2020年、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、多くの企業・職場がテレワークやリモートワークを導入。

 

フルリモートや在宅勤務と出勤を組み合わせるなど、新しい働き方に変わった人も多いのではないでしょうか。

 

しかし、テレワーク急増の影でひそかに問題になっているのが、画面を通じたさまざまなハラスメント。「テレハラ」「リモハラ」などとも呼ばれています。

 

今回は、外から見えないだけに明るみに出ないことも多い、オンラインでのハラスメントの例を紹介。自分が実際にハラスメントに遭ってしまったときの対応なども考えてみます。

 

ママたちの「オンラインハラスメント」体験談

2020年6月、全国のテレワーク経験がある男女1000人を対象に行われたアンケート調査では、テレワークでストレス等を感じたり、困ったことはあるかという問いに対して51%と、過半数の人が「ある」と回答。

 

さらにその半数以上の人が「オンライン会議」の時にストレスを感じていたことがわかりました。

 

具体的なストレスの例としては、

 

  • 一言で終わることなのに、いちいち「オンライン会議で話そう」と時間を取られる
  • カメラなしで参加したいのに、カメラをONにするよう指示・強制される
  • 画面に映り込んだ自分の部屋などプライベートを見られる
  • 他人のプライベートも見たくないのに見えてしまう
  • 周囲の目がないためか、必要以上に乱暴な言葉で叱責したり、なれなれしく話す

 

などがあげられました。

 

また、実際にオンライン会議で嫌な思いをしたというママたちに取材したところ、

 

「育休が終わり出社した直後に緊急事態宣言で登園自粛。保育園に預けられず、テレワークでの復帰となりました。あるとき上司がオンライン会議の開催時間について希望を聞いてくれたのはいいのですが…”まだその…ほら、オッパイの時間とか…あるんだよね?”とニヤニヤ。気持ち悪くて!」(Sさん・30歳・0歳児のママ)

 

「仕事の進捗は一日の終わりにまとめてメールで報告することに決まっていて、とくに急ぎで打ち合わせや確認が必要な件のみ、電話やWEB会議で行います。なのに、私の部署は上司が独自の取り組みと称し、午前に1回・午後に1回など頻繁に回線をつないで1対1で進捗報告させるんですよ。最初は、そんなに私のことサボっていると疑ってるの?と不快でしたが、今では、この人は他に仕事がないんだな…とみんな気づいてます」(Hさん・37歳・小学2年生と4歳児のママ)

 

「私ではなく夫の上司の話です。夫婦ともテレワークですが、自宅マンションが狭く、会議などで占有できるのは1部屋だけ。その日は私が社内ではなく顧客とのオンライン打ち合わせだったので、夫が子どもの面倒を見ながらリビングで仕事をしていました。そこに、夫の上司が聞きたいことがあるとWEB会議をスタートさせ、途中、子どもがうるさいから嫁さんを呼んで静かにさせろ!と言ってきたそうです。夫は、妻は商談中なので不可能ですと答えてくれたそうですが…その上司はきっと共働きではないのでしょうね」(Tさん・34歳・3歳児のママ)

 

など、思わず呆れてしまうような体験談が寄せられました。

 

育休復帰ママも注意!使い方をおさらい

2020年は、育休復帰時期としてもっとも多い4月の時点で国の外出自粛要請が出されていたため、育休復帰を延長したママも多かったことと思います。

 

関連記事:コロナの影響で育休延長した人は今、どうなっている?

 

そこへ、通常とは異なるテレワーク・リモートワークが導入され、パソコンやソフトの設定などで対応がたいへん…という人もいるのではないでしょうか。

 

現在、オンライン会議には複数のツールが存在していますが、プライバシーを守るための機能や、便利な機能を知らずに困っている人もいるかもしれません。

 

そこで代表的な機能についていくつか紹介します。

 

「背景を隠す」

大多数の人が、他人に部屋の中は見せたくないはず。

 

しかし、配線や電波などの関係でどうしても定位置で使用せざるを得ない場合、背景にプライベート空間が映り込んでしまう可能性があります。

 

