今年も入園入学の季節が近づき、4月からお子さんが保育園で初めての集団生活を迎えるご家庭も多いことと思います。

 

地域によってはまだまだ待機児童問題が解消されない中で、もっとも保育園に入りやすいと言われる「0歳児クラスの4月入園」ですが、2021年の4月は今までになく倍率が低くなった自治体が見られるようです。

 

今回は、ここ数年の保育園入所に関わる数字の変化をチェック。実際に去年から今年にかけて「保活」を経験したママたちにも実感を聞かせてもらいました。

首都圏では1.0倍を下回る市区町村も

日本経済新聞が東京23区と首都圏の政令指定都市を対象に行った調査によると、2021年の4月に保育園への入所を申し込んだ人の倍率は平均1.00倍で、2020年の1.11倍よりも減っていたことが分かりました。

 

これにはいくつかの要因が考えられます。

受け皿が整ってきた

2020年(令和2年)は、国が、待機児童解消と女性の就業率8割の達成に向けて進めてきた「子育て安心プラン」の最終年度でした。

 

各自治体に向け、保育園を新設・増設するための予算や保育士さんの待遇改善で人手を確保するための施策を3年連続で行ってきた結果、徐々に受け皿が整ってきた自治体が増えています。

 

今後は「新子育て安心プラン」に引き継がれ、ベビーシッター利用費の助成額が非課税になるなど、さらに広い範囲がカバーされる予定です。

少子化の影響

ここ数年も日本の少子化は相変わらず続いており、令和元年に生まれた赤ちゃんの人数は約86万4千人と予想より2年早く90万人を下回りました。

 

令和2年も、この記事を書いている時点(2021年3月)では「確定値(=実際の人数)」は出ていませんが「速報値(=妊娠届などから予想した人数)」では過去最少の87万2683人(対前年比2万5917人減)となっています。

 

通常、確定値は速報値よりも少なくなるため、令和2年に生まれた赤ちゃんも引き続き最少になるのではないかと予想されています。

 

少子化を単純に喜んでいいのかどうかは別として、枠に対して子どもの数が少なければその分入りやすくなるということですね。

新型コロナウイルスの影響

一般的な保育園では、下からの持ち上がりのない0歳児クラスに4月入園…というのが最も入りやすいとされます。

 

秋以降に生まれた赤ちゃんは4月時点での月齢が低いため、育休が長く取れる人は成長を待って申し込みしても良いのですが、1歳児以上のクラスは空きがほとんどないこともあり、これまでは入園を確保するため0歳児での入園を選択する人が多数派でした。

 

しかし、2020年の新型コロナウイルス流行により「集団生活での感染が心配」「リモートワークが選べるようになった」などの理由で4月入園を控える人も増えたと考えられています。

いぜん激戦のエリアも

受け皿が増え、希望者がやや減ったとはいえ、都市部を中心にいぜんとして待機児童が多いエリアもあります。

 

2021年4月の1次申込倍率は、首都圏では世田谷区1.55倍、品川区1.32倍、川崎市1.10倍など、簡単に第一希望の園に入れる状況ではありませんでした。

 

関西でも、兵庫県尼崎市や西宮市では一次選考の落選率がそれぞれ40%・35%と激戦区になっています。

「予定通り」「見送った」…保活経験者ママたちの声

2021年の4月入所を検討していたママたちに話を聞いてみたところ、次のようないきさつを話してくれました。

 

「もともと希望すれば3年まで育休が取れる職場ですが、1歳台での復帰を目指していたので、4月入所で希望を出すつもりでした。でも、コロナ禍で予定していた園の見学も満足にできず、状況が不透明ななかで無理に預けて復帰するべきなのか…と悩んでしまい。夫に相談して、少し家計が苦しくなるかもしれませんが、育休を延長して2歳での入園を目指すことにしました。ただ、そこでどこにも入れなかったら、今度は仕事の方がかなり心配なのですが…」(Jさん・32歳・1歳児のママ)

 

「生後7ヶ月時点で4月入園、職場復帰の予定だったのですが、毎日この子を育てているうちに、まだ離れたくないという気持ちがどんどん強くなり…。コロナがなければそれでも復帰していたと思うのですが、園側もできるだけ預かる人数を減らして感染を防ぎたいという話をニュースで見たりして、どうしても預けなければならない人に譲ろうと思いました」(Hさん・30歳・0歳児のママ)

 

「なんとか第一希望の園に4月入園で入れることになりました。中途入園はほとんど期待できないエリアだし、2人目も考えているので、上の子の育休が延びて休みっぱなしになるのも避けたかったんです。でも、1歳にもならない子が感染対策なんて自分でできるわけもなく、もし何かあったら…と不安や申し訳なさもすごくあります」(Uさん・29歳・0歳児のママ)

 

「復帰後はフルタイム出勤の予定で、かなり大変になることは覚悟していたのですが、私の会社はコロナで週2回のリモートワークと時差出勤に。おかげで、むしろ夫と園の送迎や家事の分担がしやすくなりました。予定通り、4月から預けて復帰します」(Sさん・35歳・0歳児のママ)

おわりに

希望する保育園にスムーズに入れることは、親の職場復帰・子どもの集団生活スタートの両方にとって大きなメリット。

 

いっぽうで、コロナ禍で働き方そのものも変化しつつあります。

 

勤務時間が柔軟になれば、預かり保育つきの幼稚園など選択肢も増えるかもしれません。

 

ママ・パパの働き方をよく検討し、それぞれの家庭にとってベストな入園先や時期を選んで下さいね。

文/高谷みえこ
参照/日本経済新聞|東京23区、保育所入りやすく 21年春の倍率1.00倍に https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFB03B7I0T00C21A3000000/?unlock=1

厚生労働省|保育所等関連状況取りまとめ(平成31年4月1日)及び「子育て安心プラン」集計結果を公表 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000176137_00009.html
厚生労働省|人口動態調査 結果の概要 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html