身振り手振りを交えてお話してくださった宮西達也先生

 

シリーズ累計200万部を超える宮西達也先生の人気絵本「ティラノサウルスシリーズ」(ポプラ社刊)を原作に、肉を食べない恐竜“ティラノ”と飛べない恐竜“プノン”が天国を目指す大冒険を描くアニメーション映画『さよなら、ティラノ』(12月10日公開)。本作でオープニングナレーションも担当した原作者の宮西先生が「親にこそ観てほしい映画」と語る理由とは?

「子どもと一緒に観て、お家でいっぱい語り合って!」

©2018 "My TYRANO” Film Partners

 

── 出来上がった映像はいかがでしたか?

 

宮西先生:

映像はとても綺麗で素敵だと思いました。そして、坂本龍一さんの音楽も素晴らしくて「わーー!!」って思っちゃう自分がいました。僕の本の真髄である人との関わり、絆、優しさ、思いやりがちゃんと表されている映画になりました。

 

── 前作もそうでしたが、絵本とはかなり印象の違うキャラクターデザインになります。

 

宮西先生:

原作のティラノ、つまり僕のティラノはこうだけど、キャラクターデザインの方が一番いいと思う、あなたのティラノにしてほしいという気持ちは最初に伝えました。だから、全然違っていいんです。江口摩吏介さんのティラノもプノンもすごくかわいらしくていいなと思いました。僕は絵本のプロですが、今回は映画です。なので、映画を作るプロが思う“ティラノ”を一生懸命表現すればいいものができると信じていました。僕の絵本が原作ですが、映画は客観的に観るようにしています。

 

制作過程では、最初にキャラクターや植物、山などのパーツの候補を見せていただきました。「赤い実はこのデザインがいい」というように、候補の中から選ぶことはしましたが、出てきたものは否定しないし、最初から「こうしてください」というリクエストも特に出していません。

 

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── オープニングで絵本のティラノを見て、ナレーションの宮西先生の声を聞くことで、「ティラノサウルスシリーズ」だと確認する感じでした。それくらいデザインの印象は違うなと。

 

宮西先生:

そう感じる子どもも多いと思います。「宮西先生の(絵で)映画が観たかった」なんて声があったらそれはそれでうれしいですね。どんなふうに感じてもいいんです。何かを感じて、考えることが大切、感想は自由ですから。

 

── オープニングナレーションについて伺います。読み聞かせとの違いはありましたか?

 

宮西先生:

その場の雰囲気に合わせてやる読み聞かせとは全然違いました。読み聞かせなら、音がハズれても「ライブ感があって楽しい」と思えるけれど、ナレーションは尺も決まっているし、失敗もできません。僕は滑舌があまりよくないので、何度も録り直しもしました。変な言い方だけど「真面目に読みました」という表現がしっくりくるかもしれません(笑)。すごく緊張もしました。

 

── 読み聞かせとは違う「読み方」を学べた感じなのでしょうか?

 

宮西先生:

勉強になりました。映画での僕の読み方はいわゆる“よそ行き”の宮西達也です(笑)。読み聞かせは一生懸命さが伝わればいいと思っていますが、今回は形に残るし、冒頭に登場するので「映画を台無しにしちゃいけない」という気持ちで挑みました。しっかりした“よそ行き”の宮西達也を楽しんでください。

 

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── 映画ではティラノ、プノンをはじめゴルゴサウルスたちが「天国」を目指します。宮西先生にとっての「天国」とは?

 

宮西先生:

ティラノたちにとってもそうだけど、理想の場所ってことですよね。人によって考え方が違うから、正義と思うことだって違う。地球という同じ場所に住んでいながら、食べるものも文化も、何もかも違います。僕が絵本に描いたように、肉食と草食が仲良くするなんて本来はありえない話です。でも、そこをなんとか愛し合うことができたら、もっと素晴らしいと思う、理想ではあるけれどそれが僕の「天国」です。

 

それを叶えるために必要なのは愛。究極の愛だと思うんです。でも最後はちゃんと別れもある。僕にとってはそこが大事なんです。最後仲良くなったね、で終わるのは嫌いです。リアリティーがなくて読んだ人ががっかりすると思うんです。僕の絵本を読んで「どうしたら(問題を解決して)もっと平和な国ができるのか」とかいろいろなコミュニケーションのきっかけにしてほしいんです。「ティラノサウルスシリーズ」はみんなそうです、みなさんに考えてもらうような終わり方にしています。

 

── 大人が観てもおもしろい映画だと思いました。

 

宮西先生:

まずは、親に観てほしいです。子どもに「ちゃんとしなさい」という親がいるけれど、僕は「まずは親がちゃんとしないとダメ」だと思っています。ちゃんとするというのは難しいことではないんです。

 

例えば、いい映画を観て「優しさってなんだろう」「絆ってなんだろう」と考えられるのが素敵な親だと思います。親がいい映画だと思ったら、子どもと一緒に観て、お家に帰ってから「どこがおもしろかった?」「ティラノはなんであんなこと言ったのかな?」「どうしてプノンは飛べなかったのかな」とコミュニケーションすることが大事だと思っています。いっぱい語り合ってください!

 

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