「来年は小学校入学だけど、うちの子、泳げなくて水泳の時間大丈夫かな?」 「うちの子は3年生だけど、バタ足で少し進む程度…このままじゃ困る?」 「5年生だけど、クロールや息継ぎができないから25メートル泳げない…今からでもスイミングスクールに通うべき?」

 

など、泳げない小学生のお子さんを心配している人もいるかと思います。

 

今回は、小学校ではいつまでにどのくらい泳げればいいのか、そのためにはスイミングスクールなどが必要なのか…などの疑問について、ママたちの体験談も参考に考えてみます。

小学校の水泳の授業、目標と内容は

そもそも、小学校の水泳の授業ではどの程度泳げればOKなのでしょうか?

 

文部科学省が小・中・高の先生向けに出している「水泳指導の手引」の中では、おおむね以下のように段階が設定されています。

 

  • 小学校…泳ぎの基本的な動きを身に付ける段階
  • 中学生…動き(泳法)を獲得する段階
  • 高校生…動き(泳法)の質を高める段階

 

小学校の各学年では具体的にどこまでを目標としているのか、学年別にみていきましょう。

低学年(1年生・2年生)では「泳ぎは教えない」?

小学1~2年生ではすべて「遊び」を通じて水に慣れるという目標が設定されています。

 

実際、小学校1年生の初めてのプールでは水が怖くて泣いてしまう子も珍しくないはず。

 

そこで授業では、水嫌いにならないよう、楽しみながら「顔を水につける」「潜る」「浮く」などをくり返していきます。

 

つまり、小学校入学時点ではまだ「泳げるようになっておかないと授業についていけない」と心配する必要はないと考えていいでしょう。

中学年(3年生・4年生)からは差が開いてくることも

小学3~4年生では、泳ぐために必要な「浮く・進む」の動作と、泳ぎ続けるのに必要な息継ぎ=「呼吸」の方法、2つの要素をそれぞれ授業で学んでいきます。

 

ここでもまだ、息継ぎをともなわない「面かぶり」のクロールや平泳ぎなど、目標は限定的で、動きの習得がメインであり、高学年でいよいよ泳ぐための準備段階という位置づけです。

 

ただ、近年「水泳」は幼児の習い事でずっとトップクラスの人気ということもあり、実際には、中学年でも小さい頃からスイミングに通っていて25メートル泳げる子もチラホラいます。

 

そのため、中学年以降の水泳の授業では、泳げる子はプール中央のコースで距離を計測してどんどん泳ぎ、泳げない子は集まってバタ足やけのびの練習…など、レベル別での指導になっていく学校がほとんど。

 

泳げない子には、できるだけ上のコースに上がれるようにシールやワッペンで励ましたり、夏休みに水泳教室を開いたりすることもあります。

高学年(5年生・6年生)は泳げない子が少数派に?

小学5~6年生では、近代4泳法といわれる泳ぎのうち、クロールと平泳ぎで「続けて長く」泳げることを目指します。

 

「続けて長く」は具体的に何メートルとは決められていませんが、小学校のプールに多い「25メートル」がひとつの基準といっていいでしょう。

 

25メートル泳ぐには息継ぎや正しいフォームが必要になってくるため、それらを授業で練習しますが、授業だけでマスターできる子もいれば、そうでない子もいます。

 

Tさん(39歳・中1と5年生のママ)は、当時5年生だった上のお子さんのことをこう話します。

 

「高学年になってだんだんと泳げない子がクラスで少数派になってくると、本当はプールに入りたいのに、浅いプールで別に練習するのが恥ずかしくて、見学したいと言うようになりました。国語や算数はできる方なのでよけいに悔しかったようです」

小学校の水泳指導は、地域で大きく違う

上記は標準的な小学校の水泳の授業の目標ですが、実際に授業で習得を目指すレベルは、実は都道府県で差があるようです。

 

「うちは関東地方で、川が多い土地柄だからか水泳にかなり力を入れていて、夏休みの補習も例年10回くらいありました。今年はコロナで3回だけとなりましたが、毎年この補習で泳ぎをマスターする子も多いので、どうなってしまうんでしょうね」(Aさん・40歳・4年生と2年生のママ)

 

「東北地方に引っ越してきました。息子は前の学校では下の方の級だったのに、一番泳げる級に入っています。水泳にそこまで力を入れていないようで、水泳の授業回数自体も少なめ。ちょっとホッとしていますが、反面、授業だけで泳げるようになるのは難しそうです」(Yさん・42歳・6年生のママ)

 

ママたちに話を聞いてみて興味深かったのは、海に囲まれた土地の子はみんな泳ぎが得意というわけでもなく、内陸部でも水泳が盛んな県が多いこと。

 

また、地域性だけでなく学校ごとでもかなり熱心さが異なるようです。

スイミングって通わせるべき?

