働く女性のキャパシティの増やし方

2020年4月から時間外労働の上限規定が定められましたが、それでもなお「周りの人と仕事量は変わらないはずなのに、なぜか自分だけ残業をしている」「就業時間内に仕事が終わらず週末も仕事をしている」という人も少なくないのではないでしょうか。就業時間内に仕事が終わる人・仕事が終わらない人の差はどこにあるのか、今回は株式会社ワークシフト研究所・小早川優子さんに伺いました。

上司への配慮のしすぎで肝心なところを見落としていないか?

── 「仕事が終わらない」という原因はどこにあるのでしょうか?

 

小早川さん:

「残業をしないと仕事が終わらない」「週末も仕事をしないと間に合わない」など、なぜか仕事が終わらず他の人よりも時間がかかってしまうのは、上司の視点や企業の方向性がわかっていないことが原因に挙げられます。多くの上司は部下に睡眠時間を削ってまで仕事をして欲しいとは思っていません。

 

上司の優先順位を理解していないと、限られた時間内で評価されるような仕事をすることは難しくなります。現在、あなたは上司がやって欲しいことを考え、行動できているでしょうか? 自分は精いっぱい上司に配慮しているつもりなのになぜかいつも空回り…という経験をしていませんか?

 

それが実はNG行動なのです! いつも配慮しすぎてしまう人は気持ちに余裕がなくなり、つい冷静に優先順位を考えられなくなってしまうので、必要のない丁寧な仕事までしてしまう、もしくは必要あるときに肝心なことを見落としてしまいがちです。

 

── では、上司の視点を理解するにはどのようにすればよいのでしょうか?

 

小早川さん:

上司の視点を理解するには「ビジネス知識」、「リーダー経験」が必要です。例えリーダー経験がなかったとしても「もし自分がリーダーだったらどのように考えるか」「組織にとって何が大切なのか」を考えてみましょう。企業の方向性や戦略は自社のHPを見ればわかります。経営理念がわかれば自分が進むべき方向性も見えてくるでしょう。また、そばにいる人で仕事ができる人の行動を真似てみるのもヒントになります。思い切って、「どうしてあなたはそのように行動できているの?」と、できる人の考え方を直接聞いてみるというのもありです。そのほか、一番早いのはビジネススクールなど『経営学』を学ぶことだと思います。

「仕事が終わらない」は上司との不毛なやり取りの積み重ねが大要因!

── ビジネススクールというと、キャリア志向の強い人がスキルアップのために入学するというイメージがあります。仕事を早くする技術を身につけられるものなのでしょうか?

 

小早川さん:

例えば、弊社のビジネスプログラムを卒業した生徒は、上司の意図が理解できるようになったことで、上司への「提案方法も以前と変わった!」といいます。これまで色々な形で提案書を提出してもバッサリ却下されることも多かったようですが、受講後は、するっと一回で通るようになったそうです。

 

自分なりに一番いい提案をしたつもりでも、上司から「こうじゃないんだよね…」と言われ、2回も3回も修正しては提出し…を繰り返していると時間が勿体ないですよね。その何往復ものやりとりが一回で済めば、限られた時間内に上司から評価される仕事もできるようになります。

 

── 上司の意図をつかまないまま、いきなり作業をはじめてしまわず、まずはどうしてこの仕事を頼んだのか、ということから考えるべきですね。

 

小早川さん:

はい。上司の意図を正しく理解することが第一。続けて、その提出物がどれくらいの状態で欲しいのか、ということも確認しておくべき重要なポイントです。例えば9割9分の完成品が欲しいのか、それとも7割できていればよいのか。あるいは大枠さえしっかりしていれば良いから早めに欲しいのか。上司が求めるものはその時によって異なるはずです。

 

その資料はいつ、どこで、誰に見せるものなのか、まず作業する前に上司の立場に立って考えてみましょう。「この会議で使うなら上司はこれを見せたいだろう」「この会議であれば、本来ならこれを見せたいところだけれど、これを出すと上司の立場が悪くなりそうだから、今回はこっちにしよう」など、上司の視点で考えると仕事のやり方が見えてきます。

 

PROFILE 小早川優子

株式会社ワークシフト研究所 CEO 代表取締役社長小早川優子さん

株式会社ワークシフト研究所 CEO 代表取締役社長。慶應義塾大学大学院経営管理研究科経営学修士/米国コロンビアビジネススクール留学(MBA)。慶應義塾大学ビジネス スクールケースメソッド教授法研究普及室認定ケースメソッド・インストラクター。ダイバーシティ・マネジメントやリーダーシップ開発、交渉術のコンサルタント、セミナー講師として一部上場企業からベンチャー企業、官公庁、地方自治体まで年間100回以上登壇し、5年連続満足度99%のビジネスプログラムを提供。名古屋商科大学大学院女性リーダープログラム評価委員。人事向け、女性向けメディアでの記事連載、書籍監修なども行う。3児の母。


取材・文/望月琴海