2020年7月、生命保険会社が実施したアンケート結果をもとに「夫がずっと家にいることで家庭不和になるため、専業主婦の4人に1人が夫の在宅勤務を望んでいない」という報道がインターネットで話題になりました。

 

これに対し、SNSを中心に「あとの3人は歓迎しているはずなのに」「事実と反対のイメージを招くのでは?」と疑問が続出。

 

その一方で「ステイホームで負担が増えたのに、社会的に発言権の少ない専業主婦にスポットを当ててくれた」という感謝の声も見られました。

 

今回は、この調査結果の中身を確認してみることで、ほんとうに家族が幸せになれるテレワーク・在宅ワークや育児のありかたのヒントを見つけたいと思います。

 

この調査の対象人数や家族構成をみてみると

今回話題になったニュースの元となるのは、2020年7月7日に明治安田生命から発表されたリリースで、

 

  • 緊急事態宣言解除から1週間後
  • 0歳~6歳までの子どもがいる既婚男女1100人

 

に行われたアンケートの結果でした。

 

質問内容は、ステイホーム期間において「子育て時間」や「子育てへの意識」に変化があったか?というもの。

 

これに対し、男性(パパ)の半数近い45.4%が、「子育て時間が増えた」と答え、7割が「積極的に子どもの面倒をみるようになった」「子どもとの絆が深まった」と前向きにとらえていたそうです。

 

いっぽう女性(ママ)では「配偶者の育児にイライラすることが多くなった」(11.3%)など、ストレスが増加したという人が4割だったとのこと。

 

ポイントは「0歳~6歳の子どもがいる夫婦」という点で、子どものいない夫婦や小学生以上の子どもがいる家庭はこの調査の対象ではないため、「小さい子がいたらどう感じるか」ということを頭において考える必要があります。

 

「今後もテレワークを望む」88.8%は、専業主婦をのぞいた人数

少し気になるのは、ステイホーム期間中にテレワークを行った人のうち、88.8%の人が「今後もテレワークを行いたい」と回答しているのですが、その中に専業主婦は含まれていない点。

 

テレワーク継続を望む理由としては「仕事の合間に子育ての時間が取れて便利なため」と答えた人が最多(33.8%)でしたが、これにはパパだけでなく、共働きのママも含まれていると考えられます。

 

専業主婦であり0~6歳児のママである女性だけに限定すると、4人に1人は「夫のテレワークを望まない」という結果になったとのこと。

 

歓迎する人が多かった在宅ワークで、小さいの子いる専業主婦だけに「望まない」の声が多かったのはなぜ?という疑問が今回の報道につながったといえるでしょう。

 

専業主婦のママたちはどう感じているの?

「夫のテレワークを望まない理由」で多かったのは、

 

  • 夫がずっと家にいることで家庭不和になり子どもに悪影響(36.4%)
  • 夫が子育てと仕事の時間のバランスが取れていない(27.3%)

 

でした。

 

しかし、0~6歳の子育てファミリーでは、専業主婦の4人中3人は「今後も夫にテレワークを望むかどうか」に対して、「行ってほしい」と回答しています。「行ってほしくない」との二択ではあるようですが、おおむね夫のテレワークを歓迎しているといって良いでしょう。

 

とくに、転勤で実家や友人と離れているママや、ずっと子どもと二人で過ごす「ワンオペ」のママにとっては、他の大人が家にいることだけでも大きな息抜きになりえます。

 

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多くの家庭で、テレワークを契機に夫婦の子育てが良い方法に変わったのはすばらしいことで、男女とも、今後の働きかたを考えるうえで、出勤+長時間労働が絶対ではないという1つの材料になるのではないでしょうか。

 

その反面、周囲の話では

 

  • 休園・休校で公園もテープが貼られ外遊びができないのに、一日中「仕事だから子どもたちを静かにさせろ」と要求
  • ママと子どもだけなら昼食をかんたんに済ませられるのに、夫好みの昼食を用意しないと不機嫌になる
  • 通勤や残業時間が減ったぶん、子どもをお風呂に入れたり遊んだりしてほしいのに、仕事が終われば自分の好きなことしかしない

 

など、仕事を理由に、同じ家で過ごす妻や子どもの立場を想像できなかったパパも一定数いるのは事実です。

 

夫の勤務中に「家事」を担当することは納得している専業主婦の女性がほとんどだと思いますが、夫婦2人の子どもなのだから、仕事の有無にかかわらず「育児」は2人でおこなうべきもの。

 

その視点が抜け落ちたままの夫のテレワーク・在宅ワークはやはり妻にとって大きなストレスとなるのでしょう。

 

おわりに

今回の報道から見えてくるものは、同じ子育て世帯・専業主婦世帯といっても、育児に対する取り組みかたは千差万別であるということ。

 

「専業主婦」とひとくくりにしたり、わが家基準で判断したりするのではなく、家族の1人1人、うちの家庭とよその家庭…それぞれが違う課題を抱えていることや、相手の立場・負担に対しても想像力を働かせ、思いやりを持って接することを忘れずにいたいですね。

 

文/高谷みえこ

参考/明治安田生命「コロナ禍における子育て世帯への緊急アンケート調査を実施!」

https://www.meijiyasuda.co.jp/profile/news/release/2020/pdf/20200707_01.pdf

専業主婦の4人に1人 夫の在宅勤務「望まない」 研究機関の調査 | NHKニュース

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200724/k10012530441000.html