通常、育休を終えて職場復帰するタイミングは4月、または慣らし保育を経て5月…という人が多数派だと思います。

 

しかし2020年の4月は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、休園や登園自粛要請が出され、職場復帰できない人が続出する異例の事態となりました。

 

6月に登園自粛要請は解除されましたが、その間出社できなかった人たちの育休の扱いや給付金はどうなっていたのか、引き続き感染防止のために登園を控えたい人はどうなるのか…といった疑問に対し、ママたちへのアンケートも参考に状況をまとめてみたいと思います。

 

通常の「育休延長」の条件とは

「育休」こと育児休業制度は、原則、子どもが1歳になるまでのママ・パパが取得できる国の制度です(※「パパママ育休プラス」を利用すると1歳2ヶ月まで)。

 

勤め先独自の育休制度がない場合、保育園が決まれば、1歳に合わせて、または新年度の4月に合わせて入園・職場復帰する人がほとんど。

 

ただし、保育園に空きがない場合は1歳6か月まで、1歳6か月の時点でもまだ決まらなければ2歳まで延長できることになっています。

 

今年4月に入園予定で自粛要請となった子は

しかし、2020年4月に限っては、育休復帰予定だった人のお子さんが入園するはずの保育園の多くが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため「登園自粛」を保護者に要請。

 

テレワーク・リモートワーク体制が整っていない職場の人たちは、職場復帰を延期せざるを得なくなりました。

 

この場合、気になるのは「保育園が決まっているのに育休延長ができるのか」「給付金は受け取れるのか」「保育園に通っていなくても保育料は払うのか」などの点。

 

前例のない事態のため、国や各自治体の方針が決まるまで、復帰予定の人たちは不安な日々を過ごしました。

 

都内の保育園に4月からお子さんを預けて職場復帰予定だったJさん(31歳)は、

 

「職場へ相談したところ、さいわい登園自粛が解除されるまでは仕事はなんとかするからと言ってもらえました。でも給付金を受け取るには、保育園に入れないという証明書類(入所不承諾通知書)が必要なんですよね。保育園は決まっているので書類はない。かといって、復帰していないので、国の休業支援金の対象でもない。まだ0歳児なので保育料は高い…どうしようと不安でした」

 

と当時の心境を話します。

 

7月10日時点での厚生労働省のホームページには、以下のような記載があります。

 

  • 子どもが1歳までの場合、すでに復帰している人含め、事由を問わず育休延長が可能
  • 1歳を過ぎている場合、現在育休中であれば延長が可能

 

また、

 

法令上は1か月前までに申し出ること、1回に限り変更可能であることとなっていますが、労使で十分に話し合ってください。 これらのいずれの場合についても、事業主は、労働者からの申出を拒むことはできません。また、育児休業給付金は支払われます。

 

と、国からの給付金が支払われることが明記され、職場側にも平常時と異なる柔軟な対応が求められています。

 

この期間の保育料は、月額ではなく「登園した日数の日割り計算」とした自治体がほとんどです。

 

しかし自治体によっては、認可外保育所は上記に当てはまらないなど、規定にばらつきがありました。



登園自粛依頼が解除された後は?

自粛要請が解除されても、感染者の多いエリアでは「登園させずに家で育てたい」と、自主的に登園しないことを選ぶ人もいました。

 

この場合、休業そのものは職場と本人の話し合いがまとまれば可能です。

 

しかし、休業中の給付金の有無・保育料の支払いなどの扱いは自治体によって変わってきます。

 

関西の地方都市在住のHさん(30歳)は、

 

「近隣でクラスターが発生したため、職場に育休を延長したいと相談したところOKをもらえたので、7月末まで登園しないことにしました。園長先生も”できるのならそれが一番”と賛成してくれたのですが…市のほうから、長期間登園しなくてもやっていけるなら、いちど退園して、困窮している親子のために枠を空けてもらえませんかと言われたんです」

 

という経験をしました。

 

Hさんは市に事情を話し、その後8月から職場復帰しているそうです。

 

保育園に在籍したまま登園しないで様子を見る「措置期間」については、「7月末まで」「9月末まで」など、自治体により色々。

 

首都圏に住むYさん(36歳・4歳児と1歳児のママ)は、

 

「この地域では、措置期間が9月いっぱいなので、遅くとも10月には復帰しなくてはなりません。かなり難しいのですがテレワークに切り替えてもらうか、子ども2人を預けて復帰するか。退職だけは避けたいのですが…育休代理の派遣社員さんの契約のこともあり、決断を迫られています」

 

と苦しい選択について話します。

 

おわりに

前例のない事態により、子どもの感染に不安を残しつつ職場復帰した人や、育休を延長したもののキャリアの継続が心配な人、今なおさまざな状況の人がいることが分かります。

 

引き続き、国(厚生労働省)や自治体の方針をこまめにチェックしつつ備えていきましょう。

 

文/高谷みえこ

参考/厚生労働省「あなたも取れる!産休&育休」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/31.pdf

厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00018.html#Q7-8

厚生労働省 パパママ育休プラス解説「両親で育児休業を取得しましょう!」 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000169713.pdf