妊娠中は、大きくなったお腹に押され、皮膚が引っ張られておへそが飛び出してしまうのは誰にでもあること。

 

産後は元に戻ると思い込んでいたのに、なぜかいつまでも戻らない…。

 

私、このまま「でべそ」になってしまうの?!と悩んでいるママは、実はけっこういることが分かっています。

 

実は産後のママの「でべそ」には2種類の原因があり、治療法なども異なります。

 

今回は、先輩ママの実体験も参考に、産後のでべそは治るのか、手術しないといけないのかなどを調べてみました。

産後の「でべそ」、原因は2種類ある

産後の「でべそ」の原因は、実はママがまだ赤ちゃんだった頃にさかのぼります。

 

赤ちゃんのでべそは、見た目は同じように見えても、おへその部分が内部で閉じているか開いたままになっているかで構造も名称も違っています。

 

この2種類のでべその原因についてみていきましょう。

 

組織の塊が盛り上がっているのは、一般的な「でべそ(=臍突出症)」

赤ちゃんの「へその緒」が取れた後の塊を「瘢痕(はんこん)組織」と呼び、通常は、生後しばらくするとおなかの中へと沈んでいき、そこを埋めるように腹筋がつながって、へこんだおへそができあがります。

 

ところが、この塊が浅い場所にとどまっていると皮膚を押し上げて「でべそ」となるのです。このケースを「臍突出症(さいとっしゅつしょう)」といい、一般的な「でべそ」の状態です。

 

子ども時代に成長ととともに治ってくることも多いですが、妊娠などで圧力がかかるとふたたび瘢痕が盛り上がって産後もお腹の深い場所に戻れない場合があり、なかなか治らない産後の「でべそ」の原因に。

 

この場合、通常体に害はないそうですが、見た目はかなり目立つので、海やプール・温泉などに行くのをためらってしまう人も多くいます。

 

腹腔内容が飛び出してしまう「臍(さい)ヘルニア」

これに対して、へその緒があった場所が体内で完全にふさがらず、腹筋のあいだを抜けて皮下脂肪や水分・腸など腹腔(おなか)の内容物が皮膚を押して飛び出てくるものを「臍(さい)ヘルニア」といいます。

 

こちらは重症になると飛び出した部分が炎症を起こしたり腸の消化吸収活動が妨げられたりして腹痛や嘔吐などが起こる可能性があり、治療の必要も出てきます。

 

一般的な「でべそ」と「臍ヘルニア」の区別をつける方法は、飛び出た部分を指で押し、穴の中に戻るかどうか。

 

押しても固くグリグリしているのは一般的なでべそで、おなかの中に戻ってしまうのはヘルニアだといわれます。

 

どちらとも判断がつきかねる場合は診察を受けるのが確実です。受診科は、検診などで産婦人科に行く機会があればそこで相談することも可能ですが、専門は「形成外科」になります。

先輩ママに聞く、産後の「でべそ」の治し方は?

産後、飛び出たおへそで悩んでいたママたちに、その後どうなったのか教えてもらいました。

 

「自力ででべそを治した」というママの体験談は次のようなもの。

 

「もともとおへそが広めだったので、産後、飛び出たまま戻らなくなってしまって困りましたね。洗濯物を干しているときや歩きながら、意識してお腹を引っ込めるようにしていました。あとは、肌にいいのか悪いのか分からないけど、コットンを丸めて、医療用のテープを上から貼って押さえてましたよ。そのおかげかどうか、半年くらいで無事もとに戻りました」(Iさん・31歳・2歳のママ)

 

昔は、赤ちゃんのでべそを治すために10円玉をおへその上に貼った…という話も聞きますが、おへそにモノを貼ったりコットンを詰めたりするのは、特に夏場は蒸れて炎症を起こしたりする可能性もあるので注意して下さいね。

 

また、こちらは二人目を産んだあとにでべそが治ったというママ。

 

「一人目出産後、広がってしまったおへそがなかなか戻らず、そのまま二人目妊娠に突入…!でも、ママ友から、産後は軽い腹筋をしたり引き締めるジェルを使ってマッサージしたりすると治るかもよと教えてもらい、ダメもとでやってみたら、なんと!ひっこめることに成功しました」(Hさん・34歳・6歳と2歳のママ)

 

必ずしも、一度でべそになったら二度と戻らないわけではなく、その人の体質や筋肉・皮膚の状態によっては元に戻る場合もあるようです。

産後の「でべそ」、治すなら手術しかない?保険は効く?

腹筋やマッサージなどのケアをがんばっても、なかなかでべそが治らない…。

 

そんな場合は手術も視野に入ってくるかと思いますが、でべその治療に健康保険は適用されるのでしょうか?

 

実は、最初に解説した「臍突出症」(一般的なでべそ)の場合は、基本的には病気ではなく、「美容形成手術」の扱いとなりますので、保険は効かず全額自己負担となります。

 

手術の料金は、術式や病院・クリニックによって異なりますが、10万円から20万円ほどかかることが多いようです。

 

いっぽう、「臍ヘルニア」の場合は機能的な障害が心配されるため、手術する場合には保険が適用されます。

 

こちらも、術式や病院ごとに料金は異なりますが、検査料と手術料、薬剤などを合わせて、3割自己負担で2万円程度ということが多いようです。

 

個人で生命保険や医療保険に入っている場合はそこから保険が下りる可能性があるので、手術する場合には確認しておきましょう。

 

「産後のでべそ」まとめ

赤ちゃんのでべそは、産院や検診など相談できる機会も多いですが、ママの「でべそ」についてはなかなか気軽に相談する場がなく、情報も少なかったりします。

 

しかし、特に「臍ヘルニア」の場合は放置すると危険なこともありますので、できるだけ早めに診察を受けておきましょう。

文/高谷みえこ
参考/一般社団法人 日本形成外科学会 形成外科で扱う疾患 「臍突出症・臍ヘルニア」 
聖路加国際病院 ヘルニアセンター「臍ヘルニア」 http://hospital.luke.ac.jp/guide/herniacenter/umbilical.html