子供の食事は、小さいうちは気分や食欲にムラがあり、たくさん残してしまう日もありますよね。
手をつけずに残した料理はそのまま次の食事へ回すことも可能ですが、ひと口かじったり、フォークやスプーンでかき回したあとの食べ残しは、もったいないけど捨てるべきか、親が食べるべきか…迷ってしまうのではないでしょうか。
そこで今回は、ママ50人にアンケートを実施し、食べるか捨てるかを教えてもらいました。
すると、「捨てる」派の意見のなかには、思わず「たしかに…!」とうなずいてしまうような理由もあったのです。
ママたちの体験談とともに、その理由を紹介します。
子供の食べ残し、「食べる」VS「捨てる」ママが半々
今回、0歳から7歳のお子さんを持つママ50人に、「お子さんの残した食事はママやパパが食べますか?」と聞いてみたところ、回答は以下のように分かれました。
- 全部食べる…13人
- おおむね食べる…10人
- たまに食べる…6人
- ほとんど捨てる…12人
- 毎回捨てる…9人
「全部食べる」と「おおむね食べる」を合わせて23人、「ほとんど捨てる」と「毎回捨てる」を合わせて21人と、ほぼ同じくらいの人数となりました。
「食べる」派のママのあげた理由は次のようなもの。
- せっかく作った料理と食材がもったいないから
- 自分自身が「食べ物を粗末にしてはいけない」と育てられたため
- 子どもに食べムラがあるので、最初から親が残りを食べることを前提にしている
- 子供には食べ物を残さない子になってほしいからお手本として など
どれもうなずけるものばかりですが、「食べない」派の理由も聞いてみると、「その発想はなかった…!」と、はっとするような意見もありました。
その一部を紹介したいと思います。
子供の食べ残しを捨てる派が「食べない」理由
1.肥満のリスク
子供がごはんを食べ残したとき、ママやパパがまだお腹が空いていて、通常の食事としてそれを食べる分には問題ないのですが、もう満腹にもかかわらず「もったいない」という理由だけで食べるのは生活習慣病や肥満の原因になりかねません。
そういった食べ過ぎを未然に防ぐために、次のような対策をしている人も。
「食が細く、食べられない日は本当に少ししか食べないので、いつもごはんレンゲ1杯、おかずもおちょこ1杯程度でスタートしてます。その日の調子でもっと食べたいなら同じ量ずつ追加します」(Fさん・30歳・3歳児のママ)
自宅では、少量ずつおかわりさせることで、達成感を感じさせつつ、食べ残しを出さない工夫をしている人が多いようです。
ただ、外食や祖父母宅などではかなり苦労している人も。
「外食は基本私の取り分けで、1人1品注文必須の店は入らないようにしています。ただ、取り分け前提なので、せっかくの外食でも、うどんなど、子ども向けのメニューしか注文できないのが残念です…」(Iさん・34歳・2歳児のママ)
「私はわが子でもやはり食べ残しを食べるのに抵抗があるので、家では残させないように工夫しつつ、どうしてもムリな時は捨てています。ただ、夫の実家では、義母が腕を振るった料理を捨てるわけにいかないので、夫と私で手分けして食べきるようにしています。正直、非常に辛いです」(Kさん・32歳・3歳児のママ)
「義実家や知人宅で、初めてのものは、出してもらっても一口食べて残す可能性があるので、食べる前に私に確認するよう子供に言ってあります」(Yさん・35歳・4歳児のママ)
なお、ここで注意しておきたいのは、あくまでも「子どもの食べ残しをやむを得ず食べて太る」のが問題だということ。
それとは関係なく、食べたい時においしく食べた結果ぽっちゃりしているというのは、健康であれば何も問題ありません。やせているのが正しく、太っている人はダメ…というわけではないからです。
2.自己肯定感への影響を考えて
Tさん(31歳・5歳児のママ)は、離乳食が始まった当初は「食べ物を捨てるのは悪いこと」という意識が強かったため、子どもの食べ残しをいつも食べていたといいます。
「でも、気付かないうちにストレスを感じていたのかも。子どもが2歳になる頃、残飯を食べきるために自分の食事を抜いてスタンバイしている私ってなに?とふと思ったんです」
