ある日とつぜん「お子さんが店の品物を万引きしたので来て下さい」という電話がかかってきたら…あなたはどうしますか?

 

今回は、小学生の万引きについて、その理由や心理、どう謝罪する・させるべきか、二度とさせないためには子どもにどう伝えるべきかなどを考えていきます。

近年、小学生の万引きが増えているって本当?

警視庁の「万引きに関する調査研究報告書(令和元年度版)」によると、小・中・高の「少年」による万引きは年々減っていて、2011年に4300件以上だったのが、その後10年で1600件足らずになったそうです。

 

ところが、検挙数が減ったのはおもに中高生。

 

背景には、かつて学校や家庭が困難な状況の子は万引きをはじめとしたいわゆる「非行」に走っていたのが、スマホの普及によりSNSなどを通じて居場所ができたことなどがあると考えられています。

 

一方、小学生の万引き件数はこの10年間ほとんど減ることがなく、2016年には中学生よりも多くなり、全体の約1/3を占めています。

 

もっとも、中高生(場合によっては小学校高学年から)では手口が巧妙になり、組織的に万引きを行うこともあるため、小学生と比べて見つかりにくいとも言われており、上記のデータは必ずしも実際の万引き件数と一致しているとは限りません。

 

とはいえ、同じ調査では、東京都の小学生の保護者300人のうち「子供が万引きをしたことがある」と回答した人の割合は16人(全体の5%)とあります。

 

2018年に東京都内で万引きで補導された小学生は489人(全体の0.08%)ですが、記録に残っている件数に対して、実際に万引きした子の数は約60倍以上もいる可能性が。

 

さらに、親が気づいていないケースも含めるともっと多くても不思議ではありません。

 

誰しも「うちの子には絶対に関係ない」とは言いきれないのではないでしょうか。

小学生が万引きしてしまう心理と理由

小学生が万引きしてしまう背景には、どのような理由や心理があるのでしょう。

ただ欲しかったから

中高生ではスリルを求めて万引きする子も多いとされていますが、小学生の万引きで多いのは、単純に「それが欲しかったから」「タダで手に入るのが得な気がした」などが多いといわれます。

 

ふと欲しくなり、社会的規範を守れずに取ってしまうことを「できごころ」とも言いますね。

 

ただし中には上級生やクラスの子に強制されている、または集団での万引きに加わらないといじめられる…といった可能性もあるので、まずは確認が必要です。

 

そのほかには、次のような理由、心理が考えられます。

おこづかいがたりない

家庭のルールが厳しすぎる・おこづかいが極端に少ないなどの理由で、遊びに集合するときみんな駄菓子を買ってきているのに自分だけ買えない、カードゲーム用カードやデッキを親に頼んでも買ってもらえない…などの理由で万引きしてしまうことがあります。

夢中になれることがない・少ない

スポーツや習い事で充実しているとそれを中心に日々が過ぎていきますが、本人の気が進まない塾通いや、遊び相手がいなくて1人で過ごしている時間が長いと、ふとしたきっかけで万引きを意識してしまうこともあります。

精神的な負担、ストレス

環境が大きく変わった、家庭内や学校での人間関係がよくない、など、子供にとってショックな出来事があったり、ストレスが大きい場合に万引きにつながるケースもあります。

 

もちろん、おこづかいが少ない子や複雑な家庭環境の子が必ず万引きをする…というわけではありません。

 

上記の調査でも、世帯の収入など経済面と子どもの万引きには関連性がないことがわかっています。

 

いくつかの要素が重なったときに、その子によっては、思わず自律のタガが外れてしまう瞬間があるということですね。

 

なお、小学生よりは青年~大人に多いですが、どれだけ気をつけても、どうしても万引きを繰り返してしまう「クレプトマニア(窃盗症)」という心の病もあります。

 

この場合、親がやめさせようとして暴力がエスカレートすれば子供の精神の安定や命に関わることもあるため、親子だけで抱え込まずに、自治体や学校など支援窓口を通じて、専門機関への相談・受診が必要です。

万引きをしたお店への謝罪はどうするのがベスト?

