オンライン会議は対面と違いスムーズにいかないことも。それがブレストとなると、さらにハードルが高くなると感じませんか?
今回は『使えるアイデアがあふれ出るすごいブレスト』の著者・石井力重さんに、オンラインでもスムーズにできるブレスト術を伺いました。
そもそもブレストのことを理解していますか?
── 最近、参加者でアイデア出しをする「ブレスト会議」が昔に比べて増えている気がします。でもなかなかいい発言ができなくて…。ブレストが苦手な人に共通点はあるのでしょうか?
石井さん:
そもそもブレストとは「集団発想法」のひとつで、ブレストには4つの基本的なルールがあります。それを守ることでひとりでは生み出せないような斬新なアイディアが創造されますが、円滑なブレストができていないチームは、本来のルールを理解せず「なんとなく」で会議を進めているのではないでしょうか。では、ブレストの本来のルールはどのようなものなのか確認してみましょう。
基本的なブレストの4つのルール
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- 質の高さにこだわらず、とにかくアイディアを出す
- 現実的なアイディアでなくても構わない
- 他人のアイディアに便乗しても良い
- どのようなアイディアも批判しない
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このルールを見ると「私にもできそう」と思いませんか? ですが、様々な企業は基本的なルールから外れたブレストをおこないがち。会議を始める前にまずはルールの確認をしてみることをおすすめします。
さて、これからルールをひとつずつ解説していきますが、ここではあえて本来のルールを逆さにして紹介します。その方が理解しやすいかもしれません。
失敗するブレスト会議の共通点
1.質の高い案を出せ、無駄に出すな(本来は「質の高さにこだわらず、とにかくアイディアを出す」)
企業のブレスト会議において、よく誤認されている項目です。一見、効率的のように見えますが、ブレストの本質はアイディアの創出。本来は質が悪くてもどんどん案を出すことが基本です。
2.確実にできる案を出せ(本来は「現実的なアイディアでなくても構わない」)
これもよく見る失敗例です。たしかに、実現可能性がない案が出されると「誰がやるの?予算は?」など、指摘をしたくなりますが、その結果、既存のアイディアしか出せなくなってしまいます。
3.人の着想を参考にせず、各自独自の案を出せ(本来は「他人のアイディアに便乗しても良い」)
ゼロからの発想ばかりにこだわると、どうしても行き詰まってしまうものです。また、ブレスト会議は、参加者同士が相互作用して思いがけない良案が生まれる場。はじめから斬新なアイディアばかりを出す必要はありません。
4.ダメな案が出てきたら、叩け(本来は「どのようなアイディアも批判しない」)
ここまで露骨でなくても、例えば若手のアイディアに対して上司がくどくど粗を指摘するような場面には、誰もが見覚えがあるのでは。無意識にプレッシャーをかけることで、参加者の自由な発言の機会が奪われ、結局、盛り上がらないブレストになってしまいます。
チームリーダーが上記のような発言をする会議では、ブレストも名ばかりで、創造的な意見はほとんど出てこないでしょう。これまでの習慣で反射的に出てしまうこともあるので、ブレスト会議の前には改めて、ルールを確認してみてください。
オンラインでもブレストは盛り上がるのか?
── 最近はリモートワークに移行する企業も多く、ブレストもオンラインで行われる機会が増えました。対面と違い、気をつける点はありますか?
石井さん:
オンラインでの最大の注意点は、参加者がせっかく出したアイディアが流れてしまうことです。誰かひとりが書記となり、参加者にリアルタイムで共有することが必要になります。書記を設けるメリットはふたつあります。
理由1 出てきたアイディアを縫い留める効果がある
書記が互いの発言をWordなどに書き込み、画面共有をすることで、良案含めてブレストで出たアイディアをすべて拾いあげることができます。それにより、会議では拾われなかったアイディアを後から掘り返すことも可能です。
同時に、発言者は発言内容をチャットに記録し、アイディアの漏れを防ぎます。ただし、記録自体をチャットに委ねるのは避けましょう。案が次々と流れていきやすく、後から順番を入れ替えることもできないからです。
理由2 参加者の視線を集められる
オンラインの場合、画面上に全員の表情が大きく映し出されるため、発言者は参加者から見られていることを意識しがちです。結果、「表情を作る」「相槌を打つ」など、本来はアイディアの生成に払われるべき頭のリソースを参加者とのコミュニケーションに使ってしまいます。
Wordのメモを画面共有しておけば、参加者の視線はそちらに集まるため、発言者は見られているプレッシャーから解放されます。実際、画面上に並ぶ上司達の顔も小さくなりますから、ストレスが減少する…という効果も(笑)。
ちなみに対面でブレスト会議を行う場合もホワイトボードを活用し、参加者の視線をそちらに向かわせてください。もし書くことがなければ大きな丸を描くだけでも効果があります。
では、オンライン上ではどうでしょうか? 全然アイディアが出されず、テーマに関する関連情報の質疑応答を続けることはよくあります。そういう時は、「自由模造紙」のような感じで、「シンプルで軽い、ポストイット&ホワイトボードのWEBサービス」を表示しておくのも良いでしょう。
不慣れな人にはGoogleの「ポストイット」やオンラインサービス「Jamborad」がおすすめ。数ある中で最も簡単で誰でも30秒で使い始められます。中央に大きく発想のテーマを掲示しておくだけでもいいでしょう。
ちなみに、これは余談ですが、かなりクリエイティブ層の集まりならこういう時に、「焚き火の動画」や「猫の動画」を画面共有します。
雑談ばかりで延長するブレスト会議をやめるには
── 自由にアイディアを出すことは重要だと思うのですが、話が脱線して雑談ばかり…実りの少ない会議になったり、想定時間を大幅に超えるケースは困りますよね。
石井さん:
会議中、話が本題から脱線し会議が延長されることはありますよね。また、聞き手側の反応が薄いからか、発言者が何度も同じことを繰り返す場面も見受けられます。
そうしたときは「パーキングロット(PL)」が効果的です。PLとは駐車場という意味で、主題とは異なる意見の待避所のようなものを指します。雑談に入ったら書記がメモしているWordに境界線を引き、その下に「PL」と書き込みます。あとは雑談内容をそこに書き留めていき、話が終わったら再び境界線を引いて終わりです。
<例>
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
PL
・******
・****
・****
自分の発言がPLに書き込まれることで、主題からズレたことを発言者は自覚できますし、繰り返し発言することもなくなるでしょう。
── これなら会議中も、ブレストの目的を再確認できますね。また、参加者が発言者を注意するよりも、発言者に自覚させることで、自由な発言を妨げずに済むかもしれません。
石井さん:
そうですね。このような小さなテクニックも駆使しながら、オンライン会議をさらに充実させてください。
ブレストのチーム力を上げる最善策
ブレスト会議でもっとも大切なことは、最初にお伝えした4つの基本ルールです。もし自分のチームがうまくいっていないと感じるならば、この4つのルールのうちで課題を抱えている項目を、会議の前に無記名投票してみましょう。
改善に生かすポイントは、票数が多かったルールを「ひとつだけ」その日の会議に取り入れること。ルールが定着していないなかで、一度にすべてを意識させると、ルールを守ることで頭がいっぱいになってしまい。肝心のアイディア出しが疎かになります。
会議を重ねるなかで、参加者にルールを徐々に浸透させ、ブレストのチーム力をあげていきましょう。
PROFILE 石井力重
取材/望月琴海