現代の女性は、職場では男性と同等に働くことが当たり前になり、結婚後は夫婦と子どもだけの核家族、親戚や隣近所との付き合いも減り、結果「育児」も1人だけで抱え込んでしまう人が増えていると言われます。
- 子育てを自分以外に任せることに後ろめたさを感じてしまう
- 誰かに頼りたいと思っても勇気が出ず、結局1人でがんばってしまう
- 子どもを他人に預けるのが不安で任せられない
今回は、そんな「頼るのが苦手」なママたちの体験談や悩みと、もっと罪悪感なく人を頼るためにぜひやってみてほしい方法を7つ紹介します。
「頼れる相手がいない…」と悩むママ
親は育児の一番の責任者とはいえ、毎日ワンオペで24時間育児をしていると、家事が回らなかったり、子どもが泣き止まなかったり…辛いとき、子どもから少し離れたいときがあるのは当たり前ですよね。
また、育児に慣れてきた2人目・3人目のママであっても、1人が熱を出したときにパパが仕事だと、他の子のお世話やケアに困ることもあります。
しかし、そんなときに安心して誰かに頼れる人ばかりではありません。
今回、育児中のママ50人にアンケートを取ってみた結果、「育児で困ったら、夫以外に頼る人が近くにいる」と答えた人は18人と、3人に1人しかいないことが分かりました。
Q「育児で困ったとき、夫以外に頼る人が近くにいますか(複数回答可)」
A
- 祖父母…12人
- 兄弟親戚…3人
- ママ友…6人
- 近所の人…1人
- 昔からの友人…2人
- 職場の友人…1人
- ベビーシッター…1人
- ファミリーサポートセンターのサポーター…2人
- 誰もいない…32人
しかも「誰もいない」と回答した人の中には、比較的近所に祖父母が住んでいる人も含まれており、祖父母に頼れない理由として次のような話を聞かせてくれました。
「息子が歩き始めの頃に夫の実家で、私が台所に立っているあいだ見ておくよと言ってくれたのはいいのですが、口だけで全然見てなくて…。おかげで玄関の段差から落ちて大泣きするわ、タバコの吸い殻はコタツに置きっぱなしだわで、結局私が遠くからチラチラ見ていて何度も駆け寄りました。何度かやんわりお願いしたものの、直後だけしか効果がなく、とても預けられないと感じました」(Mさん・35歳・3歳児のママ)
「実母が車で15分くらいのところに住んでいますが、私が小さい頃から、なんでも母の価値観で決めつけて小言を言うばかりなんです。結婚後は適度に距離ができたのですが、産後、家事を手伝いに通ってくれた間はやっぱり頭ごなしのダメ出しが多くて…。私がどういう思いを持って育児をしているのかとか、説明しても全く取り合わないんですよね」(Uさん・29歳・0歳児のママ)
「ママ友には頼れない」という人からはこんな意見も。
「ママ友同士でお子さんを預けたり、習い事の送迎などを交代で行っている人もいますが、私はそれができなくて…。何かあったらお互い責任取れないし、フラッと行動するタイプなので毎回の段取りもわずらわしくて。また急に頼むのは向こうも迷惑だろうと考えてしまい、けっきょくママ友には誰にも頼れません」(Nさん・32歳・4歳児と2歳児のママ)
「ママ同士って子どものぐずる時間帯や夕食作りで手が離せない時間帯、大体同じじゃないですか。預かってしまうとそれが2倍になるわけで、私も預かりたくないし、他の人にもとても頼めません」(kさん・35歳・1歳児のママ)
ママたちの「頼れない理由」とは
その気になれば頼る相手がいるにも関わらず、心理的にどうしても育児で人を頼れない…という人にその理由を聞いてみました。
「頼る方がおかしい、甘えてる」と言われた
Iさん(31歳・0歳児のママ)は、お子さんが敏感なタイプで日中も夜もなかなか寝付かず、やっと寝たと思うとちょっとの物音でもすぐに泣き出すため、まとまった家事や睡眠時間が取れない状態が続いていたといいます。
「家事はどんどんたまっていくし、精神的にも辛かったので、時々保育園の一時保育に預けたいと夫に話したところ、ちょうど夫は転職したばかりで、いま収入も少ないのに、わが家にはちょっと贅沢じゃない?と言われて何も言えず…諦めました」
