チームで結果を残したいけれどなかなか成果が出ないのは、職場のチーム作りがうまくいっていないのかもしれません。
「でも、そんなこと教わってこなかった…」と頭を抱えたくなりますよね。そこで今回はサイボウズ株式会社・チームワーク総研のなかむらアサミさんにお話を伺いました。
「とりあえず一緒にご飯を食べて絆を深めよう」が、なぜ間違っているのか
── 個人で業績を残してきた人が、部署運営を任されると思うように結果を残せない。私たちの年代はマネージメントの壁に思い悩むことが増えてきます。そもそも「いいチーム」ってどういうものなんですかね?
なかむらさん:
「いいチーム」の定義も色々あると思いますが、「生産性が高いチーム」に関しては、Google社が2012年に共通点を探る調査を行っているんです。
これは「プロジェクト・アリストテレス」と名づけられているんですが、調査の結果、「チームの生産性」を高めるために重要な要素が「心理的安全性」であることを突き止めています。
心理的安全性が高いチームでは、「メンバーひとりひとりが安心して、自分らしくチームで働くことができる」「安心して何でもチーム内で言い合える」という効果が働き、その結果チームの生産性が上がるのです。
── チーム内に自分の存在意義が感じられるほうが、仕事のパフォーマンスが上がるということでしょうか。確かに、チームワークがいい部署は、結果も出しているイメージがあります。
なかむらさん:
そうですね。ここで誤解されがちなのが、良いチームワークを築くために、例えば「今日はみんなで飲みに行こう」と、一致団結している〝風〟の行動をとってしまうことです。
「チームの絆が深い」「メンバーが一致団結している」というのは、あくまでチームワークがよかった結果に過ぎません。
「チームワーク」とは何か、説明できますか?
── たしかに、とりあえず仕事の話は飲んで仲良くなってから…みたいな風潮って確かにありますよね。
なかむらさん:
そもそも「チーム」とは理想(目標)を達成するための集団のことです。似たような意味として「グループ」もありますが、これは単なる集団を指す言葉に過ぎず、チームとグループはその集団に理想があるかないかという点で明確に異なります。
職場は理想(目標)を達成するために集まった集団ですからチームと言えます。その際、設定した理想や目標に向け、役割を分担し、協働することを「チームワーク」と言うのです。
「チームワーク」が格段に伸びる5つのミッション
なかむらさん:
ですから、チームワークを向上したいのでれば、まず、理想や目標の設定をはじめとした5つのミッションが必要になります。これらがうまくいっているチームは生産性も高いことが証明されています。
チームワークを向上させるミッション
1.理想をつくる(目標、ビジョンをつくる)
2.役割分担する(ひとりひとりが役割分担をする)
3.コミュニケーションする
4.情報を共有する
5.モチベーション(やる気)を上げる
例えばわかりやすくサッカー部の場合で考えてみましょう。
まず、「理想をつくる」は、メンバー全員が納得できる目標を設定することです。2019年ラグビーW杯で日本代表はベスト8入りを果たしましたが、これは選手だけでなくコーチ・周りのスタッフを含め、みんなが同じ目標を持っていたからこそ叶った結果です。誰かひとりが「このチームで優勝するぞ」と思っているだけではよい結果には結びつきづらいのです。
目標を設定したら次にメンバー全員の役割を考え、「自分は何をすればいいの?」と迷う人がいないように分担しましょう。これが「役割分担する」にあたります。
「コミュニケーションする」「情報共有する」「モチベーションを上げる」は、「来週の試合の対戦相手をリーダーだけが知っている…」という状況にならないよう、メンバー同士で会話をしながら情報を共有し、目標を達成するまでお互いに気持ちを高め合うことです。
リモートワークではコミュニケーションの量に意識を
── 必要なプロセスが整理されると、できそうな気がしますね。ちなみに昨今はリモートワークへ移行する企業が増えており、チーム作りに関してもこれまでとは違った環境で行う必要があります。その際に、注意すべき点はありますか?
なかむらさん:
リモートワーク中も、いいチームを作るためには1〜5の項目を実行することが大事だという点は変わりありません。ただ、対面でないとメンバーの体調の変化や悩みなどに気付きにくいところがありますよね。声を掛けるタイミングも掴みにくい。そこでおすすめなのがテレビ会議を利用してコミュニケーションの量を落とさない方法です。
サイボウズでは週に一回30分、上司と部下で雑談する時間を設けていることが多いです。雑談する内容は仕事の話や最近気になっていることなど、なんでも構いません。顔を合わせないぶん、細かいコミュニケーションとその量が大切です。
Profile なかむら アサミ
取材・文/望月琴海