もし、わが子が万引きをしたという連絡があったり、家でそのことを知ってしまったら…。

 

親としては頭が真っ白になってしまうかもしれませんが、まずは何からどうすればいいのでしょうか。

まずはお店へ親子で謝罪

小学生の万引きで特に多いのは「お菓子」で、場所はコンビニが最も多いそうです。

 

お菓子とはいえ、万引きは刑法でいうと「窃盗罪」にあたる犯罪です。

 

まずは被害を及ぼしてしまったお店への謝罪が最優先。

 

できれば仕事を早退してでも両親で行ければベストですが、シングルマザー/ファーザー、単身赴任などで両親が行けないこともあるはず。少なくとも、子どもと親のどちらかが一緒に謝罪にいくことが大前提です。

 

代金を弁償して親子で誠心誠意頭を下げ、罪を犯したときの姿勢を見せるのが基本です。

万引きをくり返さないために…子供への伝え方

次に、子どもにもう二度と万引きしないよう話さなければいけませんが、それにはいくつかのポイントがあります。

「欲しかったからつい…」という子には

正直に「欲しかったから…」と子どもが言ったときに、感情的に怒鳴ったり叩いたりするのはNGです。

 

出来心からはじめて万引きをしてしまったという場合でも、小学生ならほとんどの子は「欲しいからといって取るのはダメ」と分かっています。

 

「正直に言えばよけいに叱られる」「今後は本音を隠しておこう」とならないよう、いったんその事実は冷静に受け止め、それでも万引きがダメな理由を伝えていきましょう。

お金の重みが分かっていないとき

もし子どもがお金を払わずにモノが手に入ることを快感に感じているようすなら、

 

「このお菓子は100円だけど、お店の人がお金を払って仕入れている」 「同じお菓子が何個も何個も売れて、やっと1個分が買えるくらいのお金がお店に入ってくる」 「働いている人のお給料や、お店の電気代、税金なんかも、ぜんぶこのお菓子代が積み重なってやっと払える」 「あなたががんばって働いたお金で仕入れた商品を、誰かが黙って持って行っちゃったら困るよね?」

 

などと話して理解させるのも有効です。

「やったことは悪い、でもあなたは愛してる」と伝える

もちろん万引きは絶対にやってはいけないこと。

 

ただ、子どもがやったことと、子どもへの愛情はまったく別次元の話です。

 

反省を促すために「そんな子はもう知らない!出て行け」等と言うのではなく、

 

「悪いことは悪いから全力で叱る、でもあなたを見捨てたりはしない」

 

「いいことをした時も、悪いことをした時も、あなたのことは大好き、大切な子ども」

 

とはっきり伝え、手を握り目を見て真剣に「この手を悪いことに使わないでね」と話しましょう。

自分や子どもを否定せずに対応を

子どもが万引きしたのを知ったとき、「育て方が悪かった」「愛情不足」と自分を責めてしまう人もいると思います。

 

もちろん子どもへの接し方を見直すのはとても良いことですが、ベストを尽くしていても、ふとしたきっかけでどの子が万引きしてしまっても不思議ではありません。

 

自分や子どもを否定せず、相談できる相手にも頼りながら対応できるといいですね。

 

うちはまったくそんな心配はないという人も、他人事と思わず「もし…」と考えてみるきっかけになれば幸いです。

 

文/高谷みえこ

参考/警視庁「万引きに関する調査研究報告書~小学生の万引きに着目した意識調査及び万引き被疑者等に関する実態調査~」 https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/anzen/manbiki/hokokusyo.files/R1_10.pdf

万引きがやめられない「クレプトマニア(窃盗症)」 対応と治療 - 記事 | NHK ハートネット https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/24/#:~:text=%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%97%E3%83%88%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%82%A2%EF%BC%88%E7%97%85%E7%9A%84%E7%AA%83%E7%9B%97%E3%80%81%E7%AA%83%E7%9B%97%E7%97%87%EF%BC%89%E3%81%A8%E3%81%AF%E4%B8%87%E5%BC%95%E3%81%8D,%E8%80%85%E3%82%82%E5%87%BA%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82