「わたしはお医者さんね、ママはおなかいたいって言って」 「ママ、たたかいごっこしよう!わるものになって」
子どもが最近「~ごっこ」にはまり、日々付き合っているというママ・パパも多いのではないでしょうか。
子どものごっこ遊びには、心の発達に大きなメリットがある一方で、ひたすら相手役を要求される大人は大変ですよね。
時には「いつまで続くの…」と苦痛にすら感じられることも。
今回は、子どものごっこ遊びはいつからいつまで続くのか、ごっこ遊びをする子どもの心理や発達との関係、先輩ママたちの乗り切りテクニックなどを紹介します。
子どもが「ごっこ遊び」をする心理
よく「真似る=まねぶ=学ぶ」(※諸説あります)といわれるように、真似ることは生きていくうえで欠かせない「学習」のひとつ。
赤ちゃんはまだ言葉が話せない時期から、大人や年上の子の動きを真似しようとします。
実は、人間を含めた動物や生き物の赤ちゃんには、本能的に周囲の真似をすることで危険を回避したり食べものを得たりして生き延びようとする力が備わっているそう。
生まれたばかりの頃は自他の区別があいまいだった赤ちゃんが成長して、「ごっこ遊び」をするようになってきたら、以下のような力が身についてきたことのあらわれだと言えます。
- 自分のまわりの世界を認識する力
- 自分を客観視する力
- 周囲のものごとを記憶して再現する力
- そこにないものをイメージする力
ごっこ遊びは何歳から始まりいつまで続く?
一般的には、まず赤ちゃんは0歳代から、積み木を耳にあててスマホに見立てたり、車に見立てて走らせたりする「見立て遊び」を始めます。
2歳前後から、お人形やぬいぐるみを背中にくくりつけてお世話するなどの「つもり遊び」も始まります。
そして、実体験や絵本などから自分でシチュエーションや登場人物を設定し、それになりきって遊ぶ「ごっこ遊び」が始まるのは3歳頃がもっとも多いといわれています。
4~5歳頃の子どもたちは、複数で「ごっこ遊び」に夢中になることが多く、その後小学校に入学すると、宿題や習いごとで忙しくなる上、外遊び・スポーツ・ゲームなど遊びの選択肢の選択肢が増えて「ごっこ遊び」をする機会はしだいに減っていきます。
とはいえ、小学校でも3~4年頃まではまだまだ「ごっこ遊び」の好きな子も多く、メンバーが揃えば楽しそうに続けている姿もよく見かけます。
また、有名な作家やアーティストの中にも「中学生になっても人形相手にごっこ遊びをしていた」という人がいて、必ずしも一定の年齢になると誰でも「ごっこ遊び」をやめる…というわけではないようです。
ごっこ遊びで得られるメリット
「ごっこ遊び」を通じて、次のようなさまざまな力が身につくと期待されます。
観察力
家族や世間の人がどんな目的でどんな言動をしているのか見極めるようになります。
表現力
自分の見た光景や一連の作業・ストーリーなどを再現するために、言葉や動きを工夫するようになります。
想像力
「もし自分が巨人だったら」「もし宇宙に行ったら」など、日常と異なる状況を思い浮かべたり、「この患者さんはなんの病気なのか」など他者の状況を想像できるようになります。
社会性
役を決めて演じることで、人間には個人としての自分以外に「社会的な役割」が存在することに気づきます。
協調性
複数の友だちとごっこ遊びを進めていくには、相手の要望も取り入れなければ成立しないことに気づき、協調性が育ちます。
コミュニケーション能力
同じく、楽しく遊びを維持していくにはお互いの思いを伝えあうことが大切だと気づき、積極的にコミュニケーションを取ろうとします。
人間関係調整力
方向性や意見が割れたとき、仲間どうしでもめたときの解決方法や、仲裁の方法を学びます。
譲り合いの精神
一方的に誰かが我慢したり、誰か1人の思い通りにするよりも、時と場合によってお互い譲り合った方が心地よく円滑に進むことを感じます。
ルールを守る力
遊びを維持するためにはルールを守ることが必要と気づいたり、さらに発展してルールを作る力が身についたりします。
計画性
ごっこ遊びを始めるために必要な設定を考え、役割分担したり必要なものを用意したりする過程で計画性が身につきます。
そのほかにも、ごっこ遊びに必要な小道具が足りないときに身近なもので手作りすることでクリエイティブ能力が伸びたり、男の子が赤ちゃんをお医者さんに連れていく・女の子が大工さんをするなどの役割分担をすることで、将来的なジェンダーギャップの解消にも役立ちます。
