TVや新聞、学校からのお便りなどで「GIGAスクール構想」という言葉を見かけたことはないでしょうか。

 

以前から存在していた計画ですが、2020年の新型コロナウイルス流行による全国一斉休校でいっそう緊急性と重要性が高まり、急ピッチで進められています。

 

教育関係者以外にとっては聞き慣れないかもしれませんが、どれも小学生から高校生までのお子さんみんなに関わる話なので、この機会にざっくりと理解しておきましょう。

「GIGAスクール構想」とは?読み方や意味

「GIGAスクール構想」の「GIGA」は「ギガ」と読み、英語の”Global and Innovation Gateway for All”を略したものです。

 

直訳すると「全ての子どもたちに、国際的・革新的な未来につながる入り口を(用意します)」といった意味。

 

具体的な目標としては、次の3つが柱となります。

 

  1. 児童生徒1人1台ずつパソコンやタブレット端末で学習
  2. 高速・大容量の通信ネットワークの整備
  3. 最適化された学びを全国の学校現場で継続

 

日本の学校ではパソコンをはじめとしたICT(情報通信技術)が活用できていないことが以前から課題となっており、2019年に掲げられたのが「GIGAスクール構想」です。

 

2023(令和5)年度までに、全国すべての小中学校が「1人1台のPC端末」と「校内無線ネットワーク環境」の整備を完了させるよう義務づけられました。

「1人1台」いつから実現?コロナで前倒しも

当初、2023年完了としていた「GIGAスクール構想」ですが、2020年の新型コロナウイルス流行による全国一斉休校で、オンライン授業の必要性が急速に高まりました。

 

その結果、2020(令和2)年度の補正予算で、もともとは小学5・6年生と中学1年生だけの予定だった予算が増額され、前倒しで2020年度中に小1~中3の全学年で、1人1台の端末使用が可能になりました。

 

「え?うちの子の学校、まだ1人1台ノートパソコンやタブレットなんて使ってないけど?」

 

と不思議に思った人もいるかもしれません。

 

実は、予算は行き渡ったものの、実際に端末の選定や購入・セットアップ、そしてそれを授業でどう活用していくか…といった部分で手が回らない学校は全国に点在するといわれています。

 

今回、複数の地域で、小学生・中学生のお子さんがいる人に状況をたずねてみました。

 

「うちの子たちは、2020年の春から休校になった時、比較的早期にタブレットの貸し出しがあり、オンライン授業が受けられました。今は対面授業ですが、授業でも使うし家にも持ち帰れます。万が一壊したりしても、保険がかかっているので安心です」(Yさん・38歳・小学6年生と4年生のママ)

 

「実は、子供に”今ってみんな教室でタブレットとかパソコンで勉強してるの?”とたずねたところ、”タブレットはあるけど、まだ1回も使わないで棚に並んでるよ!”と返ってきたんです。先生、詳しくないから準備が進まないみたいで…」(Oさん・中2のママ)

 

先生も子どもたちも、必要に応じてしっかり使いこなせるようになる時期は、地域や学校によってばらつきがありそうです。

「GIGAスクールサポーター」って誰のこと?

上記のような問題を解決するために配備されるのが「GIGAスクールサポーター」です。

 

学校の先生はITの専門家ではなく、通常の授業や部活動・進路指導などで時間も十分にとれないことがほとんど。

 

GIGAスクールサポーターは、端末やオンライン環境導入にあたり、技術面の支援を行う人や企業団体をいいます。

 

具体的には

 

  • ICT環境整備の設計
  • 工事や機器納品時のサポート
  • 教員および児童生徒向けマニュアル作成

 

などが支援内容です。

 

よく似た役割として、以前から「ICT支援員」も存在していますが、ICT支援員は、

 

  • 機器の管理や障害時の対応
  • 校内での研修や操作支援
  • 授業で使うデジタル教材の作成支援

 

など、日常的なICTの活用を担当し、年間を通じて数校を支援します。

 

対してGIGAスクールサポーターは、導入前後の一時期に集中してさまざまな業務を支援する役目です。

 

GIGAスクール構想で端末(パソコン・タブレット)の補助金があるのは小学校と中学校までですが、GIGAスクールサポーターは高校も対象。学校側に人的な余裕がないためにICT導入が遅れる…といった事態が起こらないことを目指しています。

おわりに

「GIGAスクールなんて言われても、なんだか横文字ばかり並んでて意味が分からない…」

 

と感じていた方は、なんとなくイメージがつかめたでしょうか。

 

すべての学校でタブレットやパソコンを十分活用できるようになれば、

 

  • その子が間違えやすい問題を集めた「自分だけの宿題」が出せる
  • 感染症が増えてきたらすぐにオンライン授業に切り替えて安全に学びを継続できる
  • 先生が手作業で行っていた事務が自動化され、子ども1人1人と向き合う時間が増える

 

…といいことがたくさん。

 

ただし、まだ地域や公立と私立などで人的リソースに差があり、学校によっては十分に機能していないのは課題といえるでしょう。

 

1日も早く、文字どおり全ての子どもたちが平等にICTを活用できるようになってほしいですね。

文/高谷みえこ
参考/文部科学省「GIGAスクール構想について」https://www.mext.go.jp/a_menu/other/index_0001111.htm
文部科学省「GIGAスクールサポーターの活用の一層の促進について」https://www.mext.go.jp/content/20201030-mxt_jogai01-000010768_004.pdf
日本教育情報化振興会「ICT支援員の配置」https://www.japet.or.jp/edu/?action=common_download_main&upload_id=2019