また、Eさん(28歳・2歳児のママ)は、こんな体験もしたといいます。
「姉の子たちはおとなしくて手がかからないタイプです。かたやうちの息子は公園でも庭でも気に入ったらずっと遊び続け、帰ろうとすると絶叫して嫌がるので、度々近くに住む母にも付き添ってもらい、その間に食事の支度をしたりしていました」
するとある日、お姉さんから電話があり、
「結婚したのに実家に甘えすぎじゃない?もう少し親としての自覚を持って」
と注意されたそうです。
「正論なので何も言い返せず、たしかに頼りすぎなのかな…と実家に行く回数を控えるようにしましたが、息子は動きが激しくて、ずっと1人で相手をするのはかなり消耗します。今は幼稚園入園が唯一の希望です」
と思いながら日々を過ごしているということです。
HSP・完璧主義・長女気質…性格も影響
周囲にはサポートする意志があるかもしれないのに、頼むのを自らあきらめてしまう人も。
「私はいわゆるHSP(人一倍繊細・敏感な気質)ということもあり、もし何かお願いして断られたらずっと落ち込んでしまうと思うんです。親戚の集まりでも、ちょっと食事を食べる間だけ周囲に子どもを頼みたいのですが、この子いまご機嫌斜めだから迷惑かけちゃうかな…見てくれてるうちに料理が冷めちゃったら悪いし…と考えすぎて、もう自分が何も食べずに終わった方が気が楽、となってしまうんです」(Hさん・30歳・0歳児のママ)
「完璧主義なところがあるのは自覚しています。長女が1歳頃までは、どんなことも母親の私がやらなければ!という謎の使命感で無理していた気がします。ハイハイでなんでも口に入れる時期は1日3回床の掃除をしたり、夫がオムツ替えでウンチの拭き残しが許せなくてやり直したり…とても、人に任せられない心境でしたね。さすがに第2子以降は、いい意味で適当になれました(笑)」(Sさん・38歳・6歳児と3歳児と2歳児のママ)
「私は長女気質というのでしょうか、自分が場の中で一番しっかりして面倒を見なくてはという意識が強くて。人からの頼みごとは断れないのに、いざ自分が頼る番になるとできないんですよね」(Wさん・34歳・1歳児のママ)
など、振り返ると、自分自身が一番ブレーキをかけていた…と感じている人もいました。
気持ちよく「頼る」7つの方法
特に人に頼らずとも、自分1人や夫婦で楽しく育児ができている人もたくさんいます。
しかし「頼りたいのに頼れない」という状態が長く続く場合は「産後うつ」やパニック障害などストレスが関わる病気の引き金にもなりかねません。
気軽に人を頼ることができない、性格的に難しい…という人のために、先輩ママたちが「頼れない」から「頼れる」に変わったきっかけや考え方を7つ紹介します。
もし取り入れられそうなものが1つでもあれば、ぜひトライしてみて下さいね。
1)育児以外で「頼る」
多くの保育園が生後2ヶ月から預かり開始していることからも分かるように、通常、赤ちゃんは愛情込めてお世話してくれる大人が1人でもいれば問題なく過ごせます。
しかし、ママが周囲に知り合いがいない状態で、夫も仕事で忙しく、ずっと赤ちゃんと2人で過ごすいわゆる「カプセル育児」が続くと、人に預けることに大きな抵抗を感じるようになってしまうかもしれません。
その場合は、まず育児以外の「掃除」「料理」などを家事代行さんにお願いしてみては。
浮いた時間で親子のんびり過ごすのもよし、お昼寝するもよし。
「身内以外の方が気軽に頼れる」というタイプの人にもおすすめです。
2)愚痴を言える時間を作る
ストレス発散の相手を誰かにしてもらうのも、りっぱに「頼る」ことになります。
本来は、パートナーである夫にいまの気持ちを聞いてもらうのが一番。
なお、男性は前置きなく話し始めると「じゃあこうすれば?」「結論、どうしたいの?」とすぐ解決に持って行こうとする人が多いので、「15分だけ愚痴聞く時間を作って」と、目的をはっきり伝えておく方がお互いイライラしません。