小学校で水泳の授業が行われるのは、地域にもよりますが、多くの場合は6月~7月の間です。

 

しかし6月は梅雨の時期で肌寒いこともあり、気温と水温の合計が基準値を下回ると中止になってしまいます。

 

また1クラスあたりの指導人数も、担任の先生以外に1~2名の先生やボランティアが見守りに入る程度。子ども1人1人の課題を見つけて細かく指導するのは難しそうです。

 

「じゃあ、泳げなければやっぱり早めにスイミングスクールに行かせるべき?」と迷うママ・パパもいることでしょう。

 

また、もしスイミングに通うとしたら時期はいつごろがいいのでしょうか?

 

経験者のママたちに体験談を聞かせてもらいました。

 

Yさん(38歳・5年生のママ)は、

 

「娘は人見知りが強くて…実は一度保育園時代にスイミングの体験教室に行ったのですが、終始大泣きで、無理に通わせても逆効果かと思いけっきょく通っていません。市民プールなどで浅いところで遊び、親が少しずつ教えるようにしたところ、小学校の授業内容くらいはついていけるようにはなりました」

 

と、スイミングに通わなくても、なんとか泳げるようにはなったことを教えてくれました。

 

Hさん(43歳・中1と小5のママ)は、兄弟2人を3年間スイミングに通わせていたそう。

 

「長男が年長からスタートし、小学校3年でスポ少に入るため水泳をやめました。4年生の授業では、クロールで25メートル泳げていましたね」

 

「2歳差の次男も、クロールと平泳ぎの形は合格していたので、まあこれで授業は安心だろうと思い、兄と同時にやめました。ところが、1~2年生の水泳の授業ってほとんど遊びなんですよね。4年生でクロールが始まる頃には、すっかり泳ぎ方を忘れてしまっていて…もったいない感じでした」

 

と話します。

 

体力作りや本人が楽しんでいるなら、小さいうちからスイミングに通うメリットはたくさんありますが、もし学校の授業対策が目的であれば、小学校に入ってからでも十分だといえそうです。

 

時期はスポ少や塾などが本格化する前の低学年が始めやすいと言われています。

 

高学年になって、「やっぱり授業についていけない」「泳げるようになりたい」という場合、多くのスイミングスクールは泳力別でクラス編成されているので、最初は小さな子に混じって習うことになりがち。

 

それが気にならない子は良いのですが、近所のスイミングで同級生に見られたくないという子もいます。

 

高学年からスイミングに通う場合は、少し遠方で同級生のいないスクールや、個別指導コースなど、少し配慮が必要かもしれません。

それでもやっぱり泳げない…親にできることは何?

「色々試しても、なかなか泳げるようにならない」

 

「子どもがスイミングスクールをどうしても嫌がる」

 

「中耳炎で毎週スイミングに通うのは難しく、泳ぎも上達しない」

 

…こんなとき、親はどうすればいいでしょうか?

 

Kさん(41歳)のお子さんは4年生頃までスイミングに通いましたが、友だちがどんどん級が上がっていくのになかなか進級できず、ママはずいぶんやきもきしたそうです。

 

「私の焦りが伝わるのか、毎回行くのを嫌がったり、お腹が痛いと泣いたり…。でも、あるときふと、私の不安解消のためだけにスイミングをやらせているような気持ちになったんです。本人の気持ちを確認しようと思いました」

 

そこでお子さんに「もしこのまま泳げなくても平気?もっとがんばりたい?」と聞いてみたところ、お子さんは「水泳の授業ではみんなに負けると思うけど、僕は他のことでがんばるからいい」と答えたそう。

 

「私もそれを聞いて、もうこの子は自分で選んだことの責任は取れるはずだから信じようと思い、スイミングはやめることにしました」

 

とKさん。

 

それでも、中学生になってからお子さんはずいぶん泳ぎが上達し、今は50メートル近く泳げるようになっているといいます。

 

もちろん、どの子もKさんの息子さんのようにそのうち泳げるようになるとは限りません。

 

しかし、親にできることは、他の子と比べて焦ったり無理強いしたりすることではなく、 「最終的にできなくても大丈夫、できるところまでがんばってみよう」 と励ましたり、少しでも前進したときは一緒に喜んだりと、あくまでもその子自身の成長に目を向け、寄り添っていくことではないでしょうか。

おわりに

2020年は、水泳の授業においても新型コロナウイルス感染症の影響が懸念されました。

 

文部科学省は「塩素の働きがあるため、プールの水で感染するリスクは低い」として、更衣室やプールサイドで適切な予防策が取れるなら実施しても構わないという見解を出していますが、実際には水泳が中止になってしまった小学校が相次ぎました。

 

まだ暑い日々が続くなか、近所の川や海で子どもが遊ぶ機会もあるかと思います。

 

泳げない子だけでなく泳げる子の親御さんも、絶対に子どもから目を離さず、事故には十分気をつけて下さいね。

 

文/高谷みえこ

参考/文部科学省|学校体育実技指導資料第4集「水泳指導の手引(三訂版)」 第3章 技能指導の要点(1) 

     文部科学省|今年度における学校の水泳指導の取扱いについて