2021年4月、TVの特集で「これまでにコロナ禍で自主休校した児童生徒は7000人以上」というニュースが流れました。

 

おもに本人や家族に疾患があり、重症化リスクのあるお子さんだということですが、休校中は登校するのと同等の学習ができずにいるケースも少なくないそうです。

 

そこで、現在小学生のお子さんがいるママ・パパを対象にアンケートを行い、自主休校の有無やお子さんのようす、学校の対応などを聞かせてもらいました。

 

その一部を紹介します。

自主休校した?しなかった?結果は…

今回、全国の小学校1年生から6年生のお子さんがいるママ・パパ50人に、「2020年3月から2021年4月現在までに、1日でも自主休校しましたか」と聞いたところ、自主休校したお子さんは1人という結果になりました。

 

TV番組の調査では、1日でも自主休校した児童生徒は約7300人と推測されるということで、全国の小・中・高校生の人数を約1200万人として考えると、およそ1600人に1人の割合となります。

 

しかし、実際の数字を把握していない自治体も多いとのことで、今回わずか50人のアンケートで1人休校していたとすると、実際はもっと休んでいる子がいるのではないか…とも思えてきます。

 

お子さんを自主休校させたというTさんに、経緯を聞かせてもらいました。

 

「感染が広がりだした当初、学校から、基礎疾患などで不安がある場合は家庭の判断で休校も可とします、というおたよりが配られたんです」

 

Tさんのお子さんは当時3年生で、基礎疾患はなかったものの、近所のドラッグストアからトイレットペーパーが消えるなどただならぬ状況を見て休校を決めたそうです。

 

「私が時間の融通の利く仕事だったこともあり、自主休校に踏み切った2日後、全国一斉休校になりました」

 

ただ現在は感染対策も整ってきたため、お子さんは登校を再開しているそうです。Tさんは

 

「この状況なら現在は休校の必要性は感じていませんが、疾患があるお子さんならまだまだ不安だろうと思います」

 

と話します。

休校しなかった理由…こんなことが不安

いっぽう、今回のアンケートでは大半の人が「自主休校はしなかった」と回答。

 

理由として、

 

  • 学校が休校した子に学習や心のケアなど配慮してくれると思えなかったから
  • 感染対策をしっかりしてくれていたから
  • ずっと家にいると子どもがコミュニケーション不足になると思ったから
  • 県内に感染者が少なかったから
  • 子供が学校に行きたがっていたから

 

などが挙げられました。

 

ただ、上記はいずれも

 

「学校の感染対策がしっかり取られていること」「本人や家族に基礎疾患がないこと」

 

を前提としており、もし疾患などがあればやはり休校を選んでいただろうと多くの人が感じていました。

子どもたちは不安を感じていた?

「お子さんは登校することに不安や恐怖を感じていましたか?」という質問に対しては、「はい」と答えた人が2人。

 

「近所の会社でクラスターが発生して、自分にもうつるのではないかと怯えていました。今はそこまでではありませんが、その頃はテレビなどで怖いイメージがとても強かったこともあると思います」(Yさん・2年生のパパ)

 

「本人が怖いと訴えてきたことはないですが、やはりいつもより元気がないと感じました」(Kさん・5年生のママ)

 

もちろんすっかり様変わりした学校生活にどの子も戸惑っていたと思われますが、「休校したい」と自ら訴えることは少なく、大半の子は友達や先生に会いたい気持ちのほうが強かったようです。

 

「むしろ休校中は友達にも会えず、課題もすぐ終わって退屈そうにしていて、どんどん元気がなくなっていきました。なので、学校が再開しても不安は全くなく喜んでいました」(Sさん・3年生のママ)

 

「地方なのでまだ自分の近くにコロナウイルスが潜んでいるという認識が薄く、コロナにかかるのが怖いとか、学校が不安と口にしたことはありません。もっと行きたいと話しています」(Wさん・1年生のママ)

実際、オンライン授業はどこまで可能なのか

お子さんに疾患があったり、集団生活に感染の不安を感じたりしている場合、休校しても学習に支障はないのでしょうか。

 

以前から国では、全国の小中学校で1人1台コンピュータの端末を使えるようにする「GIGAスクール構想」を進めており、2020年度は予定より早くそれが実現したとしています。

 

ただ、これはあくまで予算ベースの話。

 

実際にそれをセットアップして子どもたちが家に持ち帰り、必要があればいつでも配信でオンライン授業を受けられる…という環境が整っているのはごく一部という状況のようです。

 

特に、ITに詳しいスタッフを独自に配置する余裕のない公立小学校では、私学と比べてICT環境整備が遅れている傾向にあります。

 

今回のアンケートで「自宅側にオンライン授業を受ける環境がありますか」という質問には、「リモートワークと重なるのでできれば避けたいですが…」などとしながらも、50人すべてが「自宅には環境が整っている」と答えました。

 

いっぽうで、「学校側はオンライン授業が可能ですか」という質問には、

 

  • 可能…5人
  • 可能ではない…30人
  • わからない…15人

 

と、家庭と比べて環境整備が大幅に進んでいないことがわかりました。

 

具体的な状況としては、

 

「2020年の一斉休校のときには、学校に確認したら、機器がないからオンライン授業はできないと言われました」

 

「オンライン授業するためのITの基礎的な知識が学校側で不足していると思われます。たぶんいまだに回線も引かれていません」

 

などの声が。

 

もちろん、どの学校も、国の方針に従い準備を進めているのは間違いないでしょう。

 

「また休校になった時に備えて、先日クラスごとにズームが繋がるかどうかのテストがありました」

 

などの声もありますが、

 

「ひとり一台のタブレットが配布されてはいますが、ドリル学習など宿題でしか使っておらず、いざ休校となったときにオンライン授業に対応できるかはわかりません」

 

と、感染予防のためにただでさえ時間と労力が割かれているなか、IT化を進める余力がない現場の苦境が浮き彫りになっています。

おわりに

今回アンケートに回答してくれた50人の中には、たまたま、お子さん本人や家族に重症化リスクの高い人はいませんでした。

 

そのため、感染対策をしっかりした上で、学校で友達に会ったり行事や自然体験などかけがえのない体験をさせたりしたい、子供もそれを望んでいる…という人が大半でした。

 

しかし、疾患のためになんとしてでも感染を避けなければいけない状況の子供たちが、オンライン授業も受けられず取り残される現状もまた存在しています。

 

また、コロナ以前から、やむを得ない事情でどうしても学校に行けない子たちもいます。

 

さまざまな状況の子供たちに格差が生じることなく、学びを継続できるにはどうすればいいか、この機会にしっかり考えたいですね。

文/高谷みえこ
参照/学びを“奪われた”1年 「自主休校」の子どもたち - NHK クローズアップ現代+ https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4531/index.html?1617599466=