人と接する上で、「相手が今何を思っているのか」「何を感じているのか」を察知する能力は非常に大切ですよね。そこで今回は、相手と良好な関係を築けるコミュニケーションスキル「キャリブレーション」について学んでいきましょう。
相手の気持ちを察するスキルで臨機応変な対応が可能に
キャリブレーションとは一般的に「調整」という意味の言葉ですが、心理学においては“相手の顔色・表情・姿勢などの非言語的情報から感情を読み取ること”を示します。例えばビジネス面では、ロジックを組み立ててクライアントなどに説明をおこなうケースが多いはず。しかし「言ってることは理にかなってるけど…なんとなく嫌だな」などと、相手が直感を頼りにする人の場合は少しやっかいですよね。
そこでキーポイントとなるのが“相手の気持ちに気づくこと”。ロジックが通用しない相手の心を捉えれば、臨機応変な対応を取りやすくなります。キャリブレーションは部下や取引先だけでなく、友人や好意を寄せている人などにも効果的。相手の感情をいち早く察知することで、より円滑なコミュニケーションを実現できるかもしれません。
先入観を捨てるべき!?
相手の心理状態を察するキャリブレーションですが、実際にどのような点を意識するべきなのか気になるところ。ネット上では具体例として、「うつろな目線だったり、声のトーンが暗い人は落ち込んでいる可能性が高い。こちらから『何かあったの?』と声をかけてあげるといいよ」「表情の変化だけじゃなく、“呼吸や声のテンポ”も判断材料になる。例えば会話時の話すスピードがいつもより速いと思ったら、相手がその話題に興奮している証拠かも」などの声が上がっていました。
また同スキルを身につけるためのトレーニング法について、「相手の気持ちを察知するためには、“先入観”を捨てることが大事。『この人は今機嫌が良いに違いない』と感じても、主観的判断にとらわれないで相手の様子を客観的に観察するのが大事」「日常生活で相手の“表情や態度の変化”を観察してるうちに、“瞬きが多い=緊張している”とかがわかってくると思うよ」といったアドバイスが寄せられています。
仕事上でも相手への気遣いは大切!?
では仕事をおこなう上で、キャリブレーションに関連する“気配り”はどれほど重要だと考えられているのでしょうか? 産業能率大学総合研究所は、以前「仕事センスに関する意識調査」を実施。「仕事を上手く進めるには、知識やスキルに加えて『センス』が重要」という考えのもと、300名のビジネスパーソンに“仕事センスがある人に見られる特徴”をたずねました。
同質問に対して「自分で判断して行動する力がある(69.3%)」「相手に明確に説明することができる(62.3%)」などの回答があがるなか、「相手の言動から状況を察知できる(36.3%)」との回答もランクイン。相手への気遣いは、仕事を円滑に進めるためにも必要な能力のようですね。
“キャリブレーション”を実践すれば、会話が苦手な人でも相手とのコミュニケーションが円滑になる可能性はアップしそう。訓練や慣れが必要な技術と思われるので、まずは相手の行動を観察することから始めてみてはいかがでしょうか。
文/牧野聡子
参照/産業能率大学総合研究所「仕事センスに関する意識調査」https://www.beyond.sanno.ac.jp/asset/file/release201705.pdf