2016年からスタートした「小児科かかりつけ医制度」は、国から認定された小児科などの医療機関をわが子の「かかりつけ医」として登録できる制度です。

 

日本医師会は、「かかりつけ医」について

なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師

と定義しています。

 

わが子の体質や日頃の状態を継続的に見てきた医師なら、ちょっとした異変を見逃さず、万が一の時には専門の病院へつないでもらえるため安心ですよね。

 

今回は、まだ始まってから5年程度の制度のため意外と知らない人もいる「小児科かかりつけ医制度」と、かかりつけ医の見つけ方・選び方について紹介します。

「小児科かかりつけ医制度」とは?

「小児科かかりつけ医制度」は、2016年4月からスタートした国の制度です。

 

下記のような基準を満たす医療機関は、厚生労働省から認定を受けて「かかりつけ医」を名乗ることができ、登録している患者の診療すると「小児かかりつけ診療料」を加算できます。

 

  • 小児科専任常勤医がいる
  • 小児科外来診療料の届け出を行っている
  • 以下の要件を3つ以上満たしている
  1. 初期小児救急医療に参加している
  2. 乳幼児健診を実施している
  3. 定期予防接種を実施している
  4. 幼稚園・保育園の嘱託医(園医)である

 

対象となるのは「継続的に受診する6歳未満の乳幼児」で、かかりつけ医は以下のことを行うと定められています。

 

  • 急な病気やケガの際の診療
  • 喘息、アトピー性皮膚炎などの慢性疾患の管理・療養指導を行うこと
  • 発達段階に応じた助言などを行い、健康相談やに応じること
  • 予防接種の接種状況を確認して、接種の時期について説明し、予防接種の有効性・安全性に関する情報提供を行うこと

 

ただ、これらはかかりつけ医登録の有無にかかわらず、基本的にすべての小児科で行っていますよね。

 

実は上記に加えてもう1つ「かかりつけ医」だけの義務があります。

 

それは

 

「保護者からの電話などによる問い合わせには原則常時対応する」

 

というもの。

 

週末や夜などに赤ちゃんや子どもの体調が悪くなった場合、かかりつけ医に電話で問い合わせると、そのまま様子を見るべきか、総合病院の救急外来へ行くべきかなどを答えてもらえるメリットがあります。

 

「原則」ということで、医師が1人だけのクリニックでは対応できない時間帯もありますが、その場合は「#8000」など、電話で相談できる公共サービスを利用することになります。

 

また最近は、電話以外にLINEで相談に答えてくれるクリニックも増えています。

「小児科かかりつけ医制度」のデメリットはある?

「かかりつけ医に登録してしまうと、他のお医者さんで診てもらえないのでは」

 

「診療料が別に必要になるの?」

 

などのデメリットが気になる人もいるかもしれません。

 

しかし「診療料の加算」とは医療機関から国に請求するものなので、患者の負担金額が増えることはありません。

 

また、1人の子供が登録できるのは1ヶ所の医療機関だけですが、「登録したクリニック以外を受診してはいけない」ということではありません。

 

骨折や虫歯など明らかな専門外をのぞき、原則として、最初にかかりつけ医を受診するのが決まりですが、旅先や緊急時などで他の医療機関にかかった場合も、後でかかりつけ医に伝えるだけでOKです。

 

これらのことから、患者側には特にデメリットはないといえるでしょう。

「総合病院がかかりつけ医」はあり?

「うちの子、総合病院でいつも診てもらっているんだけど…」

 

という人もいるかと思います。

 

基本的に、総合病院は緊急性の高い症状や、通常の小児科やクリニックでは対応できないときのための医療機関です。

 

例外として、お子さんに持病などがあり継続して通院している場合や、治療に伴うアレルギー対応などで専門的な設備が必要なときは、総合病院でも日常的な診療を受けられることがあります。

 

また地域によっては、親が連れていける範囲に小児科クリニックがない、総合病院の診療体制に余裕があるなどの理由で受け入れてもらえることも。

 

その場合は総合病院の小児科が実質上の「かかりつけ医」となりますが、最初に紹介した「小児科かかりつけ医制度」には当てはまらないため、休診時間中の電話相談などはできません。

 

いずれにしても、お子さんが小学生になる頃には通院の間隔も空くことが多いため、毎回のように初診料が発生したり、午後(夕方)の診療がなく軽い症状でも授業を休む必要があるなど、しだいに通いにくくなる人がほとんどです。

 

その段階で別の小児科クリニックを探すことを思えば、小さい頃から継続して同じ医師に診てもらった方がメリットが多いかもしれませんね。

子どもの「かかりつけ医」の選び方

通える距離に複数の小児科がある場合、「かかりつけ医」をどういう基準で選べばいいのか迷う人もいるのではないでしょうか。

 

厚生労働省や東京都医師会の考える良い「かかりつけ医」の条件には以下のようなものがあります。

 

  • 自宅と距離が近く通いやすい
  • 特定の病気や分野に限定せずどんな症状も最初に相談できる
  • 地域の医療機関や適切な医師を紹介してくれる
  • 患者の疑問に対し詳しく説明してくれる

 

そのほか、親子それぞれに、主治医の先生のタイプや治療方針などに対し合う合わないもあるでしょう。

 

また、予防接種や検診と病気の診察とで待合室が分かれていて感染対策がしっかりしている、予約制または待ち時間を知らせてくれるシステムがある、駐車場が広いといった利便性で決めたという人もいます。

おわりに

転勤などでどうしてもかかりつけの医療機関を変わらなくてはならないこともありますが、赤ちゃんの頃からわが子の成長を見てくれ ている先生がいるのはなにかと心強いもの。

 

まだかかりつけ医が決まっていない…という人も、優先順位を整理して、ベストなかかりつけ医が見つかると良いですね。

文/高谷みえこ
参照/日本医師会|国民のみなさまへ「かかりつけ医を持ちましょう」 https://www.med.or.jp/people/kakari/#:~:text=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E4%BC%9A%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%8C%E5%81%A5%E5%BA%B7,%E3%81%A8%E5%91%BC%E3%82%93%E3%81%A7%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY「小児科外来診療料、小児かかりつけ診療料及び小児運動器疾患指導管理料に係る算定要件及び施設基準について」 https://www.jpeds.or.jp/modules/news2/index.php?content_id=431