「空の巣症候群」とは、おもに育児が一段落して子供が進学・就職・結婚などで家を出たあとの母親が、一時的にでも寂しくて涙が止まらない、何もやる気が起きないなど、メンタルに不調をきたしてしまうことをいいます。
読者のみなさんはまだお子さんが生まれたばかりという人や、園児や小学生という人も多いかもしれません。でも、ふと気付けばあっという間に子どもは成長し、ある日親元を離れていきます。
その時に「空の巣症候群」にならないために、いまできることや知っておくべきことは何かあるのでしょうか?
先輩ママの体験談も参考に考えてみました。
空の巣症候群とは?シングルマザーはなりやすいってホント?
「空の巣症候群」は、1990年代から使われ始めた言葉で、一般的には「子育てが終わった後の母親(または父親)が、強い寂しさや喪失感を抱いたり、抑うつ状態になったりすること」とをいいます。
お子さんが進学や就職で家を離れる時期は女性では40~50代が多く、更年期も重なるためより心身がつらく感じられやすいといわれています。
「空の巣症候群」になりやすいのは、
- 真面目で家族のために自分を後回しにしてがんばってきた人
- 配偶者の転勤などで地元に親戚や知人が少ない人
- 個人的な趣味や活動を持たない人
- 子どもが巣立つと1人暮らしになる人
- 配偶者や同居の祖父母との関係が思わしくない人
などが多いとされます。
もちろん、転勤族やシングルマザーだからといって全員が「空の巣症候群」になるわけではありませんが、もしいくつかの条件が重なっているなら、将来に備えておいた方がより安心ですね。
先輩ママ談「メリットもあるよ!」
子どもが小さいうちは、一緒にいるときは四六時中子どものお世話や相手をして過ごし、「1日…いや1時間でいいから1人にしてー!」と願っているママも多いことでしょう。
しかし、子育ての終わりが見えてくると、急にさみしさや不安がこみ上げてくるという人も多くいます。
そこで、すでにお子さんが家を離れたママたちにいまの心境を教えてもらったところ、こんな答えが返ってきました。
「最初はもちろん寂しいですが、いいこともいっぱいですよ!家事は大幅にラクになり、毎日洗濯しなくてもいいし、若者の好きな揚げ物やお肉でなくても、自分や夫の好きな料理を作ればOK」(Fさん・53歳・お子さんは社会人と大学生)
「私はシングルマザーなのですが、やはり子どもが家から通学しているうちは、夕方は早めに帰宅して食事の用意をしたり、休みの日も子どもの予定に合わせて早起きしたりしていました。いまは出かけて何時に帰ってもいいし、コロナが落ち着けばフラッと遠方の友人を訪ねて旅に出ることも可能。身体が元気なうちに、自分のペースで好きなことができるのっていいですよ」(Oさん・58歳・お子さんは社会人)
「娘は大学入学と同時に他府県に下宿。最初は、忘れていった持ち物を手に取るだけでにぎやかだった日々を思い出しウルウルきていましたが…すぐに慣れました(笑)!ちょくちょく帰ってきますが、もちろん嬉しいけど、ペースも乱れるので、娘が下宿に戻ったあとはちょっとホッとしたりして」(Sさん・48歳・お子さんは大学生)
皆さん、意外とお子さんが巣立ったあとの暮らしをエンジョイしているようです。
いまからできる「空の巣症候群」対策は?
「空の巣症候群」といわれても、いまお子さんが小さい世代のママ・パパにとってはまだまだ先の話に思えます。
しかし、将来苦しい日々を送らずにすむために、今のうちからできることがあればやっておきたいですよね。
こちらも、お子さんが成人して自立したママに話を聞いてみたところ、皆さんいろいろなアドバイスをしてくれました。
「早めに趣味を持っておくのがおすすめですよ。習い事をするのも、少し月謝がかかりますが、それだけの値打ちはあるのでぜひ」(Jさん・57歳・お子さんは社会人と大学生)
人気の習い事は、ヨガや水泳・武道などのスポーツ系、楽器、語学、趣味なら釣り、農作業など。初心者でも周囲に教えるのが好きな人はたくさんいるので、交友関係も広がります。
「好きな歌手やアイドル、お芝居の俳優さんなど、若い子でいうと”推し”がいるのも、毎日イキイキ過ごせておすすめですよ!私は一部娘と好きなグループがかぶっているので、東京で待ち合わせしてステージに行くこともあります」(Aさん・49歳・お子さんは大学生)
「子どもが巣立って突然手持ち無沙汰にならないためにも、趣味や習い事の費用のためにも、仕事を続けておくのは大切ですよね」(Yさん・54歳・お子さんは社会人)
老後の仕事に役立つ可能性もある資格・検定に向けて勉強したり、人のために何かするのが好きな人は地域のボランティアを少しずつ始めるのもいいですね。
「ペットを飼うのもいいですよー!旅行には思い立ったときにフラッとは行けなくなりますが、ワンコたちのおかげで毎日ちっとも寂しくないです」(Iさん・54歳・お子さんは社会人)
おわりに
いまの50代は、昔と比べ、子どもの教育費と巣立ち、親世代の介護などが重なって負担が集中しやすいと言われています。
子育て中は忙しくてなかなかゆっくりと将来のことを考える余裕はありませんが、たまには「この子はいつ巣立っていくのかな」とシミュレーションし、「空の巣症候群」対策を考えておけるといいですね。
文/高谷みえこ
参考/日本女性心身医学会学術集会「成長した子供と母親との関係が女性の心身に与える影響 : 空の巣症候群(ワークショップ : 現代の家族関係が女性の心身に与える影響)」 https://ci.nii.ac.jp/naid/110004012609