SNSやフリマアプリなどの普及によって、たくさんのハンドメイド作品を目にする機会が増えました。


在宅時間が長くなってアクセサリーやマスクなどのハンドメイドの趣味にはまり、副業にする人もいますよね。


ハンドメイド作品は、その人ならではのセンスや、人柄が出るような味わいがありますし、ママならではのアイデアを活かした育児グッズなどは、市販のものより使い勝手がよかったりもします。


ただ、そんなふうに一生懸命作った作品とそっくりなものが、他の人のSNSで販売されていたら…?


著作権法違反で訴えることはできるのでしょうか。


女性のための法律書『おとめ六法』著者で弁護士の上谷さくらさんに教えていただきます。

アイデアを参考にすることは違法にならない

前提として、作品のアイデア自体は著作権で保護されません。


つまり他人の作品を参考にして何かを作ること自体は、著作権侵害にならないのです。


音楽を例にすると、一度も音楽を聞いたことがない人が突然すばらしいメロディーを思いつくわけではないですよね。


誰しも、何かを作るには、基礎知識や経験などのベースが必要。無意識のうちに頭に入っていたメロディーがある日突然発現して、「思いついた!」と感じてしまうこともあるかもしれません。


また、同じ時代に生きていれば、こういう作品があればいいな、という発想は似ていたりするものです。


自分がSNSに投稿したオリジナルアクセサリーとそっくりな作品を他の人が販売していたとしても、それが「たまたま」似てしまったということは、可能性としてありえます。

【著作権法】侵害の判断ポイントは3つ

アイデア自体に著作権はありませんが、作品には「著作権」があります。


そもそも著作物とは、作った人が自分の考えや気持ちを自分で工夫して表現したもののこと。この著作物の個性や、作品として表現するまでの努力は守られるべきというものが著作権です。


ハンドメイドの個人販売をする人は、自分の作品を守るためだけではなく、自分が盗用する側になっていないかという点も含め「著作権」について押さえておくと安心です。


Bという作品が、既存のAという作品の著作権を侵害しているかどうか判断するには3つのポイントがあります。

 

1. 著作物性:Aが著作物であり、著作権があるかどうか
2. 依拠性:BがAを参考にして作られたかどうか
3. 類似性:BがAによく似ているかどうか


例えば、ねずみをモチーフにしたキャラクターを作っても、それが著作権のあるねずみキャラクターを参考にしていて、しかも類似していなければ、著作権侵害には当たりません。


ハンドメイドマーケットアプリなどでは、著作権・商標権を有するブランドロゴやキャラクターを使用した作品の販売は禁止というルールがあります。


個人販売であっても、著作権のあるブランドロゴやキャラクターの使用は罰せられる可能性があるので注意が必要です。


もし自分のオリジナルロゴやキャラクターが、無断でそのまま盗用されているのを発見したら、まずは先方に連絡して取り下げてもらうよう依頼するか、自分の作品だとわかるようなクレジットを入れる対応を依頼してみるのもいいでしょう。


それでも対応してもらえなかったり、販売してお金もうけを続ける、ということであれば法的措置を検討してもいいかもしれません。


ハンドメイド作家として活動する人は、お互いに気遣いつつ高めあって、よりすてきな作品を生みだせるといいですね。

<ハンドメイド作品販売のときに覚えておきたい法律>

著作権法第1条【目的】 

この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送および有線放送に関し著作者の権利およびこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。


著作権法第119条【罰則】※意訳

1.著作権、出版権、著作隣接権侵害は、10年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 2.著作者人格権の侵害などは、5年以下の懲役もしくは5百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

PROFILE 上谷さくら(かみたに・さくら)さん

弁護士(第一東京弁護士会所属)。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。元・青山学院大学法科大学院実務家教員。福岡県出身。青山学院大学法学部卒。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。保護司。2020年5月に著書『おとめ六法』(KADOKAWA)を出版。 取材・文/早川奈緒子  イラスト/佐久間薫