ごっこ遊びに付き合う親たちの本音とテクニック
子どもの発達にとってさまざまなメリットがある「ごっこ遊び」ですが、家庭では同年代の子ども同士でごっこ遊びができないことが多く、大人が付き合う場面も出てきます。
しかし、ママたちからはこんな体験談や本音も。
「戦いごっこだけはイヤ!特に、悪人役になって叩かれるのは、興奮してくると園児でもかなり痛いし断ります」(Fさん・33歳・5歳の男の子のママ)
「お人形を持って遊びの相手役を求められるのですが、目が離せない1歳過ぎの下の子がいるのであまり長時間ごっこの役を演じていられないのが正直なところ」(Hさん・30歳・3歳の女の子と1歳の男の子のママ)
「子どものお気に入りの絵本の再現で、役も台詞も指定されるのですが、毎回真剣にやらないと怒ってダメ出しされるんです…無理…」(Jさん・35歳・5歳の女の子のママ)
実は子どもが「ごっこ遊び」を何度も繰り返し心から楽しめるのは、それが子どもの発達段階に合っているから。
いくら子どもをかわいく思っていても、「ごっこ遊び」が必要な時期をとっくに終えた多くの大人にとっては楽しく感じられないどころか、苦痛に感じたとしても不思議ではありません。
そこで、先輩ママ・パパたちに、
「ごっこ遊びの相手がしんどい時、何かいい方法はありませんか?」
とアンケートを実施。おすすめのテクニックをアドバイスしてもらいました。
「とにかく同じ登場人物で同じ展開のストーリーを何回もやりたがるので、せめて舞台を変えてみることにしました。元はジャングルでライオンが来る…というところで、北極ということにして白熊が来たよー!とか、宇宙人が来たとか(笑)」(Eさん・36歳・当時4歳の男の子のママ)
「私本人が何かの役を演じると、立ったり座ったりで全身使うので仕事帰りにはちょっと身体がもたないことも…なのでお人形を使って演じてました。座ってちょっと洗濯物をたたみながらでもできますし、エネルギーの消耗が防げます」(Iさん・39歳・当時5歳の女の子のパパ)
「息子はよく空想がどんどん広がっていくので、何を思い描いているのか理解できないこともしばしば…あるとき、ママ、それがどんなものか分からないからブロックで作ってみて?と頼んだら、20分くらい集中して作ったんですね。それで、ときどき絵に描いてとか粘土で作ってとか頼んで、その間に手が離せない家事を済ませていました」(Eさん・37歳・当時6歳の男の子のママ)
「ママ友に、スマホでタイマーをセットしておくといいと聞いたんですが、まだー!と泣かれてうまくいきませんでした。でもあきらめず、ママは○○星から来てて、時間に帰らないと○○星のお日様がのぼらないんだよ!だからごめんね!また来るね!みたいな設定を無理矢理作りました。なるべく子どもが、それならしょうがないなと思えるような理由を作るのがコツです!(笑)」(Tさん・40歳・当時4歳の男の子のママ)
「娘はおままごとが好きだったのですが、おもちゃでごはん作りをして、私がいただきます、わーおいしい!と食べるマネをするのを何十回もさせられて正直疲労困憊…。ちょっと早いかなと思いましたが、クッキーやパン作り、豆の筋取りなど、できるだけそれに近いような現実の体験に切り替えていました。よけいに散らかったり二度手間になることもあったけど、私はその方がストレスたまらなかったので」(Kさん・35歳・当時2歳の女の子のママ)
子供のごっこ遊びと工夫しながら付き合おう
今回の記事でいろいろな人に話を聞いてみて、「ごっこ遊びに付き合うのは正直しんどい」と感じている人が予想以上に多いことが分かりました。
とはいえ、子ども本人が望むなら、ぜひ好きなだけ「ごっこ遊び」を楽しませてあげたいもの。
今回紹介したテクニックも参考に、ママやパパが疲れ切ってしまわないように工夫してみて下さいね。
文/高谷みえこ
参考/内閣府/文部科学省/厚生労働省「幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説 1」
岐阜女子大学紀要33号「ごっこ遊びの研究―1・2歳児のごっこ遊びと援助のあり方―」 https://gijodai.jp/library/file/kiyo2004/P75-82.pdf