ママ友たちとお茶やランチをしていて、おすすめの化粧品の話題で盛り上がること、ありますよね。

 

いつもキレイにしているママ友が使っている化粧品のブランドは気になるし、「ここの化粧品はおすすめだよ」と言われたら、「じゃあ私も使ってみようかな…」という会話はよくあります。

 

 

そんな何気ない会話から「これ使ってみて」と化粧品をプレゼントされたと思っていたのに、あとから「この前の化粧品、1万円だから払ってね」と請求されたら…。

 

 

お金を払ってまで欲しいものではなかったし、断りたいけれど、なんて言えばいいのかわからない。これって支払わなければいけないの?返品すべき?

 

 

女性のための法律書『おとめ六法』著者で弁護士の上谷さくらさんに教えていただきます。

 

【民法555条】売買は双方の合意があって成立する

民法では、売買契約は「売ります」「買います」というお互いの意思が一致した時点で成り立つといわれています。

 

商品を受け取った側に「買った」意思がないなら、売買は成立しません。

 

 

ですから、商品をもらったという認識だったのに、あとからお金を請求された場合は、「これはもらったのだから支払いません」と答えるのが正解です。

 

 

購入した覚えがないのなら、請求書は放置して大丈夫ですし、商品も返品などせず、そのままでかまいません。

 

 

売買契約は双方の意思により成立しますが、万が一トラブルになった際、相手が「売った」と主張するなら、「いつまでに引き渡します」「いつまでに〇〇円払います」という売買の期限や支払約束があることを、請求する方(売り手)が立証する必要があります。

 

 

売買契約がなければ、あとから代金を請求されたとしても支払う義務はないのです。

 

いらないものははっきりと断ることが大事

ママ友同士のお付き合いでは、子どものお下がりや育児グッズを譲ったり、お礼にお菓子やお土産を渡したり、ちょっとした物品のやりとりをする場面も少なくないと思います。

 

ランチやお茶会で「これいいよ!」と商品をすすめられ「へえ、使ってみたいな」と(心にない)あいづちを打ちながら情報交換をする場面もあるかもしれません。

 

 

ただ、このような売買トラブルにならないよう、いらないものはいらない、とはっきり断ることが大事です。

 

 

無理やり買わされたのだとしても、裁判になった場合は「無理やり買わされた」と言えば済むわけではなく、詐欺や強迫等によって買わされたことを立証しなければならず、相当にハードルが高いので、非常に厄介です。

 

 

逆に言えば、こちらが売ったつもりでも、相手に「もらったんだから払わない」と押し切られないよう注意が必要ですね。

 

 

売買契約は口頭でのやりとりでも、当事者同士の意思が合致していれば成立しますが、上記のように、あとからトラブルになった場合に証拠がないと不利になる可能性があります。

 

 

口頭で言いにくい場合はLINEなどでもいいので、ものを渡す前に「1万円なんだけどいいですか」という意思表示はちゃんと残すようにしましょう。

 

<売買契約に関する法律>

民法第555条【売買】

 

売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。 契約は法律行為であるから、総則の意思表示の規定が適用される。 すなわち、効果が発生するには以下の要件を満たす必要がある。

 

 

1.成立要件

 

 

①申込みと承諾

 

 

②売買契約は諾成契約であるので、意思表示の合致のみで成立する。

 

 

③売買契約は不要式契約であるので、書面の作成は必須でない。口頭の合意でも成立する。

 

おかん2_売買

PROFILE 上谷さくら(かみたに・さくら)さん

弁護士(第一東京弁護士会所属)。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。元・青山学院大学法科大学院実務家教員。福岡県出身。青山学院大学法学部卒。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。保護司。2020年5月に著書『おとめ六法』(KADOKAWA)を出版。

取材・文/早川奈緒子  イラスト/佐久間薫