 

Yさんの明るい話し方が効を奏しているのか、夫のAさんも快く指摘を受け入れてくれるといいます。

おわりに

最初は形だけでも「ありがとう」を伝えるうち本当に動いてくれて今では本当に感謝しているKさん、夫を尊重するからこそほめるのではなく対等に接しているYさん。

 

どちらの理由も、じっくり聞いてみればうなずけるのではないでしょうか。

 

性格や価値観はカップルごとにいろいろ。

 

自分とパートナーにはどんな形が合っているのか、どんな接し方が好きなのか、今回の記事も参考にいちど考えてみるのもいいかもしれませんね。

文/高谷みえこ
参照/神奈川大学「子どもを「ほめること」を考える-学習動機づけや自律性を高めるために-」