2020年12月、文部科学大臣の会見でこれまで40人だった小学校のクラスの上限人数を全国で35人以下に引き下げることが発表されました。

 

すでに小学校1年生のみ2011年度から35人になっていましたが、今後は2年生、3年生…と順に35人に移行していき、2025年には全学年が35人以下学級になります。

 

全校レベルでの上限人数引き下げは40年ぶりだということです。

 

これに対し、現場からはさまざまな声が上がっています。

 

今回は小学生のお子さんがいるママの声もまじえ、現状や課題について考えてみたいと思います。

いま、全国の小学校は1クラス何人?

ニュースでは「長年叫ばれてきた少人数化がやっと実現」と報道されていますが、実際のところ、全国では小学校の1クラスの人数はどうなっているのでしょうか?

 

文部科学省の資料をみると、令和元年の一学級当たりの児童数は「23.3人」となっています。

 

「え?35人よりずっと少ないけど?」

 

と不思議に思うかもしれませんが、この数字は全国の平均であり、過疎化が進んで1クラス5~6人しかいない小学校もすべて含まれています。

 

反対に、東京・神奈川・大阪などの都市部には1クラス36人を超える学校が点在しています。

 

しかし、実は、すでに独自に予算を組んで1クラス35人以下を実現している自治体も数多く、今回の改正で1クラスの上限が40人から35人に変わる対象の小学校は全体の8.3%しか存在しないそう。

 

ニュースを見て、

 

「うちの子の学校、前から全学年35人以下だけど…今頃?」

 

と不思議に思った人も多いと思います。

 

もともと学年の人数が35人以下という場合をのぞいては、それは先行して35人(または30人など)の学級を実現している自治体に住んでいるからです。

35人学級に期待される効果と課題

実は以前から、小学校や中学校のクラスは35人どころではなく30人以下が望ましいと言われ続けていました。

 

理由は以下のように考えられています。

 

  • 貧困・虐待・発達障害などにより手厚い支援が必要な子どもが増えているから
  • 「GIGAスクール構想」で、1人1台のパソコンやタブレット端末を使うにあたって、きめ細かな指導が必要だから
  • クラス数が多い方が、クラス替えを機にトラブルや人間関係のこじれをリセットしやすいから
  • 公立学校の教師の負担を減らさなければますます希望者が減り、今後の公教育の維持が危うくなるから など

 

クラスの人数が減ることで、先生たちがより1人1人の子どもとていねいに向き合い、いじめや学習のつまずきにも早く対処できるようになれば、子どもたちへのプラスの効果は大きいと思われます。

 

しかし、今回、予算不足と「クラスの人数を減らしても効果はないか、小さいと思われる」という理由で30人学級は実現せず、35人で決着する形になりました。

 

ちなみに海外の公立小学校の人数を見てみると、北欧諸国ではおおむね20~25人、ドイツ25人、OECD(先進国34か国)の平均は21人となっています。

 

また格差社会の進むアメリカやイギリスでは、高額な学費を払って少人数制の私立学校に通うか、慢性的な教員不足で学習環境がじゅうぶん整っていない公立学校に通うかの2択になっているといいます。

35人学級、ママたちの反応は?

このニュースについてどう思うか、小学生のお子さんがいるママにたずねてみたところ、現在の状況によって色々な答えが返ってきました。

 

神奈川県に住むTさん(38歳・4年生と2年生のママ)は、

 

「10年ほど前、学区にタワーマンションが2つもできて、そのファミリーのお子さんたちが入学したあたりから定員の40人いっぱいいっぱいに。先生の手が回らなくて学級崩壊になったクラスもあるみたいだし、参観のあとに先生とちょっと話したくても順番待ちのような状況なので、3クラスが4クラスに分散してくれれば助かります!」

 

と喜んでいました。しかし、同時にこんな疑問も。

 

「それはいいんですけど…教室、足りなくない?って思います。プレハブでも建てるんですかね?」

 

過去に小学校の講師経験のあるMさん(41歳・5年生のママ)は、経験者ならではの心配もあるそうです。

 

「段階的に教員を増やすそうですが、そんなに担任のつとまる先生って確保できるのかな?と心配しています。もし、人手が足りなくなって、日頃サポートに入ってくれている講師の先生や、全体のフォローをしてくれる教務の先生まで担任に駆り出されたら、それはそれで手薄になりそうですよね」

おわりに

今回の対象となる小学校は約8%とはいえ、すべての子どもたちが少しでもいい環境で過ごせるよう整えていくのは大切です。

 

また、子どもたちが思春期に入る中学校でも、1クラスの人数を減らし先生の人数が増えてよりきめ細かいケアが実現してほしいと思います。

 

私たち親も「ベストな人数は何人くらいなのか」をときどき見直してみたいですね。

 

文/高谷みえこ

参考/萩生田光一文部科学大臣記者会見録-予算-(令和2年12月17日):文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/mext_00121.html
学校基本調査-令和元年度結果の概要- https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/kekka/k_detail/1419591_00001.htm
学校基本調査 令和2年度(速報) https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00400001&tstat=000001011528&cycle=0&tclass1=000001143426&tclass2=000001143434&tclass3=000001143435&tclass4=000001143439&tclass5val=0