子どもや赤ちゃんはよくしゃっくりをするもの…とはいえ、あまり長時間しゃっくりが止まらないと少し心配になってしまいますよね。

 

今回は、赤ちゃんはなぜ大人よりも頻繁にしゃっくりが出るのか、止め方はあるのか、大人と同じ止め方をしても大丈夫なのか…などの疑問について考えます。

 

そもそも「しゃっくり」とは?なぜ起きる?

「しゃっくり」は、医学的には「吃逆(きつぎゃく)」と呼ばれ、横隔膜(おうかくまく)がとつぜん収縮することで空気が急に吸い込まれ、特殊な⾳声を発する状態をいいます。

 

横隔膜は人の腹部と胸部を仕切っている筋肉。私たちは、この横隔膜が自律神経の働きで自然に上下することで日々呼吸しています。

 

では、なぜその横隔膜がいつもと違う動きをするのか?…ですが、実はいまだに原因は不明だそう。

 

あくまでも推測として、次のようなことがきっかけ・原因ではないかと考えられています。

 

  • 血液中の二酸化炭素濃度低下
  • 胃の膨満
  • 飲酒
  • 熱いものや刺激物の摂取

 

しゃっくり(吃逆)は病名ではなく、あくまでも症状の名前ですが、あまりにも長時間止まらない場合には日常生活にも支障をきたすとして、以下のように呼ばれます。

 

  • 持続性吃逆(しゃっくりが48時間以上、1ヵ⽉未満持続する)
  • 難治性吃逆(しゃっくりが 1ヵ⽉以上止まらない)

 

なお、48時間以内に止まれば、一時的なしゃっくりとして「吃逆発作」という扱いになるそうです。

 

 

しゃっくりがあまりにも続くときには、胃や肺などの内臓または神経系の病気が隠れている可能性もあり、実際にあるテレビ番組で「しゃっくりが2年止まらない」という英国のミュージシャンを日本の医師が診察したところ、延髄の腫瘍が見つかったという例もあります。

 

なぜ赤ちゃんや子どもにしゃっくりが多いのか

大人と比べて、子ども、特に赤ちゃんはしゃっくりをすることが多いのではないでしょうか。

 

「お腹の中でも赤ちゃんがしゃっくりをしていた」と話すママは少なくありません。

 

目的は羊水と一緒に飲み込んだ異物の排出などいろいろな説がありますが、まだ完全には解明されていないのが現状。

 

そして、こちらもまだ推測の段階ですが、次の2点が特に赤ちゃんや子どもにしゃっくりが多い理由だと見られています。

 

理由1:横隔膜が未発達で、刺激に対して敏感だから

赤ちゃんはさまざまな部分が未熟ですが、横隔膜もその1つ。

 

特に生後6ヶ月頃までは、少しの刺激でも横隔膜がけいれんを起こしやすいといわれています。

 

具体的には、ミルクを飲んで満腹になったり一緒に飲み込んだ空気で横隔膜が圧迫されたりすること、寒くて震えた、おしっこが出た、モロー反射で体がビクッと動いた…など、ちょっとしたことが刺激になってしゃっくりが出るのではないかと考えられます。

 

理由2:脳内の神経伝達が未発達だから

人の脳内では、しゃっくりのように反射的に起こってしまう動きを抑制するために「ガンマアミノ酪酸(通称:GABA)」が働いています。

 

このGABAの働きが弱いと反射を抑制しきれず、しゃっくりが出やすくなる可能性が。

 

大人でもアルコールで酔ったときにはこの抑制系が働かなくなることが分かっています。

 

よく酔った人の様子を表すのに使われる「ウィー、ヒック」というしゃっくりの原因は、おそらくここにあるのでしょう。

 

しゃっくりの止め方いろいろ

しゃっくりの止め方は、ある程度科学的根拠に基づいていると思えるものから、民間療法やおまじないに近いものまでさまざま。

 

その一部を紹介します。

 

  • わっと驚かせる
  • コップ1杯の水を一気に飲む
  • 冷たい⽔を少しずつ飲む
  • うがいをする
  • 砕いた氷や固いパンの皮、グラニュー糖を飲み込む
  • 舌をひっぱる
  • 空嘔吐(オエッとなる)
  • まぶたの上から眼球をさする

 

これらの方法は、脳から首を通って胃までつながっている「迷⾛神経」に物理的な刺激を与えることで、違う刺激によってしゃっくりを止める効果があるといわれています。

 

  • 前かがみになる
  • 膝をかかえてしゃがむ

 

これらは、横隔膜が動きにくい体勢をとることで、さらなる刺激を与えないようにするのが目的です。

 

  • 息をこらえる
  • ビニール袋に自分の息を吐いて吸い込む

 

実は、これまでに唯一、正式な研究結果が報告されているのが、この息をこらえる方法。

 

ダイビングやスポーツの場面では「バルサルバ法」と呼ばれることもあります。

 

呼吸をこらえて血中のCO2濃度が上がると、脳は「窒息のおそれあり」と判断して、神経の活動を抑制しはじめ、結果、しゃっくりを誘発する神経の働きも抑えられるのではないかと見られています。

 

しゃっくりを止める方法、赤ちゃんにも使える?

とはいえ、上で紹介した方法は子どもや赤ちゃんには使えないものがほとんどです。

 

子どもが自分で息をこらえられるのは早くて3~4歳以上と考えられますし、ビニール袋を使う方法は目を離したすきの窒息も心配ですね。

 

氷やパン・グラニュー糖を飲み込む方法は、気管への吸い込みや粘膜を傷つける恐れがあります。

 

わっと驚かす方法は、繊細な子には精神的ダメージが大きいですし、驚いて転ぶ危険性も。赤ちゃんはびっくりして泣き出す時に「憤怒けいれん」を起こしてしまうおそれもあります。

 

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赤ちゃんのしゃっくりを止める時に使えそうなのは、「哺乳瓶で水を少しずつ飲ませる」くらいかもしれません。

 

また、ミルクの後には優しくゲップを出させて、胃が横隔膜を圧迫しないようにしてあげましょう。

 

やさしく体の向きを変えたり、だっこして気分を変えてあげるのも効果があるのではないかと考えられています。

 

おわりに

たかがしゃっくり、されどしゃっくり。

 

初めて赤ちゃんのしゃっくりが出て、なかなか止まらないと心配になってしまいますが、おおむね発達の段階であることが多く、少し長く続いてもあまり心配いらないといわれています。

 

あまりにも頻繁な場合や48時間を超える場合は別として、気長に見守ってあげたいですね。

 

※本記事は、医療機関や公的機関が発表している資料に基づいた一般的な知識を紹介しており、医師の診察にかわるものではありません。

 

文/高谷みえこ

参考/西日本新聞「しゃっくりが止まるメカニズム解明 聖マリア病院の大渕医師」(2019年7月) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/522984/

MSDマニュアル家庭版「しゃっくり」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/03-%E6%B6%88%E5%8C%96%E5%99%A8%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E6%B6%88%E5%8C%96%E5%99%A8%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97%E3%81%AE%E7%97%87%E7%8A%B6/%E3%81%97%E3%82%83%E3%81%A3%E3%81%8F%E3%82%8A

明石JHNCQ「吃逆」 https://www.amc1.jp/departments/diagnosis/naika/jhn/cq_171026.pdf