シンプルライフ研究家・「エコナセイカツ」マキさん

最近よく耳にする「SDGs」。自分も環境のために何かしなくちゃと思いつつ、具体的に何をしたらいいのかわからない…という方も多いかもしれません。

 

でも「SDGs」が環境汚染の改善はもちろん、節約につながったり、暮らしがラクになるなら、ぜひやってみたいと思いませんか?

 

シンプルライフ研究家のマキさんは、そんなエコライフを提唱しているひとり。海洋汚染の問題からその必要性が叫ばれる「プラスチックレス」をいち早く心がけ始めたきっかけや、いま実際にやっていることをお聞きしました。

節約のため買うものを減らしたら勝手に“プラスチックレス”に

── 年間1200万トンものプラスチックが海に流出し、環境汚染に深刻な影響を及ぼしていることが近年問題になっています。その状況を変えるために、レジ袋有料化など「プラスチックレス」を目指す様々な取り組みが始まっていますよね。マキさんがプラスチックレスの取り組みを始めたきっかけは何だったのですか?

 

マキさん:2013年に次女が産まれたのがきっかけです。でも実は、プラスチックを減らそうと思ったわけでも、環境にいいからと始めたわけでもないんです。子どもが一人増え、今後支出が増えるのはわかっていたので、節約をしたいなと思って。

 

お金をムダなものに使うのではなく、将来の子どものために使いたい、という思いから、必要なものだけを厳選して買うシンプルライフに徐々にシフトしていきました。そうしたら、言ってみれば“勝手に”プラスチックレスな生活になっていたんです。全体的に消費を抑えることで、プラスチック製の消耗品や容器包装までも減らせたという感じですね。

 

── 節約のために始めたことが、自然とプラスチックレスに繋がっていったとは。けっこう意外です。

 

マキさん:同じ時期に、家にある不要なものを捨てていったことも大きかったなと思います。捨てずに残ったものを改めて見て、私が大事にしたいものはプラスチックの製品ではなく、天然素材や繰り返し長く使えるもの、ということに気がついたんです。自分の好きなものが見つかったので、その後、何かを新調するときはプラスチック製を選ばないようになりました。もちろんラップなど、便利なので使っているものもありますが、多くはないと思います。

 

── 自分はプラスチック製品が好きでないと気づいてから、ほかにも変化はありましたか?

 

マキさん:世の中、プラスチック製品だらけなんだ…! ということに気づかされましたね。それまでは、自分が選んでいるものがプラスチック製品だということさえわかっていなくて。便利で安いからと、深く考えずに買っていたんです。 

ゴミが多く出るキッチンまわりの見直しからスタート

── これから身のまわりのプラスチックを少しずつ減らしていこうと考えている方もいると思います。まず何から手をつけたらいいでしょう?

 

マキさん:おすすめはキッチンです。キッチンで使うものには使い捨てのプラスチック製アイテムが多いので、見直したら効果が出やすいと思います。私の場合、モノを買わず、手持ちのものを処分しているうちに、自然と家庭から出るゴミを減らしたくなって。そこで、ゴミがいちばん多く出るキッチンから見直したら、プラスチック製品がどんどん減っていきました。

 

例えば、食品を買うときは、なるべく過剰包装されていないものを選ぶようにする。お肉はスーパーだけでなく、お肉屋さんでも買うようにしました。スーパーで買うと発泡スチロール製のトレイに入っていますよね。あのトレイを洗って乾かしてリサイクルに出すのはすごく手間がかかるし、めんどうくさくて。お肉屋さんなら竹皮や経木(木を紙のように薄くしたもの)で包んでくれます。燃えるゴミだからサッと捨てられ、時短にも繋がりました。

 

排水口ネットやメラミンスポンジなど、頻繁に使い捨てにする消耗品については、そもそも必要なのかどうかを確認し、なくても問題ないと判断したものは買わなくなりましたね。保存容器は、プラスチック製だと12年で劣化して買い替えが必要なので、長く使えるガラス製、ホウロウ製に変えました。 

 

── マキさんの「プラスチックレス」の取り組みに対して、ご家族、特にパートナーの反応はいかがでしたか? 

 

マキさん:反応というほどのものはなかったですね。…と言うか、夫は多分、私が何をしているか気づいていないと思います(笑)。夫は仕事が忙しいこともあり、料理や買い出しをあまりしないため、選ぶのも買うのも私が担当しているので。

 

今思うと、自分が主体的に選べることから見直したのがよかったのかなと思います。家族で検討することであれば、それぞれのプラスチックに対する価値観が必ずしも同じとは限らないので、調整が難しい場合があると思うんです。でも、自主的に選べることであれば、自由に選択できます。すごく小さな選択かもしれないけれど、思い通り選べるので私はとても満足できました。 

環境への配慮よりも、自分にとっての心地よさを優先していい

── 政府や企業が積極的に取り組み始めたこともあり、このところSDGsやサスティナブルな暮らしに注目が集まっていますよね。プラスチックレスな生活について改めて意識したことはありますか?

 

マキさん:最近の世間の動きによって行動を変えたり、新たに意識したことは特にないですね。私の中では環境問題も大事ですが、やっぱり節約や家庭から出るゴミを減らすことがメインなんです。無理せず自分が心地いい暮らしを選択していったら、結果的にプラスチックレスの生活だった。それくらいのスタンスの方が性に合っている気がします。

 

── 環境にいいからという理由ではなく、自分にとっての心地よさを優先してもいいということでしょうか?

 

マキさん:そうです。環境にいいからとプラスチックレスな生活をしている方は、本当に素晴らしいと思います。でも正直に言うと、私には真似できないな…と。実は以前、環境に配慮しているとうたっている洗濯洗剤Aを使ったことがあるのですが、それほどよさを感じることができませんでした。割高ということもあり、今は生活クラブのものを愛用しています。

 

生活クラブの洗濯用洗剤

もともと、この洗濯石けんを使い始めた理由だって、コスパがいいからなんです。でも、使っているうちに服を着たときの肌のかさつきが少なくなってきたとか、いいところを感じるようになって、結局わが家の定番になりました。

 

ちなみに後日調べてみたところ、洗濯洗剤Aと成分がかなり類似していたんです。環境にいいとうたっているわけではないんですけどね(笑)。アピール下手な商品にも、丁寧に作られたいい商品はあるんだなと実感しました。

 

入り口は「安さ」だったけれど、それが心地よい暮らしに繋がっていて、結果的に環境にも貢献できているのはすごく嬉しいし、ラッキーなこと! それくらい肩ひじ張らないスタンスの方が自分にとっては負担がないし、長続きすると思います。

 

Profile マキさん 

シンプルライフ研究家・マキさん

長女(13 歳)と次女(8歳)、夫の4人家族。広告代理店に勤務するかたわら、ブログ「エコナセイカツ」を主宰。著書に『なくす家事』(KADOKAWA)など。全国での講演活動やオンラインセミナー、アパレルブランドの商品コラボなどで幅広く活躍中。インスタグラムは@econaseikatsu.maki

 

取材・文/小松﨑裕夏
参考/環境省「プラスチックを取り巻く国内外の状況」(2019年2月)http://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-05/s1.pdf
日本自然保護協会「レジ袋有料化でも海洋プラスチックの問題は解決されない理由」https://www.nacsj.or.jp/2020/09/21731/