お子さんが小学校3~4年生のママ・パパは、担任の先生や習い事のコーチなどから「ギャングエイジですね」と言われた経験はありませんか?

 

この年代特有の、大人を排除して同年代の集団で行動する時期のことを指して「ギャングエイジ」と言いますが、具体的にはどのようなものなのでしょうか。

 

今回は「ギャングエイジの」意味と、近年の子どもたちの傾向や特徴、親としてどう対処するのがいいのか…などを解説します。

なぜ「ギャング」というのか?

「ギャング」と聞くと、昔のアメリカ映画などに登場する、法を破って縄張り争いや抗争を繰り返す「ギャング(Gangster)」を思いうかべてしまいますよね。

 

しかし、ここでいう「ギャング(gang)」はそれとは少し意味合いが違い「集団」「仲間」を表します。

 

発達心理学において「ギャングエイジ」は「子どもだけの集団で行動し、家庭とは違った価値観と出会い、対人関係のスキルを獲得する時期」としています。

 

幼児期や小学校低学年までの子どもは、仲のいいお友だちはいても、家が近所・保育園で毎日顔を合わせる…といった環境の中でたまたま気の合う子とよく遊ぶ、というパターンが多く、人数も1対1または2~3人ということが多いのではないでしょうか。

 

また一見大勢で遊んでいるように見えても、たまたまその遊びに関心を持った子が集合しただけで、終われば解散…ということがほとんどです。

 

しかし小学校3年生頃からは、少しずつ5~6人の固定メンバーでいつも一緒に行動したり遊んだりする姿が見られるようになります。

 

ギャングエイジ特有の集団形成はたいていは同性どうしで、もちろん女の子のあいだでも見られますが、より男の子に多い傾向があります。

 

最近はそんな場所も少なくなりましたが、昭和~平成初期には、子どもたちが裏山や空き地に枝やゴザなどを運んで秘密基地を作る姿が見られ、それはたいてい10歳前後の男の子たちでした。

 

ギャングエイジ時代に身につく子どもの社会性

子どもだけの集団で遊ぶ過程では、協力したり、困っている子を助けたり、役割分担をしたり。また、自分たちなりのルールを作り、それを守ろうとします。

 

ときにはケンカや対立・競争や、トラブルもありますが、それを解決する方法も大人の力を借りずに自分たちで身につけていきます。

 

つまり、ギャングエイジは、成長したときに欠かせない「社会性」の基礎を身につけるとても重要な時期だといえるのです。

 

ギャングエイジの子どもの傾向と問題点とは

ただし、これは大人も含め多くの人に当てはまることですが、集団だと気が大きくなり、モラルやルールに反した行動をとってしまいがちになるのには注意が必要です。

 

通りすがりに家のチャイムを押して逃げる「ピンポンダッシュ」や、公園に落とし穴を掘る、勝手に人の敷地に入るなどのほか、信号無視など危険な行為や、授業中のおしゃべり・悪ふざけなど学級崩壊につながりかねない行動は、1人ではブレーキがかかっても、仲間と一緒だとついやってしまう…という面があります。

 

3年生や4年生では、およその善悪の判断はついても「やめておこう」という自制心や「これをやったらどんな迷惑がかかるか」という想像力・思考力は完全に育っていない子も多いので、まだまだ目が離せない時期だといえます。

 

ギャングエイジがない子、ないクラスもある?

しかし、最近ではこの「ギャングエイジ」がない子、ないクラスも増えているといわれます。

 

核家族化と共働きの増加で、学童保育や習い事など、常に大人の目の届く場所で過ごす時間が増えたため、集団を形成する機会が消えてしまったというのです。

 

また、中学校受験に向けて3年生頃から塾通いが始まる子も少なくありません。

 

「スポ少」で知られるスポーツ少年団に所属している子も、基本的には大人の指導者の指示のもとで活動します。

 

子ども同士で連携して動いているわけではないので、本来ギャングエイジ時代に育まれるべき力が、意外と身についていない可能性もあり、「うちはスポ少で厳しくしつけられているから大丈夫」とも言い切れないようです。

「9歳・10歳の壁」「小4の壁」との違い

ところで、ちょうどギャングエイジの時期と重なるように訪れる「9歳の壁」や「10歳の壁」、「小4の壁」とはどのようなものでしょうか?

 

ギャングエイジが他の子との関係性に基づくものであるのに対し、「○○の壁」は、1人1人の子の内面で起こるものです。

 

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具体的には、幼児期の「自分はなんでもできる」という万能感が薄れるにつれ、他の子と自分を比べて劣等感を感じ、意欲がなくなる・荒れる…といった精神的な変化や、どんどん抽象度が増していく学校の授業に理解がついていかなくなるといった学習面の変化をいいます。

 

なかでも算数については、5年生から学習する「割合」や「分数」といった重要単元でつまづく原因は、実はその前の4年生にあると考えられており、「小4ビハインド」という名称もあります。

ギャングエイジの子どもへの接し方のポイント

わが子がいよいよギャングエイジかな…と思ったら、ママやパパはどう接するのがいいのでしょうか。

 

小学校低学年までは、親の価値観や行動基準に基づいて、子どもに物事を教えたり叱ったりする段階でした。

 

しかし、この年齢になったら、100%親の納得する態度や行動を求めず、よくないことは伝えるのみにとどめて強制しないよう、少しずつ変えていく必要があります。

 

「だめでしょ!」「こうしなさい」よりは、「あなたはこれ、いいと思う?」と問いかけてみると、子どもは自分で考える習慣が、親は価値観を上から押しつけない習慣が身についていきます。

 

幼児期と同じ感覚で、いつまでも抑えつけて言うとおりにさせようとすると、中学生以降の反抗期が激しくなるともいわれます。

 

それでも中学生で爆発してくれればまだいいのですが、そこでもさらに抑えつけると、今度は大人になって人間関係で困ったときに自力で解決できなくなる可能性も出てきますので、「本当はこうふるまってほしい」と思っても、最後まで押し通さずにときどきは目をつぶる…くらいのバランスがおすすめです。

 

ただし、いくら子どもにとって重要な存在である仲間同士で決めたことでも、他の子へのいじめなどは見過ごしてはダメ。

 

「人としてこれだけはやってはいけないこと」「ある程度は目をつぶること」を、親の中でもはっきりさせておく必要があります。

子供の気持ちに寄り添った関わりを

ギャングエイジは子どもの人格形成や社会性を身につけるのに役立つ…とはいうものの、群れて悪さを繰り返すようになると、ママは気が気ではないと思います。

 

ただ、高学年になると急速に判断力も育ち他人からどう見えるかを考えはじめ、中学校では自分の内面や異性に関心が向き始める子がほとんどです。

 

本当の意味で最後の「子ども時代」ともいえる短い時期を、目は離さずに、気持ちは寄り添いつつ支えていけるといいですね。

 

文/高谷みえこ

参考/家政学雑誌「いじめ」青少年の発達的危機の考察 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej1951/37/7/37_7_623/_pdf