自宅で仕事をするワーキングマザーと息子

2020年の秋からいわれていた「児童手当の特例給付」について、世帯主が年収1200万円以上の世帯には給付をとりやめる方向で法案が成立したと報じられました。

 

これについて、該当する世帯だけでなくそれ以外の世帯からも「よけいに少子化が進むのでは…?」と疑問の声もあがっています。

 

このまま実施された場合、どんな家庭が児童手当を受け取れなくなるのか、課題や「こんな案ならもっと良かったのに」という子育て世帯の声を紹介します。

児童手当の特例給付廃止は、どんな人に当てはまる?

2020年の11月頃、「児童手当がなくなる?」と話題になりましたが、そのときの検討内容は次のようなものでした。

 

  • すべての児童手当を廃止するのではなく、特例給付(年間所得960万円以上月5000円)を廃止
  • もっとも収入の多い人ではなく、夫婦や世帯で年収を合算する
  • 浮いた予算を待機児童の解消に充てる

 

しかしその後の検討の結果、夫婦合算の案はなくなり、「もっとも収入の多い人の年収を基準とする」はそのまま継続。

 

そして「960万円」ではなく「1200万円以上」に引き上げて、20201年2月に法案が成立したということです。

 

上記に当てはまる世帯では、今後、中学生までの子ども1人につき月5000円、年間6万円あった給付が受け取れなくなります。

 

たとえば、夫婦の年収が以下のような場合、

 

  • 夫1000万+妻800万で子ども1人→これまでどおり年に6万円が受け取れる
  • 夫1000万+妻専業主婦で子ども3人→これまでどおり年に18万円が受け取れる
  • 夫1200万+妻専業主婦で子ども3人→今後は年間18万円が受け取れない

 

となります。

 

(960万円以下では通常の児童手当となり、子どもの人数や年齢に応じた金額が給付されます)

 

該当する子どもは61万人とされ、2022年10月支給分から実施予定。

 

「年収1200万円もあったら、月に5000円くらい減っても平気でしょ?」

 

と思うかもしれませんが、上記の中には、年収1200万でも生活がラクとはいえない人もいます。

 

「職業柄、首都圏に住んで通勤するしかないですが、家賃も生活費も高く、子ども3人を本人の希望どおりに進学させるには年収1200万でもギリギリです。月5000円でも15年で90万円。廃止されたら、大学の初年度費用相当がまるまる消えてなくなります」(Kさん・東京都在住・6歳と4歳と1歳児のママ)

 

「うちは子どもに持病があり、夫の仕事は夜勤や出張が多くサポートが必要。今後も保育園には預けない予定です。その中で、待機児童を減らすために児童手当をなくしますねと言われても…。本当にそれ以外にもっとカットすべき支出はないのでしょうか」(Aさん・神奈川県在住・5歳と2歳のママ)

廃止についての課題と疑問

今回、SNSでのママ・パパたちの声を見てみると、さまざまな意見や疑問が見られました。

 

意外にも「収入が多いんだから児童手当は不要」という声は全体の10%に満たず、もっとも多かったのは以下のような意見でした。

 

「待機児童解消のために消費税を上げたはずなのに、なぜまだお金が必要なの?」

 

「お金が必要だとしても、なぜ子どもたちのための手当を減らして充てようとするの?」

 

「過去、児童手当と引き換えに年少者所得控除をなくしたのに、児童手当廃止してもそちらは復活させないの?」

 

「ほんとに今まで待機児童解消にお金や労力をきちんと費やしていたの?一般企業だったら追加でお金を下さいなんて、成果なしで責任を問われるところだよ」

 

などの厳しい意見も。

 

また、所得制限を設けること自体についても、

 

「自分は地方在住で基本給が安いので該当しないけど、1200万円以上稼いでたくさん納税して、子どもも育ててる人たちを冷遇するのってどうなの?と思う。3人子どもが欲しかったけど2人にしようかってなりそうだし、働くモチベーションも下がりそう」(Tさん・大分県在住・4歳児のパパ)

 

など、当事者以外からも、少子化に拍車がかかるだけではないかという疑問の声もありました。

「こんな案ならもっとよかったのに…」現場の声

子育ての現場にいるママ・パパたちからは、不満や疑問だけではなく「これなら納得できる」という案も出ています。

 

「所得制限を設けるにしても、2人目からは給付するなどの条件があったほうが良いと思います」(Eさん・岡山県在住・小1と3歳のママ)

 

「同じ1200万円でも、首都圏と地方では事情が違うので、それぞれ係数をかけたほうがいいですよね」(Jさん・埼玉県在住・小5と小3のパパ)

 

「待機児童解消=少子化解消を目指しているのだから、財源は子育て予算以外から得るべきでは?」(Sさん・福井県在住・0歳児のママ)

おわりに

前回の検討の段階では「支給額ができるだけゼロにならないように」という報道もありましたが、最終的には夫婦のいずれかが年収1200万円を超えた場合はゼロとなる結果になりました。

 

月5000円とはいえ、子どもの将来のために一生懸命働いているママ・パパたちや子どもたち自身が「応援されている」という気持ちを持ち続けられるような、そんな児童手当制度であってほしいと願います。

 

文/高谷みえこ
参考/令和3年2月2日(火)定例閣議案件 | 閣議 | 首相官邸ホームページ https://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/2021/kakugi-2021020201.html
児童手当の特例給付対象 年収1200万円以上除外へ 来年10月以降 | 教育 | NHKニュース https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210202/k10012845011000.html