そんな時は、ツールの設定で「背景を隠す」などの機能が用意されていれば利用しましょう。

 

画像は何種類かの中から選べますが、なかにはリゾート風や宇宙空間など、日本企業の会議では少し浮いてしまいそうな絵柄も。

 

インターネットで、「オンライン会議 背景」などと検索してみると、さまざまな企業や団体から「バーチャル背景」ともいわれる画像が無料でダウンロードできます。

 

カフェ店内や本棚など、落ち着いた写真を選んで背景に設定してみるといいですね。

 

「マイクやカメラのオン/オフ」

最近のパソコンやタブレットには、カメラやマイクが内蔵されているものが多く、またイヤホンもマイク機能がついたものが主流です。

 

新しく機材を購入しなくても、パソコンとオンライン会議ツールを起動し「音声テスト」などを行えばすぐに使えることがほとんど。

 

プレゼンや研修などでは発信者側で強制的にマイクやカメラをオフにするケースもありますが、自分で切り替える場合でも、多くのツールで起動時のオン/オフを設定できます。

 

いずれも、画面内にあるマイクやビデオのアイコン(絵)で現在の状態が表示されているはず。

 

ただツールによって、「斜線が入っている=現在オフ」を表す場合もあれば、反対の場合もあるため、事前にこのツールではどちらを意味するのかを確認しておくと間違いないですね。

 

「外見を補正する」

この機能が付いている場合、オンにしておくと、薄いメイクをしたような整った顔で画面に映してくれます。

 

夕方、早めに子どもたちをお風呂に入れた後で急な打ち合わせが入ったときなど、再度メイクをしなくてもいいというメリットが。

 

オンライン会議で「あれ?今日はすっぴん?もうお風呂入ったの?」等といわれた人もいますので、ぜひ活用してみて下さい。

 

「これってハラスメント?」と思ったら…

上記で紹介したような、「ハラスメント?」と感じたり、モヤモヤしたときは、どのように対処すれば良いのでしょうか。

 

画面越しで気が大きくなったのか、誰も聞いていないからか…職場では言われたことのない、服装・室内・体型や髪型・メイクなどのプライベートな話題を連発されて不快に感じたという声をよく聞きます。

 

また、ツールで連絡が取れるのをいいことに、個別で話したいと誘われた人も。

 

シングルマザーのYさん(32歳・5歳児のママ)は、

 

「部内での定期ミーティングが終わりかけたころ、上司からチャット(コメント欄)で、もう少し話したいことがあるので退出せずに待機して下さいと言われました。ところが、いざ話してみると世間話というか、ストレスたまってない?僕はついビールが増えて太っちゃって…といったほぼプライベートな内容。次の週も同じように誘われたのですが、気づかないふりしてサクッと退出しました」

 

と話します。

 

「事務的な対応でスルーする」という対処をとっている人が多いようですが、あまり執拗な場合や、あきらかにセクハラに該当する場合は、やりとりを保存し人事やセクハラ担当窓口に提出するという最終手段もあります。

 

録画機能のあるツールでも「誰でも録画可能/主催者のみ可能」は設定により異なります。

 

許可されていない時は、無料でダウンロードできる「キャプチャツール(画面を録画保存できるソフト)」が配布されていますし、それも難しければ、スマホなどで音声と画面を撮影するだけでもOK。

 

また、チャットなど会議中の文字のやりとりは終了後には消えてしまうツールが大半なので、頻繁に誘われたり問題発言が続いたりするなら、終了前にコピーして、日付とともに保存しておくといいでしょう。

 

おわりに

現在、リモートワーク特有のハラスメントを防ぐための企業向けセミナーなども多数開催されています。

 

オンライン会議ツールの使い方に慣れても、オンラインでのコミュニケーションリテラシーが身についていない上司や同僚もまだいるかもしれません。

 

みんなが安心して働けるよう、できるだけ早急に意識改革を進めてほしいものですね。

 

文/高谷みえこ
参考/株式会社インプレッション・ラーニング|プレスリリース「全国1000⼈調査51%がテレワークでストレスや不安を感じている」 https://www.impression-ilc.jp/media/