園の先生と話すママ友の上品な言葉遣い。敬語で話しかけてくるわが子のクラスメイト。きちんとした言葉遣いができると素敵ですよね。
まだまだ赤ちゃんだと思っていたわが子にも、少しづつオフィシャルな言葉遣いを教えていった方がいいのかもしれません。敬語は何歳からどのように身につけさせればいいのでしょうか。さまざまなプログラムで子どもたちのことば力を育ててきた高取しづかさんに聞きました。
【語彙力のトレーニング】相手を尊重する気持ちの育成から
子どもは大人の会話をよく聞いています。ふだん親が使っていることばを、そのまま子どもは真似をします。
敬語は、幼児や小学低学年ではきちんと使えなくても構いませんが、もうそろそろ敬語を使えるようになってほしいという年齢になって、いきなり練習してもすぐにはできません。幼い頃から正しい敬語を聞いて育っていれば、出るところへ出れば自然に敬語が使えるのです。敬語は国語の勉強や本、テレビなどでも吸収できますが、やはり親や周りの大人との会話で無意識に身につきます。ふだんから親が敬語を使うよう、心がけていたいものです。
敬語には、尊敬語、謙譲語、丁寧語があり、相手と自分との関係性により分けて使わなくてはならないので、大人でも難しいもの。少しずつ、子どもにも敬語を使うよう促してみましょう。外部の人との話の中ですと、比較的使いやすいです。
私が行っている度胸力のワークに、レストランや買い物をするときに子どもに注文させよう、というものがあります。このとき「○○ください」と丁寧語を使うように伝えると、語彙力のトレーニングにもなります。
また目上の人について話すとき、「園長先生は今日いた?」ではなく「園長先生は今日いらした?」のように言っていると、尊敬語に触れることになります。
ここでの注意点は、覚えさせようとしたり敬語を強要しないこと。子どもの話すことばをいちいち注意すると、話すこと自体がめんどうになってしまいます。親が自然に使い、子どもは耳にしているだけで十分です。
敬語をいつから意識させたらいいかについて明確な答えはありませんが、米国での体験をお話ししましょう。
私は、夫の転勤によって家族で米国に暮らしていました。幼稚園に半年間、ボランティアで入ることになったとき、クラス担当のサリンジャー先生は、子どもたちに「この方はミセス、タカトリです」と紹介してくださいました。
だんだん慣れてくると、子どもたちはフランクに話しかけてくれるようになりました。その様子を見ていたサリンジャー先生は、子どもたちの目を見ながら「ミセス タカトリですよ」と穏やかに伝えるのです。英語には日本語のような敬語はありませんが、目上の人に敬意を払うことを教えていたように思いました。
どんなに丁寧なことばを使っても、心が伴っていないと相手に伝わってしまいます。反対に、相手に敬意を払ったり相手を大切に思う気持ちがあれば、ことばにしなくても伝わります。敬語を身につけさせる以前に、敬意を払う気持ちの育成が大切ではないか、と思ったのでした。
親がふだんから他人を尊重し、正しい敬語を使いこなせるようにしておきたいものですね。
PROFILE 高取しづかさん
ことばキャンプとは…
人とつき合っていくときにかかせない、コミュニケーションする力のトレーニングプログラム。 米国の学校や家庭で行われていたオーラルコミュニケーション教育と異文化コミュニケーションを分析し、7つのチカラ(度胸力・論理力・理解力・応答力・語彙力・説得力・プレゼン力)を伸ばすために考案された。7つのチカラ引き上げを狙いとしたトレーニングによって、話すチカラ、聞くチカラを楽しく身につけられる。
ことばキャンプ http://kotobacamp.com/
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文/高取しづか イラスト/fancomi