中学生のトニーニョくん(15歳)と3人で暮らす、漫画家の小栗左多里さんと外国人の夫・トニーさん。

 

夫婦で子育てをしていくなかで「異文化で育った者同士はどうやったら折り合えるのか?」と試行錯誤した経験から感じたことを、それぞれ語っていただきました。

 

今回のテーマは「ベビーシッター」。ベルリンでトニーニョくんのベビーシッターを雇った経験について、小栗さんが述懐します。日本だと敷居が高いイメージですが、海外のベビーシッターは想像していたのとだいぶ違ったようです!

 

息子のベビーシッターは意外な人物!?日本にもこんな人がいたらいいのに

ベルリンでベビーシッターを頼もうと思ったのは、トニーニョのドイツ語力向上のためもあった。ベビーシッターといっても、小1の彼を学校から家まで送ってもらう間にドイツ語で話をしてもらい、 途中の電車の中ではドイツ語の本を読んでもらうという、半分家庭教師。週2回頼むとすれば、日本ならかなりの額になってしまっただろう。

 

しかし、息子の学校には私たちの強い味方がいた。「同じ学校の家庭でバイトしたい生徒リスト」である。 名前・学年・受けられる仕事・希望する時給が表になっている。仕事はベビーシッターのほか、ペンキ塗りや掃除のお手伝いなど。時給は相場より安くて、だいたい7ユーロ(約800円)。頼もうと思っていたお迎えは、1時間あれば余裕である。

 

私は「なにこれ最高!助かるー!」とすでに頼む気満々。しかしトニーは「いいね。でも選ぶのは慎重にしないとね」と静かに言った。いやいや、頼むことになるでしょーって思ったけど、瞬時に渋い声で「だよね」と同意しておいた。

 

同じ学校の生徒にシッターを頼めるメリットは多い!

小学校から高校まであるので、下は小学3年生くらいから登録者がいる。ナイスファイト。さすがに小3(時給5ユーロ)にはまかせられず、高校生を中心にリストを眺めた。そのリスト担当の先生に相談して一人にしぼり、慎重な夫はさらに「まず顔合わせしよう」と、私と高校生の彼と、彼の母親にも来てもらってカフェで話をした。家も近いし、彼も母親も感じがいい、ということで正式に頼んだ。 向こうの親にとっても、依頼者の顔が見えたのはよかったんじゃないかと思う。

 

 

一応、最初から「同じ学校内」というのが安心材料ではある。親も子もなんとなくつながっているので、 お互い評判が聞けるし、抑止力になっている気がする。慎重にはなるべきだけど、ある程度の信頼があるからこそ、小3の子供をリストに載せていいと思う親もいるのだろう。心配であれば、外での作業に限定するとか調整できるだろうし、そもそも小学生のバイトというのは頼む方も、その子の「社会経験」への協力という意味合いが強いのだと思う。

 

昔ながらの「子守」が今の時代にもあるといい

私もかつて知り合いにめんどうをみてもらった子どもだった。祖母の幼なじみのおばあちゃん(といっても当時50代)に、私たち兄弟といとこたちまでお世話してもらった。お金を払っていたとはいえ、私たち一家にとっては「親戚のおばあちゃん」だった。大きくなってからもよく会っていて、トニーニョとも遊んでもらえた。

 

小学校低学年の頃には、ご近所の女子中学生がシッター(当時の言葉で「子守」)として来ていた。お礼はお昼ご飯とお小遣いだったらしい。こういう「町内のお姉さん」にちょっとめんどうをみてもらったこと、 昔の田舎では割とあったのではないだろうか。

 

今の日本だと、講習など受けた子育てサポーターにお願いできるのもいいなあと思う。頼れる人や場所があって、その負担が少なめなら、なおいい。もし息子がもう少し大きくなってシッターのバイトをするなら、ふんだんにコツを教えたい。そのお礼にお昼ご飯をおごってもらおう。

 

 

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文・イラスト/小栗左多里