変化が激しく、先の予測が難しい今の時代。「自分の軸を持てる子になってほしい」と望む保護者は多いはず。最近は「褒めて自信を持たせよう」という風潮がありますが、褒めるだけで自信は身につくのでしょうか?
こころの幸せ教育研究・実践者であり、一般社団法人heARTfulness for living協会代表理事の戸塚真理奈さんは、「自信は外から与えられるものではありません。感情に向き合うことで、自分軸は形成されていきます」と言います。
マインドフルネス(=今この瞬間の自分の内と外にしっかりと意識を向けている状態)の考えを活かした、自分軸を育むためのコミュニケーション術とは?
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コロナ疲れの子どもの心を守り整える1分呼吸法」に続き、子ども向けマインドフルネス教室を主宰する戸塚さんに「自信の育て方」について伺います。
「褒め育て」にはリスクもある
——変化がめまぐるしい時代だからこそ、「自分の軸を持てる子になってほしい」と望む保護者は多いです。どうすればそう育てられると思いますか。
戸塚さん:
今現在、子育てをしている世代のほとんどの方は「自分の感情の向き合い方」や「自分軸をつくる」方法について、誰にも何も教わらないまま、社会に出て大人になっていったように思います。
学校や社会で用意された課題に向き合い、それを何とかこなし、また次の課題に向かう…。そういった繰り返しで人生経験を積んできた人がきっと多数派ではないでしょうか。私自身もそうでした。
「自分は何のために働くんだろう?」「どういう人生を送りたいのか」という心の声に耳を傾ける機会がないまま、日々を過ごす。親の価値観や世間の判断基準に合わせて、人生を選択する。期待に応えたり、評価を受けたりすることを目的に置く…。そういうことを繰り返していくと、次第に自分の感情が見えなくなってしまうんですね。
そうなると、やりたいことも見つからないし、いつまで経っても自分に自信が持てない。不安を抱えた状態からも抜け出せません。
自信は外から与えられるものではない
——親が積極的に「褒めて育てる」ことで、子どもに自信を持たせる、という考え方もありますが、どう思われますか。
戸塚さん:
もちろん、子どもを愛情を持ってきちんと褒めてあげるのは大事なこと。
ただ、子どもは親が思っている以上に賢いんですね。たとえば、「絵を描くとお母さんが『やっぱり私に似て図工が好きなのね』と喜ぶし、褒められるから頑張ろう」という発想に走ってしまう子は少なくありません。
そういった子たちは、自分の「好き」や「楽しい」を優先させるのではなく、「これをすれば親に褒められる」「喜ばせてあげられる」という思考回路に沿って行動してしまうんです。
——親の好き嫌いや価値観が、言動からにじみ出て影響を与えてしまうんですね。では、具体的にどう接すれば「自分に自信がある子」になれるのでしょうか。
戸塚さん:
自信は外から与えられるものではなく、自分の中で育むものです。そのためには、自分の心を見つめて、不安や悲しみ、怒りというネガティブ感情と上手に付き合っていく術や、自分で自分を褒めたり認めたり励ましたりといった感情知性(EQ)を伸ばしていくことが大切です。
自分発で集中力を高めたり、リラックスして安心したり、モチベーションをアップさせたり、自分や他者を励ます。これらのことは、欧米では現代の子どもに必要なメンタルトレーニングとして、いまや公立小学校などで広く浸透してきていますし、ファミリーでも実践できるんですよ。
… そこで次ページでは、戸塚さんの新刊『感情の知性(EQ)を伸ばす 学校と家庭でマインドフルネス! 1分からこころの幸せ・安心を育む63のワーク』(学事出版)から、子どもの自己肯定感&モチベーションを上げるためのマインドフルネスのワークを教えてもらいます。