1日の家事時間の大半を過ごす空間といえば、キッチン。それゆえにたくさんの悩みが詰まっている場所とも言えます。
キッチンにまつわる悩みのなかでも特に多く聞かれるのが、スペースが狭い、作業がしづらいというもの。そこで今回は快適な作業に欠かせない、キッチンの動線確保のポイントについて取り上げたいと思います。
1.動きやすい通路幅を把握しておこう
人が歩くために必要な幅は最低52cmと言われています。ですが、これは単に歩くだけの場合。キッチンでは、扉を開けたり、収納棚の中のものを取り出したり、ものを運んだりするためのスペースも必要です。家族と一緒に料理をする場合には、さらにスペースがいります。
【通路幅の目安サイズ(一戸建ての場合)】
1人で調理する場合……80~90cm程度
家族や友人と一緒に調理する場合……104~120cm程度
つい大容量の冷蔵庫や、ストックがたくさん入る収納庫を置きたくなりますが、設置後に作業スペースが減ってしまうようでは、結局十分に活用できなくなってしまいます。
最近は奥行き60cm以下の薄型冷蔵庫も発売されていますので
- 収納家具の買い替えや家電の買い替えのタイミングでサイズダウンをする
- 家具や家電の配置換えをしてみる
などによりスペースの確保を検討してみましょう。
2.「あると便利」が障害になってない?
自由に移動できるキッチンワゴンに、足りない収納を補うための収納家具、大容量のゴミ箱など…。
いずれもあると便利なメリットも多い反面、動くたびに移動させないといけない、ものを取るときに必ず移動させないと取れない、作業スペースが狭くなり動きにくいなど、作業効率が悪くなるデメリットがたくさんあります。逆に、すぐ使うからといって、食材を床置きするのもお勧めできません。
なるべく造り付けの収納や冷蔵庫など最低限の収納に収まるように見直し、作業の障害になるものを減らすことも動線確保に繋がります。
3.作業の流れをイメージしながら配置する
調理の流れにはおおよそ共通のプロセスがありますよね。
- 冷蔵庫から食材を取り出す
- 調理器具を取り出す
- 食材を洗って切って加熱調理する
- 配膳する
- 下膳し食器を洗う
- 食器を食器棚に戻し、調味料や調理器具を戻す
このとき、右利きの場合は、ものを取る時や片づける時に右にものを配置すると使いやすく、効率も上がります。左利きの場合はその逆です。
特に作業の流れの順番を意識しながら、右利きは右回りに動けるように、左利きは左回りに動けるようにすると便利です。
ただし、1の動線確保が最優先ですから、叶わない場合もあるでしょう。動かすことが可能なものは動かしながら、ベストな配置を探るのもいいと思います。
4.動きやすくなる“ワークトライアングル”
効率的に作業ができるレイアウトは、コンロ・シンク・冷蔵庫の3点を結ぶ三角形の辺の合計が360~600cmといわれています。それぞれのサイズは以下のとおりです。
- シンク→コンロ間:120〜180cm
- コンロ→冷蔵庫間:120〜270cm
- 冷蔵庫→シンク間:120〜210cm
これに加えて、食器棚、ゴミ箱までの距離も遠すぎるのは考えもの。「使いにくいな」と感じたら、まず距離を測ってみて、適正な距離に移動させることを検討することをお勧めします。
5.何よりも大切なのは作業台のスペース確保
調理をするうえで一番重要となるのは、やはりワークトップの作業スペース。
ありがちなのが、調味料や調理器具、サランラップなどよく使うものをついワークスペース周辺に置いてしまうこと。「また使うから出しておく」が実は一番片づかない原因なのです。さらに、どんどんものが増える原因でもあります。
- 調理器具や消耗品は専用の収納場所を作り、使ったら元に戻す
- 調味料は注意書きをよく確認し、開封後冷蔵保存が必要なものは冷蔵庫に
- ほとんど使わない調味料は手放す
といったルールを心がけ、作業スペースを狭くしないように気をつけましょう。
また、突っ張り式の収納で空間収納を活用したり、水切りかごなど場所を取るもののサイズダウンを試みたり、コンロカバーなどを使用して作業スペースを確保することも可能です。
「狭い」「使いづらい」と感じたら見直しあるのみ。ぜひできることからやってみてください。
キッチンの動線確保のポイントまとめ
今回お伝えしたキッチンの動線確保に必要なポイントは以下のとおりです。
①動きやすい通路幅の確保をする
②あると便利なものを増やしすぎない
③利き手と作業の流れに応じたものや家具の配置にする
④コンロ、シンク、冷蔵庫の距離を短く
⑤ワークトップの作業スペース確保を必ず意識する
料理という家事は、食材に触れている時間だけではありません。調理前の準備や、食後の片付け、買い物の片付けや食材管理までの作業が、よりスムーズになることで家事にかかる時間も削減できます。
外出を控え家で過ごす時間が増えたこの時期に、一度キッチンの作業動線について考えてみてはいかがでしょうか?
文/瀧本真奈美