「また同じ頃、ぐちゃぐちゃの食べ残しばかり食べ続けていると、自分がそれにふさわしい人間だと脳がとらえてしまう…という話を聞いて、思い当たるふしがありました。その頃は食事のたびにゆううつな気分で、子どもが完食できないような料理しか作れない自分に罰を与えるために、ぐちゃぐちゃの食べ残しを食べているような気持ちになっていました」
「これでは自己肯定感が下がるばかりだと思いました。それで、できるだけ食べ残しを出さないように子どもの様子を見たり励まして食べさせたりしつつ、どうしても残ったら、子どもと一緒に食材にごめんなさいと謝ってから捨てるように切り替えました」
Tさんは今ではおいしく自分の分を用意して食べていて、自己肯定感が低下して辛い気持ちになることはないそうです。
3.体調不良や感染症を防ぐため
子供はもともと食べる量にムラがあるのが当たり前。
でも、特に食が進まないのは、体調不良の前触れである可能性も高いですよね。
子どもの食べ残しに付着した唾液などを介してママが病気にかかってしまうと、本人が辛いばかりか子どもの看病や家事もできなくなりかねません。
「食べ物を粗末にしない」という姿勢は素晴らしいこと。
でも、罪悪感と感染のリスク、どちらが家族にとって避けるべきものなのか…と、一度考えてみてもいいのかもしれません。
ちなみに、子どもが集団生活で感染しやすい菌やウイルスには次のようなものがあります。
- 風邪
- 胃腸炎
- ヘルパンギーナ
- 手足口病
- インフルエンザ
- サイトメガロウイルス
- RSウイルス
- ヒトメタニューモウイルス
- 溶連菌 など
上記のうち、「サイトメガロウイルス」は、ほとんどの人が抗体を持っていますが、最近、少しずつ抗体のない人が増えているともいわれます。
妊娠中に初めてこのウイルスに感染した場合、赤ちゃんに難聴や脳障害を引き起こす可能性があるといいます。
抗体の有無は検査で分かりますが、なかなか検査に行けないような場合、2人目・3人目の妊娠中は念のため上の子の食べ残しを食べるのを控えた方が安心ですね。
4.見た人が不快にならないようTPOを考える
「家ではいつも子どもの食べ残しを食べているけれど、知人宅などでは食べません」と話すSさん。
意外に思うかもしれませんが、そこには次のような理由があるといいます。
「昔は変人扱いされていた潔癖症も、今は、本人も困っているから寄り添って改善するように変わってきましたし、他人の握ったおにぎりが食べられない人もいますよね。いくら親子とはいえ、子供のツバがついてぐちゃぐちゃになった料理を食べる様子を見て、気持ち悪い・不快と感じる人もけっこう多いのではないかと思います」
そこでSさんは、
「もう食べられないの?じゃあお母さんが食べようかなと言ってみて、相手の様子をうかがってみます。平気な人は何も言いませんし、苦手な人は、食べなくていいよ、残しておいてね!と言ってくれるので、それによって判断しています」
こんな風に、さりげなく相手を不快にさせない配慮ができるとステキですね。
食べ残しを捨てるときの子供への伝え方
とはいえ、「やっぱり食べ物を捨てるなんて、教育に良くないのでは…」と心配な人も多いのではないでしょうか。
今回話を聞かせてくれたママたちも、
「食材や関わった人たちに申し訳ないという気持ちを持てる子に育てたいので、捨てる時には必ず親子でごめんなさいと一緒に手を合わせるようにしています」(Mさん・36歳・5歳児のママ)
「今日はママもたくさんよそっちゃったけど、次は少しにするから、残さないようにしようねと声をかけます」(Aさん・37歳・6歳児と3歳児のママ)
「食事を残してデザートやジュース、というのは絶対に許可しません。あくまでも、お腹がいっぱいの時はムリしないということなので」(Nさん・33歳・3歳児のママ)
など、残したからといって簡単に捨てておしまい、という人は見られませんでした。
考え方はそれぞれ。家庭にとってベストな選択を
「もったいない」はすばらしい精神ですが、絶対に食べ残しを出さないという固定観念によってママの心身に悪い影響を及ぼしては本末転倒です。
ふだん子どもの食べ残しを食べる派の人も捨てる派の人も、今回の記事も参考に、ベストな対応は何か、いちど見直してみてはいかがでしょうか。
※本記事は、医療機関や公的機関が発表している資料に基づいた一般的な知識を紹介しており、医師の診察にかわるものではありません。
文/高谷みえこ