以前から導入が検討されていた「夫の産休」が、いよいよ制度化に向けて動き出しそうです。

 

2021年の国会で育児・介護休業法などの改正案が通れば、これからは、産後4週間のもっとも大変な時期にパパがきちんと収入を得ながら家で家事・育児のサポートに当たれるようになるかもしれません。

 

今回はこの制度のあらましと、実現した場合「ここはどうなるの?」という気になる点について解説、よりよい「夫の産休」はどうすれば叶うのか…などを考えてみました。

 

いまの「産休・育休制度」はどんなもの?

現在、「産休(産前・産後休業)」が取れるのは、基本的には出産した女性本人のみ。

 

  • 産前休業…出産予定日の6週間前(双子以上なら14週間前)
  • 産後休業…出産翌日から8週間(本人が申請し医師が認めれば6週間)

 

この期間には、企業はどんな雇用形態でも出産前後の女性を働かせてはいけないと法律で決められています。

 

いっぽう「育休(育児休業)」のほうは、要件はいくつかありますが男女ともに認められています。

 

子が1歳(一定の場合は、最長で1歳)に達するまで(父母ともに育児休業を取得する場合は、子が1歳2か月に達するまでの間の1年間<パパ・ママ育休プラス>)、申出により育児休業の取得が可能 また、産後8週間以内の期間に育児休業を取得した場合は、特別な事情がなくても申出により再度の育児休業取得が可能<パパ休暇>

国の制度に加えて独自の育休制度を用意している企業もあり、日本の男性育休は、実は世界有数の充実度なんです。

 

ところが、実際にパパが育休を取れているのか…となると、まったくそうではない事実が明らかになっています。

 

2018年の育休取得率は、女性82.2%に対し男性はわずか6.16%と、北欧諸国での80~90%はおろか、国内目標の13%にも及ばない状況でした。

 

この背景には、日本企業の長時間労働をよしとする体質や、男性の子育て参加に対し職場の理解が進んでいないことなどがあると考えられます。

 

関連記事:

パタハラでネット大炎上!男性育休わずか6.16%は会社の嫌がらせか!?

小泉進次郎氏の育休、みんな盛大に「カン違い」していないか

 

新制度では「出産後4週間はパパも休業」が義務付けられる?

このままでは、「2025年に男性育休30%」という国の目標はとうてい達成できず、安心して妊娠・出産できない夫婦が増えてしまう…。

 

そこで、政府の「育休のあり方検討プロジェクトチーム(PT)」は、

 

「出産後4週間はとくに母親の心身の負担が大きく、ホルモンバランスの変化で産後うつも発症しやすい時期。父親産後休業期間として取得を義務化し、母親のサポートに専念することが望ましい」

 

として新しい制度の創設を提言していました。

 

また、この期間は従来の産休・育休とは異なり、給与の全額分支給が検討されています。

 

改正法案は2021年の通常国会に提出予定で、早ければ2021年中にも、多くのパパが産後4週間、自宅でママや家族のサポートができるようになるかもしれません。

 

「夫の産休」は課題も…より良いものにするには?

これが実現すれば、産後のもっとも大変な時期、パパが収入を気にすることなく、家事や赤ちゃんのお世話、上の子の面倒を見ることが可能になります。

 

とくに2020年現在は、新型コロナウイルスの影響で里帰り出産や高齢の両親に手伝いに来てきてもらえない人が増えており、「夫の産休」が実現すればとても心強いでしょう。

 

とはいえ、この制度にも課題や問題点がないわけではありません。

 

第1子または第2子以降の出産を考えている人たちからは、次のような心配や要望が寄せられています。

 

「1人目の産後、実家に頼れない私はすごく大変だったので、2人目の時に夫が必ず休めるなら本当にうれしいです。ただ、コロナ流行に伴う減収で預金が目減りしてしまい、夫婦同時に産休を取ると家賃やローンの支払いが滞るのではと心配。給付金の前払い制度なども検討してほしいです」(Mさん・30歳・3歳児のママ・第2子希望中)

 

「夫の会社は規模が小さく、1ヶ月休むとなったら代わりの人がいないので、下手すると解雇されそう。妻の妊娠がわかった社員を解雇した場合の罰則がないと…せっかくの制度なのに、逆に収入ゼロになったらどうしようと心配です」(Sさん・第1子希望中)

 

「わが家は自営業なので、もともと産休も育休もありません。もし夫が育児のためにお店を閉めれば即収入がなくなるので、話し合って私がワンオペ育児しました。私たちもちゃんと税金を払っているのに、会社勤めの人だけ全額もらって夫婦で育児できるのはちょっとうらやましいですね」(Oさん・33歳・4歳児と2歳児のママ)

 

「休業中、ほんとにちゃんとママのサポートをしてくれればいいのですが、うちの夫は遊びに行ってしまって、帰るなりごはんまだ?とか言い出しそう…。事前に夫婦で育児教室に参加する、コロナの在宅ワーク中みたいにその日どんなサポートをしたのか会社に報告するなどのルール作りを望みます」(Yさん・29歳・2歳児のママ・第2子妊娠中)

 

「本当は、夫婦で力を合わせて赤ちゃんを育てるのが理想…だけど、上の子の時、臨月の私を置いて旅行に行ってしまった夫が休業しても期待薄なので、次があるなら家事代行さんのチケットを夫の給与と同額ぶん配布してほしいです」(Kさん・1歳児のママ)

 

関連記事:「とるだけ育休」を問題視!育児しない男性に育休はムダなのか!?

 

おわりに

産後の4週間、パパが必ず休業して家事育児に参加するとなれば、「心強い」というママは多いことと思います。

 

赤ちゃんの夜泣きで「明日パパの仕事が早いのに…」と気を遣うこともなく、かけがえのない新生時期を共有できて、将来の夫婦関係や子育てにもプラスになるでしょう。

 

まだまだ課題や不公平感も残りますが、1つ1つクリアしながら、産後のママをパパがしっかりサポートできる体制を整えていってほしいと思います。

 

文/高谷みえこ

参考/厚生労働省リーフレット「子育てしながら働き続けたい あなたも取れる!産休・育休」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/31.pdf

育児休業制度とは|男性の育休に取り組む|育てる男が、家族を変える。社会が動く。イクメンプロジェクト https://ikumen-project.mhlw.go.jp/company/system/

育休のあり方検討PT中間提言~男性が育休取得しやすい社会を創る~ https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/news/policy/200022_1.pdf