いま、年間1200万トンものプラスチックが海に流出し、生物や環境に深刻な影響を及ぼしています。しかも日本は、1人当たりの排出量において世界ワースト2位。その状況を少しずつ改善するために、ぜひ取り入れていきたいのが「プラスチックをなるべく減らす生活」です。

 

ちょっと難しそうなイメージもありますが、気負わずに続けている人もいます。その一人が、シンプルライフ研究家として活躍するマキさん。2013年に始めた節約がきっかけで、気付いたらプラスチックレスな暮らしになっていたそう。

 

どうしたら初心者でも無理せず続けることができるのでしょうか。その5つのコツを教えていただきました。 

コツ1:まずはキッチンで使っている消耗品の種類を絞る

── いざプラスチックを減らそうと思っても、何から始めていいのかわからないという人も多そうです。

 

マキさん:

プラスチックレスの効果を実感しやすいのは、使い捨てのプラスチック製品が多いキッチンを見直すことです。保存袋や排水口ネット、メラミンスポンジなどの消耗品から検討してみましょう。そもそも必要なのかどうか考え、不要であれば使わない、買わないと決める。これを繰り返していけば、みるみるプラスチックは減っていきます。とは言っても、今まで使っていたものを急になくすのはハードルが高い、勇気が出せない方もいるかもしれませんね。そんな方は、種類を減らしてみるのがいいと思います。

 

── 種類を減らすというのは、どういうことでしょう? 

 

マキさん:

たとえば保存袋なら、大中小とサイズ別に持っている方が多いのではないでしょうか。セットで安く売っているので、何も考えずに買ってしまいがちですよね。でも、よくよく自分の行動を観察してみてください。いつも使うサイズは決まっていると思うんです。中サイズからなくなり、余った大サイズや小サイズは仕方なく使っている、みたいな。それに気づいたら、同じくらいのサイズで単品で売っているものに切り替えればいい。

マキさん愛用の保存袋

サイズを絞ることでプラスチック製品の量を減らすことができます。今まで当たり前だと思っていることを疑って、自分に本当に必要なものを探っていけば、無理なくプラスチックレスな暮らしが続けられると思います。

コツ2:一気に変えず、1つ定着してから次へ

── 確かに、セット売りされている保存袋ってお得な気がして買ってしまうけど、結局使わなかったりしますね。とはいえ、習慣を変えるのはなかなか難しいものです。

 

マキさん:

自分の経験からも、何かを変えて習慣化されるまでにはけっこう時間がかかるものだと感じています。かかる時間はそれぞれ違いますが、だいたい2週間から1か月くらい。ですから、一気に複数変えると、「あれもこれもやらなきゃ」とストレスになるし、リバウンドもしやすいと思います。

 

私の場合、1つ試してみて心地よかったら継続し、定着したら次のことをスタートするようにしています。プラスチックレスの取り組みも同じ。一気にいくつも取り入れるのではなく、まずは1つ、一番気になることから試してみるのがいいと思います。

コツ3:心地いいかどうかをじっくり観察する

── 1つのことを試し始めたとして、長続きするかどうか…ちょっと心配です。

 

マキさん:

プラスチックレスな取り組みを始めてしばらくは、自分に合っているかどうか観察することも大事だと思います。少しずつ試してみて、譲れるところ、譲れないところを探っていく感じです。意識を向けなくても自然とできていて違和感を感じない状態であれば、心地いい状態。自分に合っている証だと思います。

 

そう感じない場合は、残念ながら合っていなかったということだと思います。私も過去に人に勧められて試したけれど、合わなくてやめたものもあります。自分に合わなければやめて、他のものを探す、くらいの気軽な気持ちでいいと思いますよ。

コツ4:便利なプラスチック製品ははありがたく使う

── 合わないと感じて、途中でやめた経験もあるんですね。それを聞いてホッとしました。

 

マキさん:

心地よさを感じなければ無理して続ける必要はないですよ。とても便利でほかに代替できるものがないなら、プラスチック製品に頼ってもいいと思います。私の場合は、ラップがそうでした。一時期、ラップの代わりに繰り返し使えるシリコンラップやみつろうラップを使ってみたのですが、どうしても定着しなくて。自分や家族には合わないのだから仕方ないと、ありがたくラップの恩恵を受けることにしたんです。

マキさん愛用のラップ

この、意識的にプラスチックを使うこと。これが大事なのかなと思います。実はそれまで、ラップは買い物のついでに適当に選んでいたんです。安いし、これでいいか!って。でも、ラップの大事さに気づいてからは、どのメーカー、どのサイズが自分にとって心地いいのかを比較して買うようになりました。ちなみに愛用しているのは「クレラップ」の幅22cmタイプ。自分が納得して買ったものであれば、プラスチック製でも大事に使うし、使っていることに対して変な罪悪感を抱くこともないんじゃないかな。

 

コツ5:家族で共有するものは、みんなにとっての心地よさを優先

── プラスチックを使うことに必要以上に罪悪感を持たないことも大事かもしれませんね。家族と意見が合わないときにも柔軟に対応できそうです。

 

マキさん:

そうですね。でも家族の理解と協力を得たうえでトライしたほうが断然ストレスは少ないので、独りよがりにならないことも大事だと思います。ですから、ファーストステップとしては、自分が主体的に選べる、自分しか使わないものから見直すことをおすすめします。

 

次のステップとして、家族が共有して使うものを見直すときは、みんなの意見をよく聞いて、寄り添うことを大切にしましょう。プラスチック製品がいいのか、天然素材のもので代用できるのか。使い心地や衛生面に対する価値観は、家族の中でも異なるものです。何でもかんでも自分が正しいと思ったことを通すのではなく、相手の意見に耳を傾け、ときには自分が引く。そうやって家族みんなにとってちょうどいい場所を探すことも、心地よく続けられるポイントだと思います。

 

Profile マキさん 

シンプルライフ研究家・マキさん
長女(13 歳)と次女(8歳)、夫の4人家族。広告代理店に勤務するかたわら、ブログ「エコナセイカツ」を主宰。著書に『なくす家事』(KADOKAWA)など。全国での講演活動やオンラインセミナー、アパレルブランドの商品コラボなどで幅広く活躍中。インスタグラムは@econaseikatsu.maki

取材・文/小松﨑裕夏
参考/環境省「プラスチックを取り巻く国内外の状況」(2019年2月)http://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-05/s1.pdf

日本自然保護協会「レジ袋有料化でも海洋プラスチックの問題は解決されない理由」https://www.nacsj.or.jp/2020/09/21731/