仕事が定時で終わらない人に欠けている視点 のイメージカット

チームで仕事をしていると自分のペースで仕事ができず、予定が立てられなくて困ったという経験はありませんか? また、自分の仕事は終わっているのに、他のメンバーが起こしたトラブルを一緒に解決しなくてはならず、いつまでも次の作業に取り掛かれずに予定がすべて後倒しになってしまった…ということもよくあること。今回はチームでの仕事に関するこのような〝モヤっと〟をすっきりさせるため、株式会社ワークシフト研究所・小早川優子さんに話を伺いました。

チームで仕事をするときは必ず具体的な担当決めを

小早川さん:

ひとつの仕事を3人などで分担しておこなうことはよくあると思いますが、打ち合わせの時にありがちなのが「3人で何をするのか?」まで話し合い、そこで終わってしまうケースです。同じオフィスで仕事をしているのであれば、お互い声をかけながら進めることができますが、リモートワークであればそうはいきませんよね? 必ず最初の打ち合わせの段階で、「誰が何を担当するのか?」という部分まで話し合うようにしましょう。

 

さらに誰がどの範囲まで担当するのか細かく決めることも大事です。まずは仕事内容を細かく分解し、例えば「作業した内容をチェックする」という小さな仕事に関しても、誰が担当するか、というところまで話し合う事ができるとよいでしょう。

 

この責任範囲があやふやなままですと、「この作業は誰かがやってくれると思いそのままにしていた…」なんてことにもなりかねず、それが後から大問題に発展する場合もあるかもしれません。そうなればチームの空気も悪くなり、作業効率も下がります。初期の段階でどこまでが自分の責任範囲なのか明確化することは大切なことなのです。

 

また、責任範囲を区切り、明確化することで、自分の担当する仕事が終われば快く次の仕事に移ることができるメリットもあります。リモートワークが普及した今、チームでの仕事がうまくいっていないと感じる方は一度やり方を見直してみてください。

 

── 女性で管理職をしながら家事育児をこなすというのは中々大変かと思いますが、小川さんを初め、女性リーダーとして活躍されている方々はどのように仕事と家庭を両立されているのでしょうか?

 

小早川さん:

まず仕事・育児を両立することははっきり言って、できません! 周りを見渡すと、育児のすべてを自分の仕事だと思っている女性はリーダーになっても同じように仕事をひとりで抱え込む傾向があるように思います。ですが、無理をしてまで頑張ると返って悪影響が出ます。

 

例えば、小学校からの連絡帳に「明日ペットボトルを持ってきてください」、「乾いた牛乳パックを持って来てください」という通知がきたとします。でもそのとき、家にペットボトルや紙パックがなかったら…。なんとか明日までに間に合わせようと慌てて買いに走るママがいらっしゃいますが、そのためにイライラしたり、子供との時間を犠牲にしては本末転倒だと思います。なければ仲の良いママ友やご近所さんに聞いてみる、または時には「ごめんなさい、間に合いませんでした」と諦めるという選択肢もありだと思っています。

 

全部完璧にこなそうとする心がけは良いことですが、その結果、絶対にしなければならないことが疎かになるのは避けたいですよね。例えば、お子さんが学校で嫌な目に遭って家でちょっと荒れたら、まず子供の様子の変化に気づく、そしてじっくり子どもの話を聞いてあげる、慰めてあげる、という行動は親にとって「絶対にしなければならないこと」のひとつですが、お子さんの話をじっくり聞いてあげるには、気持ちに余裕がなければできません。いつもすべて一人で完璧にこなそうとしていると人は大事なときに力を発揮することができなくなるのです。時には人に頼ったりしながら、キャパシティはフルの状態にしておくよりも、いつも少し余裕を持たせておくことがベストです。

「自分がした方がいいこと」は思い切って部下に託す

小早川さん:

仕事も同じように考えてみてください。まずは「自分がした方がいいこと」「自分にしかできないこと」を振り分け、「自分がした方がいいこと」については潔く諦めましょう。リーダーにとって「自分にしかできないこと」というのは、部下たちをどう動かすか、どう育成するか、全体をどうまとめるか戦略を考えることです。それ以外の手足を動かす部分は部下にお任せしましょう。「自分でやった方が早いから…」といってリーダー自身が動いてしまうと、リーダーにしかできないことが疎かになってしまいます。そこは思い切って部下に託しましょう!

 

── 小早川さんは小学生になるお子さんが3人いらっしゃるということですが、どのように仕事と育児をされているのでしょうか?

 

小早川さん:

第一子、第二子と、ずっとワンオペ育児をしながら仕事をする日々が続きましたが、ある日、「もう耐えきれない!」と突然主人に対して怒りが爆発してしまいまして(笑)。その日を境に主人にも少しずつ家事・育児に参加してもらうようになり、はじめはクーラーもつけたらつけっぱなしでそのまま就寝してしまうような人でしたが、今では心強いパートナーに。やはり共働きの家庭であれば、お互いひとりでも家事・育児がこなせることは大切です。また、頼れるようであれば両親にもサポートしてもらってください。あるいは、家事代行サービスやシッターサービスを利用してみることもおすすめ。私は今でも週一回はお掃除の家事代行サービスを利用しています。

 

── 最後に小早川さんの仕事のモチベーションの保ち方について教えてください。

 

小早川さん:

そうですね。仕事のモチベーションの保ち方は母親業と一緒だと思っています。いくら凹むような出来事があったとしても育児をお休みすることはできないですよね? 子どもたちにご飯をあげなければいけないですし、お風呂も入れてあげないと! 親には落ち込んでいる暇なんてありません。それは仕事も同等だと私は捉えていて、たとえ落ち込むような出来事があったとしても仕事の手を休めることなく進み続けなくてはなりませんので、モチベーションを保つ、というよりは、何があってもやらなければならないことと考えています。

 

PROFILE 小早川優子

株式会社ワークライフシフト研究所の小早川優子さん

株式会社ワークシフト研究所 CEO 代表取締役社長。慶應義塾大学大学院経営管理研究科経営学修士/米国コロンビアビジネススクール留学(MBA)。慶應義塾大学ビジネス スクールケースメソッド教授法研究普及室認定ケースメソッド・インストラクター。ダイバーシティ・マネジメントやリーダーシップ開発、交渉術のコンサルタント、セミナー講師として一部上場企業からベンチャー企業、官公庁、地方自治体まで年間100回以上登壇し、5年連続満足度99%のビジネスプログラムを提供。名古屋商科大学大学院女性リーダープログラム評価委員。人事向け、女性向けメディアでの記事連載、書籍監修なども行う。3児の母。


取材・文/望月琴海