それが難しい場合は、友人とお茶やランチに出かけられると良いのですが、子連れで出かけにくい、感染症に配慮して外出を自粛している…というときは、スマホアプリなどを活用してオンラインで愚痴を言い合ったり聞いてもらったりするだけでも気が楽になるはず。
3)「次がある」と割り切る
今回、育児で頼る人がいないと答えたママの中には、一度は乳幼児検診や自治体の窓口で育児のしんどさを相談したにも関わらず「もうちょっと様子を見ましょう」「大丈夫よ」と帰されてしまった人や、児童虐待の有無を探る以外何もしてもらえなかったりで「もう役所には二度と頼らない!」という思いをした人もいました。
残念ながら、新生児訪問や検診でイヤな思いをする人は一定数いるようで、担当者とママの相性や言葉の選び方などには当たり外れがあるのが事実です。
しかし、担当の相談員さんや保健師さんの言葉で救われた、心が軽くなった…というママもまた大勢います。
相談窓口は、公的機関や民間合わせて複数あります。
二度と訪れないのは非常にもったいないので、「今回はたまたま巡り合わせが悪かった」と考え、別の窓口に話してみると思いがけずいい展開になるかもしれません。
4)子どもの育てやすさは1人ずつ違うことを意識する
ママ同様、子どもの性格や気質・発達のテンポも異なります。育てやすさにも個人差があるので「自分に親としての能力がない」と思う必要は全くありません。
また、祖父母や年上の人、ネットの情報などから「ママ、ママと頼ってくるのはほんの少しの期間だけ。あっという間に大きくなってしまうから、ママは今のうちに思いっきり愛情を注いで」といった話を聞くことがあります。
それも間違いではないですが、いくら子どもが可愛くても、人に頼るべき基準は、ママ自身が「辛い、頼りたい」と感じたらそれが一番だいじです。
「今だけだから」とガマンせず、頼る相手を探しましょう。
5)多様な人と関わるのは、子どものためにもプラスと考える
保育園はもちろん、実家やファミリーサポートセンター、ベビーシッターさんなど、いろいろな大人と関わるのは子どもの成長のためにはとてもプラスになります。
もし本当は誰かに預かってほしいのに、預けることに罪悪感があるのなら、「この子が一回り成長するための機会」だと思い出してみましょう。
6)定期的に「いまの自分の気持ち」を確認する習慣を
特に初めての産後は、赤ちゃんの命を守ることだけで精一杯で、合間になんとか家事をして、自分のことは後回し…という人がとても多いと思います。
でも、1日1回、寝る前などでもいいので、「今、わたしはどんな状態か」「どんな気持ちや感情を持っているか」と、自分の調子を確認する時間を持つのがおすすめです。
「楽しくて、明日も頑張れる」という状態から「頑張りすぎてもう糸が切れそう」まで、誰しも、ここを超えたら自分のケアに踏み切るべき「境界線」があるはず。
今、自分が境界線に立っていると思ったら、思いきって頼る行動を起こしてみましょう。
その方が早く元気になれて、自分自身にも、パートナーにも、赤ちゃんにもいいことがいっぱいです。
7)頼む・頼まれる・断るをスムーズにする工夫も
思いきって何かをお願いして、断られたら立ち直れない…。その気持ちはよく分かります。
そこで、お願いするときには
「忙しかったら遠慮なく断ってね!私もそのほうが気が楽だから」
と相手が気軽に断れるようなひとことを添えると良いですね。
もしあいにく都合が悪くても、ほとんどの人は
「今回はごめんなさい!でも次も遠慮せず声かけてね」
と返してくれるはずです。
おわりに
2021年、コロナ禍でさまざまな子育て支援の施設やイベントが制限され、気軽に親子で出歩きにくい状態が続いています。
この状況で、ますます頼る相手や機会が減ってしまうママが増えているのではないかと心配しています。
いつも夫婦で助け合って子育てができれば一番ですが、さまざま事情の人がいる中で、家の外に頼れる相手を作っておくのは、育児のリスク回避や安心感につながっていくのではないでしょうか。
文/高谷みえこ