「○時までに上司に企画書を提出しなくてはならないのにアイディアが出てこない」という経験はありませんか?
急いでいるからなのか、もともとアイディアの種がないだけなのか…。すぐに企画を提出しなければならないときに使えるテクニックについて、発想法の達人であり『使えるアイデアがあふれるすごいブレスト』の著者である、石井力重さんに話を伺いました。
ピンチのときに使える「没ネタデトックス」
── 考えてもいい案が浮かばない…。私自身もこういう場面によく出くわします。どうすれば次々とアイディアが出てくるようになるのでしょうか。
石井さん:
新しいアイディアが生まれないときは頭に浮かんだことをとにかく「書く」「話す」などして外へ出すことが大切で、この作業を「没ネタデトックス」と呼んでいます。
実は、頭の中には考えるための作業テーブルが7つ程度しか存在せず、ひとつアイディアが浮かぶとひとつ席が埋まる仕組みになっているため、7つ案を考えると席はすべて埋まってしまいます。
また、ひとつのアイディアが消えるまでには2、30秒はかかると言われています。そのため、思考力が早い人は頭の中のすごく狭いスペースで作業しているような状態に。それでは良い案も出てきづらいですよね。
快適な状態で新しいアイディアを次々と発想するためには、浮かんだアイディアを頭の中の作業テーブルから外す作業が必要です。頭の中のデトックスですね。このとき、自分で「思う」だけでは効果が薄いので、書くなどの行為で言語化し、頭の外へアウトプットすることが大切です。
── どれくらい書き出すのがいいんでしょう?
石井さん:
例えば、質は問わないので、ひとつのテーマにつきアイディアを30個。15分間、コーヒーを片手にリラックスした状態で書き出してみてください(締め切り間近で焦っているかもしれませんが…)。
駄案でもいいのであれば、30個くらい思いつきそうだと思いませんか?まずは「これならできそう!」と自分をその気にさせるところからはじめます。
不思議と21個過ぎたあたりから、「これ使えそう」という良案が次々と出てくるはず。短時間でいくつか案を出したい時はこのテクニックが有効です。
注意したいのは、数の多さが目的ではないということです。いい案を出そうと必死にアウトプットをし続けるのではなく、書き出した案の中から良さそうなものを選び、それをさらに企画として磨くといいと思います。
「ありがちなアイディア」から抜け出す方法
── いろいろなアイディアが思い浮かべる方法は伺いましたが、アイディアがいつも似たり寄ったりなことが…。「ありがちなアイディア」から抜け出す、何かいい方法ありませんか?
石井さん:
企画を考える際、いちからアイディアを生み出すことはなかなか難しいですよね。既存の企画に寄ってしまうこともあるでしょう。そこで使えるのが「ずらしのテクニック」です。これは既存のアイディアを6つの観点で要素をずらすことで新しいアイディアを生み出す発想法です。6つの観点とは以下の通りです。
アイディアを構成する6つの要素
- ひと
- もの
- 動き
- 環境
- 意味価値
- 五感
例えば、新しく中華料理店をオープンさせることになりました。ありがちなアイディアに陥らない、まったく新しい中華料理店を企画するには、どうすればいいでしょうか?6つの観点を利用しながら、発想してみましょう。
1.「ひと」をずらす
中華料理店の利用客はビジネスパーソンやファミリー層が一般的かもしれませんが、例えばそれを「女子大生」にずらしてみましょう。「女子大生に人気の中華料理店」という発想から、「映える中華料理店」などの企画が浮かぶかもしれません。
2.「もの」をずらす
中華料理店で提供される代表的な料理は麺類や炒め物などがあります。例えばそれを、「モーニング」にずらしたらどうでしょう。「中華料理店のシェフが作る特製モーニング」というアイディアに繋がるかもしれません。
3.「動き」をずらす
中華料理店では料理を作ってお客さんに提供しますが、「調理・販売」という動きを何か別のものにずらしたら、どうなるでしょう。例えば「畑を耕す」ことをプラスして、「自宅栽培した野菜で作る中華料理の店」という発想も。
4.「環境」をずらす
中華料理店といえば、街の商店街や国道沿いにあるイメージかもしれませんが、これもずらしの対象です。例えば「キッチンカー」を使って、「さまざまな場所に出来立ての料理を届ける中華料理店」というのも、ありかもしれません。
5.「意味価値」をずらす
中華料理店に訪れる人の目的はもちろん、おいしい料理を食べることですが、本当にそれだけに留まるのでしょうか?例えばこの食事という意味価値をずらし、「出会いの場」にしてみると、「世界各国の人とビジネスコミュニケーションがとれる中華料理店」などというアイディアが浮かびますよね。
6.「五感」をずらす
中華料理店において満たされる五感は「味覚」ですが、これを「聴覚」にずらしたらどうでしょうか。本格的な中国の音楽が生演奏で聞ける中華料理店というのも、面白いアイディアではないでしょうか?
── ひとつの要素を変えるだけで、これだけ違ったアイディアが発想できるんですね。
石井さん:
そうですね。いちからアイディアを出すのは難しいですが、これならできそうじゃないですか?全く新しい発想のアイディアを求められたとき、ぜひこの発想法を利用してみてください。
PROFILE 石井力重
取材/望月琴海