新型コロナウイルスの影響により激動の一年となった今年、社会全体で最もフォーカスされているキーワードといえば「サスティナブル(=持続可能な)」。化粧品業界でも、パッケージや使う原料を環境に負荷をかけないものに変えるなど、社会的に持続可能な取り組みを行うムーブメントが起きています。
オーガニックコスメだけでなく、化粧品業界全体が「サスティナブル」な方向へ舵を切っており、今後、製品を選ぶ上でも重要なポイントになるでしょう。
そんな背景を踏まえ、今注目の「サスティナブル・ブランド」とその取り組みについてご紹介します。
5000年の歴史を誇る伝統医療「アーユルヴェーダ」を気軽に
「アーユルヴェーダ」という、インド・スリランカで古くから引き継がれている伝統医療をご存じでしょうか。空、風、火、水、地という5つのエネルギーをもとに、人をヴァータ、ピッタ、カパという3つの本質に分類し、その性質に合った過ごし方や、食べ方、ケアの方法などを教えてくれます。
この考えを取り入れたコスメブランドとして、2人の女性の手によって誕生したのが「アーユルヴィスト」です。
立ち上げのきっかけは2人の女性同士の“体が求めるものへの共感”
ブランドを立ち上げたのは、田口麻利子さん(写真右)、三野村なつめさん(写真左)。主に商品開発を田口さんが、PRを三野村さんが担当しています。2人は学生時代からの友人で、もともと田口さんはコスメ業界に、三野村さんはコピーライターとして広告業界で活躍していました。
当時の三野村さんはかなりのハードワーカーで、激務が続いたある日突然、難聴に…。たまたま友人だった日本人初の男性アーユルヴェーダ・ドクターに相談したところ、「それはヴァータが上がっているから、このオイルでケアして、スパイスはこれをとって…」などと教えられたのだそう。あまりに簡単なことばかりだったのですぐに実践したところ、とても自分に合っていて驚いたと言います。
体調はみるみるうちに回復。そのことをきっかけに、2人でスクールに通い、資格を取得しました。アーユルヴェーダが息づくインドやスリランカを数回訪れたことも。そこで、「アーユルヴェーダをもっと日常に取り入れられるコスメがあったら」という思いに至り、アーユルヴィストを設立。今や、コスメだけでなく、食についても発信するライフスタイルブランドとしても注目されています。
奥深く複雑なアールユヴェーダをとにかく手軽に!
筆者も、アーユルヴェーダのホリスティックな考え方に共感し、生活にヨガやマッサージなどを取り入れています。ただ、アーユルヴェーダでは、時間帯や季節によってもその性質が変わるとされ、その性質をリセットするためにどういうハーブを使ったら良いか、食べる素材など細かい区分やケアの方法があり、奥深く、複雑な面もあります。
「アーユルヴィスト」では、「アーユルヴェーダを気軽に毎日へ」をコンセプトに掲げ、わかりやすく説きながら、日常に取り入れやすいプロダクトを開発。
三野村さんは、「ただアーユルヴェーダの考えをコスメとして商品化するだけでなく、忙しく暮らす女性にストレスなく使っていただけるよう、使いやすさにもこだわり抜いています」と話してくれました。
継続しやすい形状で開発された「アビヤンガ」ウォッシュ
5000年という間に積み上げられてきた叡智を、わかりやすく、そして手に取りやすいものを提案してくれるコスメティクスシリーズ「アーユルヴィスト」。最初に登場したのが、オイルでマッサージしながら全身を洗い上げる「アビヤンガボディウォッシュ」です。
これは、アーユルヴェーダにおいて、おすすめしているオイルマッサージ“アビヤンガ”の考え方を気軽に使えるように開発したもの。オイルマッサージを毎日、となるとハードルが高いけれど、毎日入るお風呂でなら継続できるのでは、という思いから生まれたそう。
成分には、アーユルヴェーダで実際に使われているニーム、ゴツコラ、ザクロ、アムラなど9種類のハーブを配合し、植物&天然由来97%を実現。鉱物油、石油系洗浄成分、パラベン、合成香料、合成着色料、アルコールフリー。
赤ちゃんでも使えるほどの優しい洗い上がりが特徴で、その日の疲れを一緒に洗い流してくれるような、癒やしの力とパワフルさがあります。
イランイランやベルガモットなどをブレンドしたオリジナルアロマもとても心地いい!おすすめの使い方は、リンパを流したり、コリをほぐすようにマッサージすること。そのまま深い睡眠に導いてくれます。
「自然と共生」するアーユルヴェーダの教えに基づいた製品開発を
製品開発は、一つひとつ丁寧に、そして環境のことを考えながら行われています。「“自然とともに生きる”ことを大切にするアーユルヴェーダの教えのもと、製品は生分解性できるものにしています」と三野村さん。水に流しても環境を汚すことはないと言います。また、今年11月からは「アビヤンガボディウォッシュ」の容器を皮切りに、他の製品も100%PET再生に切り替えることが決定しているそう。
「非動物実験も徹底しています。使う人はもちろん、使わない人にも、そしてこれからの未来までも心地よく…という考え方を、これからも大切にしていきたいと思っています」
取材・文/久保直子 撮影/清永 洋